死にたい僕の心
僕はその日の夜
ベットの上で考えていた。
これまでのこと。
これからのこと。
そんな時、決まって胸が苦しくなる。
ぎゅうぎゅうと締め付けられ
喉に何か得体の知れないものが詰まって
呼吸が苦しくなる
僕が今のような生活になってしまったこと。
それを避けるために何かできたかもと思案するが
時間は戻らない。
失った時間は取り返せない。
だから考えることをやめた。
この部屋に入れば何も考えずに済む。
この約4.5帖の部屋で僕は思考を停止していた。
そうすれば苦しむこともない
傷ついた足を引きずってまで歩かずとも
そこで立ち止まれば痛むこともない
傷が癒えるまで
僕は立ち止まることを選んだ。
痛い。痛かった。辛い。辛かった。
もう歩けない。歩きたくない。
一歩踏み出すたびに、傷は深くなっていく。
でも頭の中を空にして、じっとしてれば
いずれ傷は癒えるから。
その時まで目を閉じて眠っていよう。
でも目が覚めても傷は癒えなくて、
それどころか傷は化膿して悪化していく。
気づけば傷は腐敗していた。
歩こうにも歩けない。
歩き出すにも足がない。
僕は立ち上がることすらできなくなっていた。
実際、学校へ行こうと思ったことはあった。
しかし、集団というのは一度はぐれた者を受け入れるのに抵抗する。
数ヶ月もの間学校を休んだ僕を集団は怪奇な目で見るだろう。
自分が立ち上がろうとしても、社会の目が重荷となって立ち上がるのを阻止する。それに負けて僕は跪いたままだった。
それがこれまでの僕。
でも僕はこれから歩き出さなきゃいけない。
跪く僕の目の前で少女が苦しんでいる。
どんな理由があろうとも少女を見殺しにする
理由にはならない
僕は腐った足で大地を踏みしめ
白骨化した手で流れた涙を拭わなきゃならない。
僕が憎んだ社会にもう一度意地を見せるために
唯一僕を肯定してくれた彼女
彼女の笑顔だけで10年は生きていられる気がした
その笑顔を守るために
今度は僕が救うんだ。
小さな決意をした後
僕は呑まれるように眠りに落ちた。
僕はその日、強い日差しで目が覚めた。
額は汗でぐっしょり。
あまりに世の中から離れすぎて気づかなかった
世間はいま7月の初めを迎えているらしい。
ほのかに蝉の鳴き声も感じる。
僕は階段を下り、キッチンへ向かった。
中学の修学旅行、お土産で買ったマグカップで水を喉へ流し込む。
脱水で朦朧としていた意識は徐々に澄み渡る。
時刻は11時。両親は仕事。姉は学校。
僕は今からあの公園へ。
状況を把握した僕は洗面所へ向かい
冷水を思い切り顔へ叩きつけた。