死にたい僕が生かしたい彼女
少女というには幼すぎる。
小学生の低学年くらいだろうか。
普通そのくらいの年頃というのは友達と
集まって遊ぶものだが…
彼女はポツンと
独りでブランコに座っていた。
いつもの僕なら人がいた時点で
Uターンして帰宅するのだが
僕は彼女と話してみようと思った。
「となり…空いてるかな…」
突然話しかけてきた不審者感満載の僕に
彼女は驚きながらも笑みを浮かべ
「うん!あいてるよ」
「そっか。ありがと…」
不覚にも僕は彼女の笑みに癒されてしまった。
あれだけ恨んだ社会にもちっぽけな豆電球ほどの
光。暖かさを感じてしまった。
「君…学校は行かなくていいのかい…」
「まぁね。おとうさんが行っちゃだめって」
「そっか」
彼女がどんな状況にあるのか。
すぐにわかってしまった。
彼女の腕や脚、服から露出した部分に
無数の痣があったから。
僕が彼女に話しかけようと思ったのも
その痣のせいだ。
「こんなところにいていいのかい?その…お父さんに怒られるんじゃ…」
「今はねてるから大丈夫。いつも夕方までねてるの。」
察するに彼女の父親は深夜に暴力を振るうらしい
或いは深夜「まで」
彼女の目の下は黒ずんでいて
彼女の目には光がなかった。
大抵この年頃の子は自分の好きなものや将来に
希望を持ってウキウキとした目をしている。
けど彼女は僕と同じ目をしてた。
全てに絶望し
死を渇望する
そんな目。
また僕は不覚にも
彼女を助けたいと思った。
思ってしまった。