第六話
前回SST出動と前書きで書きましたが予定変更します。
今回は秋葉原にあるとある丼専門店での話です。
ストーリーの最後のほうで関係してくる人たちの登場です。
内閣府にてある部隊の出動が検討されていた頃、秋葉原にあるとある丼専門店[ドンヤ]に変わった四人組が来店した。
「いらっしゃいませ!?」
女性店員が四人組を見てギョッとしてしまった。
なぜならまず先頭を行く男性の顔には斜めに大きな切り傷がある。この男性を見ただけではそんなに驚かないが原因はその後ろ。
男性に続いて歩く女性はネコっぽい顔つきで頭にネコ耳、さらにブンブンと動かす尻尾まである。
その後ろの人物を見た瞬間、女性店員のみならず店にいる客たちもギョッとなる。
たぶん男だろうその人物は体が大きく、それに見合うほど大きい尻尾を持ち、顔は明らかに人間ではない。
店内の臭いをクンクンと匂ってニヤリと笑ってい、牙を見せているその顔は黒い狼だった。
女性店員はその姿を見て足がガクガク震え始めた。
「く、喰われるッ」
と思ったと後に女性店員は語っている。
「大丈夫ですか?」
震える女性店員に声をかけたのは四人組最後の人物、長い金髪を持つ男性。
女性店員は一瞬そのイケメンに見とれてしまうが よく見るとこの人、耳がとんがり耳だった。
ファンタジー用語でいうところのエルフだ。
「あっ、はいッ失礼しました。大丈夫です」
「それは良かったです」
ニコッと笑うエルフに顔を赤くしそうになる女性店員は顔を振って仕事モードに切り替える。
「お客様は四名でよろしいですか?」
「四人だ。カウンター席でもいいから案内してくれないか」
傷男が言うと「畏まりました。此方へどうぞ」とカウンター席に案内された。
席に座ると四人はメニューを見るやすぐに注文する。
「カツ丼を頼む」と傷男。
「海鮮丼をお願いニャ」とネコ女。
「牛丼大盛を2つだ」と狼男。
「天丼をお願いします」とエルフ。
注文を聞いた女性店員は「少々お待ち下さい」と言い厨房に向かう。
しばらくして別の店員が水を持ってきた。
「おい、俺たち水何て頼んでねえぞ」
狼男が睨み顔(本人は睨んではいないのだが)で店員を見るやヒッと声を漏らす店員。
「おいモルド、日本では店で出される水は無料だ。サービスだな」
傷男がモルドと呼ばれる狼男に聞かせると「そうなのか」と言いすみませんと頭を下げる。
それをいえいえと店員は手を振りその場からまるで逃げるように厨房へ戻っていった。
「それにしても本当に日本に来れるニャンて、柳田さんありがとうニャ」
ネコ女は嬉しそうな顔を傷男、柳田に向ける。
「まだ秋葉原の一部しか歩けない上に特別な許可が出ないと飯も食いに来れないがなアリア」
「もっと日本を見て回りたいのに残念ニャ」
しょぼんとするネコ女アリア。
仕方がないと柳田は思う。チラッと後ろ見れば客たちがこちらを見ながらコソコソと何か話している。スマホで写真撮影をしている奴もいた。
店内でこれでは日本中を見て回ればどうなるやら。考えるだけでため息が出る。
「マルクはどうだ」
柳田は水をチビチビ飲むエルフ、マルクに声かける。
「驚くことばかりです。立派な建造物に多くの人たち、この水は私たちにはちょっと物足りないですが綺麗で無料で飲めること、オノゴロ州で見慣れていたとは言え、本土はこんなに凄いところだなんて」
「お待たせしました」
感想の途中だったが注文の料理が届いたので続きは後にしてまず腹ごしらえ。
「「「「いただきます」」」ニャ」
各々まず一口食べると
「うめぇーーーッ」
「美味しいニャァ〜」
「これは美味ですね」
感想を述べる。
あとは料理を楽しむように無言で食べる。
早くもモルドが二杯目の牛丼に口を付けた時、店に置かれたテレビで流れていた番組が急にニュースに変わる。
「番組の途中ですが臨時ニュースをお伝えします」
なんだ?と誰もがテレビを見る。
「保安庁の発表によりますと客船[あかつき]が謎の武装集団にシージャックされたとのことです」
シージャックと聞いて店内が騒がしくなる。
「犯人たちからの声明は一切なく企画した枢木社にも届いていないとのことです。
現在海上保安庁巡視船[みずほ]の乗組員が[あかつき]後に乗り込み犯人と交渉しようとしましたが奇襲を受けてしまい、二名が死亡、一名が負傷。
これにより保安庁は特殊部隊SSTの出動を決定し」
ここで柳田のスマホがなり始めた。
スマホを取り出し画面を見ると本部と出ていたのですぐに出る。
「こちら柳田」
『柳田ニ尉、休暇中のところ悪いが緊急事態が起きた』
緊急事態と聞き目付きが変わる。
「向こうで特殊災害が発生しましたか?」
『いや、テレビはあるか?』
「今、見てますがもしかしてこのシージャックのことですか?だったら我々では対処できませんよ」
『まだ発表してないがこのシージャック、特災の可能性がある』
「何ですって!?」
柳田は思わず大きい声を出してしまった。
周りの客たちはどうしたんだと柳田を見る。
おっとと口に手を当て声がなるべく漏れないようにして小声で喋る。
「一体どういうことですか?特災は向こうでしか起こらないでしょうッ」
『理由はわからん。だが情報では犯人は人間じゃないとの生存者からの連絡、さらにその生存者は無惨に殺され首を持っていかれていた。そして巨大な紫色の犬に襲われたそうだ。これだけで特災の可能性は十分にある。まだ検討の最中だが本部では出動待機が命じられた』
「向こうから隊員を戻せないのですか?」
『残念ながら向こうは向こうで特殊災害の前兆が確認されたため人員は減らせないそうだ』
だから自分たちが選ばれたのか
「わかりました。すぐに戻ります」
スマホを切りモルド、アリア、マルクの三人に告げる。
「休暇は終わりだ。緊急事態が発生したすぐに戻るぞ」
「どうしたのですか?」
えぇーと言うと二人を代表してマルクが質問する。
「今、やっているシージャックわかるな」
「はい」
「あれは特殊災害の可能性がある」
特殊災害と聞いて三人の目付きが変わる。
柳田らは金を払い、駐車場に停めておいた車に乗り込み本部に向かった。
ご指摘ご意見ご感想などありましたらコメントお願いします。