幸せは続かない
突如、爆発音が鳴り響いた。
「なに!?なんの音!?」
俺は爆発音で目が覚めた。
「ノイター!大丈夫!?」
「うん、俺は大丈夫だけど...。何があったの?」
「わからない。でもお父さんがお母さんを連れて逃げろって言ってたから。さあ、早く逃げよう?」
「父さんはどうするの?」
「お父さんは爆発の原因を確かめたらこっちに向かうって言ってたから大丈夫」
「わかった、早く逃げよう」
俺達は急いでミーシアに向かった。
「お父さん、帰ってこないね」
俺達がミーシアに来てから半日がたった。
まだ父さんは帰ってこない。
「父さんは何やってんだよ、そんなに広い村でもないのに......」
そう、アデル村はそれほど広い村ではない。
原因など村の周辺を見て回ってもすぐに終わるはずだ。
「父さんに何かあったのかな...俺ちょっと行ってくる!」
「待ってノイター!行っちゃダメ!」
「待ちなさい!ノイター!」
俺は二人の静止を聞かずにミーシアを飛び出した。俺を追いかけてシィ姉と母さんもミーシアからアデルに向かった。
「なんだよこれ...どうなってんだよ...」
この短時間で村の面影はほとんど無くなっていた。
家は破壊され、地面には穴が空き、所々炎が上がっていた。
「父さん!どこにいるんだよ!」
「ノイター!ここにいちゃダメ、はやくミーシアに戻ろう?」
シィ姉が俺に追いついたとき、
「あ?まだ人間がいるとはなぁ」
声の方に振り返るとそこには体長2m程の大男が立っていた。手には自らの身長に匹敵するほどの大剣を持っている。
「お前が...やったのか?」
「そうだ。新しい武器の試し斬りがしたくてな」
こいつが俺達の村を?ここには父さんが居たんだぞ?
「父さん、父さんは...?」
「父さん?知らねぇな。多少強いやつはいたが全員殺したさ」
父さんが死んだ?そんなはずは無い、父さんは強いんだから。
「ま、俺がここにいるうちに戻ってきたのが運の尽きってことだ、諦めて死にな」
ああ、俺も死ぬのか。
「『翔けよ、風刃!』」
大男は風の刃を飛んで避ける。
「魔法使いか!?」
「シィナ!ノイターを連れてはやく逃げて!」
「お母さんも早く!」
「私はここであいつを止める、あなた達が逃げたら必ず追いつくから行きなさい!」
「おじさんの家に向かうから絶対に帰ってきてね!」
そう言ってシィ姉は俺の手を引いて走り出した。
そこからの事はあまり憶えていない。
父さんが死んだと聞いてから頭の中が真っ白になっていた。
目が覚めたのはおじさんの家だった。
「お、起きたか」
「え?おじさん?なんで?母さん、母さんは!?」
「落ち着いてノイター、落ち着いてお姉ちゃんの話を聞いて」
なんでだよ、なんでそんな泣きそうな顔してんだよ。
「母さんは私達を逃がすためにあの男と戦ってまだ帰ってこないの。多分もう...」
なんだよそれ......母さんが死んだって言いたいのか?
「それでね、おじさんがお父さんとお母さんから私達宛の手紙を預かってたんだって」
「俺らのどちらかが死ぬ、もしくは両方死んだと聞いたら渡してくれと頼まれていたんだ。まさかこんなにはやく渡すことになるとはな」
「なんだよそれ!?父さんも母さんも自分が死ぬのが分かってたみたいじゃねぇか!」
「落ち着いてノイター。手紙を読むから」
『シィナ、ノイター、この手紙を読んでいるなら父さんか母さんあるいは両方とも死んでいるだろう。だがこうなることは分かっていた。2人には秘密にしていた事がある。父さんは魔族と人間のハーフだったんだ、いきなりこんなこと聞かされても訳が分からないと思うが本当の事だ。魔族の中では他種族との結婚は認められていない...その法を破った場合その法を破った者とその親族全てが殺される。もし母さんも死んでいた場合は俺の責任だ、本当にすまない。そしておじさんにはこの手紙を渡した時にお前達が来て俺達が死んだと聞いたら、大人になるまでは面倒を見てくれるように頼んであるから子供のうちは苦労はさせないから安心しろ。そしてもう一つ、俺がおじさんから借りていた部屋のベッドの下の収納スペースに俺がこれまで冒険者として稼いだ金のほとんどが入っている。もしお前達がまだ子供ならその金で王都の学校に行け、おじさんの家からならそう遠くはない。学校に行って様々な事を学んでこい。卒業したら俺達の家に行け、裏の物置の下に地下室に入れる入口がある、そこでそこから先のお前達の生きる道を決めろ。最後にもう1度、本当にすまない。お前達の成長を見ることが出来なくて本当に残念だ、母さんが生きているならよろしく頼む。お前達は俺の最愛の子供たちだ。
親愛なるシィナ 親愛なるノイターへ
ウォーレン・フォーデルより』
「ほんと...訳わかんねぇよ」
俺は知らない内に泣いていた。
「ノイター、お父さんの言う通り学校に行こう?私達がお父さんとお母さんの分まで生きるんだ」
「その手紙の通り俺はウォーレンからお前達の事を頼まれている、いつまででもここで暮せばいい。もう今日は遅い、早く寝て近いうちに学校に行こう」
「うん、学校に行って卒業して俺は俺の生きる道を決める」
「頑張ろう、ノイター」
「うん」
気づけば深夜1時を過ぎている。
これから先もっと不幸なことがあるかもしれない、だけどシィ姉は、たった1人の家族は俺が絶対に守ってみせる。
かなり展開が変わりました!
次回からはシィナとノイターは学校に行きます。
はやく次を投稿できるように頑張ります!