顔合わせ、そして新たな才能
「ねーはやくしてよー」
「別に行かなくてもいいだろ、どうせ1位だし」
「見に行くのが楽しいんでしよ!」
「そうか?」
「いいから行くの!」
「はいはい」
今日は入試の合格発表の日。
俺は1位であることを確信しているため行かなくてもいいと言ったのだが...まあしょうがないか。
学院に着くとすでに人で溢れかえっていた、人混みを抜け合格の名前を見ると予想通り俺が1位でこいつが2位。
「ほらな?言った通りだろ?」
「知ってたけどここに来て、ここで見るのが良いんじゃない」
「はいはい、ほら帰るぞ」
「ちょっと!待ってよー!」
入学したらまずはあの人達の魔法を見せて貰いたいな...。
「あぁ遂に休みが終わってしまった...」
「ほらノイター!シャキッとする!」
「はーい、シャキッとしまーす」
「登校初日くらい頑張りなさいよ...」
休みの日は過ぎるのが早いものだ、試験が終わり1ヶ月の休みを貰ったと思ったらもう登校日だ。
「おはようございます。シィナ、ノイター」
「ミリアちゃんおはよー」
「おはよ」
「クラスは3人一緒でしたよ」
「やったー!去年は別々だったからよかった〜」
「それよりも早く行かないと時間がやばそうだ。今日は講堂で集会があったよな?」
「忘れてた!行こ!ミリアちゃん!」
「はい!」
「別に走らなくても間に合うのに...」
俺達は教室に荷物を置き少し急ぎながら講堂へ向かった。
集会は始まっていなかったが大半の生徒がすでに集まっていた。
俺達が講堂へ入り自分のクラスが並んでいる場所に着くとほぼ同時に集会が始まった。
集会と言っても理事長が新年度も気を引き締めて頑張れと言ったり生徒指導の先生が服装などの着崩しが無いよう呼びかけたりする程度で終わると思っているとリグエル先生が出てきた。
「一ヶ月ほど前に正体不明の魔獣が現れたことは皆知っているだろう、現状で同じような事が起こると対処のしようがない。そこで生徒全体の連携、1年生の強化を目的とする他学年との合同演習を実施することになった。生徒全体と言ったが3年生は学外演習などがあるため基本的には1年生と2年生の合同演習となる。最初の合同演習は明日の顔合わせと同時に行うことになったので忘れないように」
その後は集会が終わり各教室に生徒が戻り先生から話を聞いて解散となった。
俺とシィ姉とミリアはすることも無かったためおじさんの家もとい自宅に行くことにした。
俺もシィ姉も部屋が片付いてないということでリビングに集まっていた。
「合同演習ってどこでやるんだろうね」
「学院の訓練場じゃないですか?」
「そんなとこあったっけ?」
「なんで知らないんですか...」
ミリアが呆れた顔でこちらを見る。
「いやほら基本的に練習は魔法練習場でやるから...」
「学院の設備くらい把握してください」
「そんなことより!今年の1年生ってなんかすごい子いるかな?」
「確か3つ以上の魔法適性を持ってる人はいなかったんですけど、ごく稀にしかいないと言われる光魔法の適性者がいたはずですよ」
「光魔法か...ちょっと見てみたいな」
「明日見れるかな?」
「見れるといいですね」
それからいつものように雑談を交わし夕方にミリアは帰っていった。
次の日は午前中は1年生との顔合わせと合同演習ということで1年生と2年生の全員が訓練場に集まっていた。
顔合わせを終えて合同演習に入り最初こそお互い会話が無かったが少しづつ会話が生まれ、今では2年生に教わり1年生でも下位上級魔法が使える者もでている。
その様子をシィ姉とミリアと端の方で眺めていると2人の1年生がこちらに歩いてきた。
「シィナさんとミリアさんですよね?俺はカイル・レギエルっていいます。こっちはシルフィアです」
「シルフィア・リーアです」
「カイル君にシルフィアちゃんね、なにか分からないことでもあった?」
「シィナさんとミリアさんが強いと聞いたので腕試しと言うことで模擬戦をしてもらえないかと。出来るなら魔法と剣術の両方を」
「私はいいけどミリアちゃんは?」
「私も構いませんよ」
「じゃあやろうか、時間もあんまりないから私とは魔法のみ、ミリアちゃんとは剣術のみでいいよね?」
「あ、私は剣よりも素手の方が戦いやすいので素手でやりますね」
「わかりました、では最初はミリアさんお願いします」
「はい、よろしくお願いします」
一緒にいた俺は完全に無視されて会話が進み、更には審判まで任されてしまった。ついでにギャラリーもできていたが気にしない。
「では...はじめ!」
俺の合図と同時にカイルが鋭い突きを放つ...が、それをミリアが紙一重で躱し一瞬で武器を落とし手首と襟を掴み...投げた。
一瞬のことにギャラリーも投げられたカイルも唖然としていた。
「いい突きですが素手の方が戦いやすいと言っているのにわざわざ素手の間合いに入ってくるのは愚策でしたね。次は相手の間合いを把握して戦うといいですよ」
「あ、ありがとうございました...」
カイルは未だに唖然としている。
「おーいカイルくーん?私との模擬戦はできそうかな?」
「あ、はい!できます!大丈夫です!」
大丈夫そうな返事じゃないけどほんとに大丈夫か?まあいいや。
「準備はいい?それじゃ...はじめ!」
「さあ使える魔法はなんでも使っていいからね!」
「では遠慮なく!『破戒の焔、穿つ爆炎、形成するは万象の理、我が名の元に放て』ブレイズランス!」
カイルの放ったブレイズランスがシィ姉に向かって飛んでいく、だがシィ姉は動かない。
誰もが当たると思っていただろう、だがシィ姉に当たる直前に不自然に軌道がズレた。
「うーん中位魔法を使えてるのは凄いんだけどまだ魔力の扱いに無駄があるね。うまく使えばもっと威力がでるから頑張ってね。さあ次はこっちの番だね」
ウインドアローの構えを取るが少しだけ違う、弓の上の方から下に向かって手をなぞらせると10数本の矢が出てくる。
その全てを引き絞り...放つ。
「『我が身を守る守護の炎』フレイムウォール!」
シィ姉の放ったウインドアローをカイルの展開したフレイムウォールが弾く。
「やっぱりこれじゃダメかぁ」
「次はオリジナルのこの魔法で!」
オリジナル...あいつ意外と天才かもな...。
炎魔法のオリジナルだと誰もが思ったであろうがカイルが生成したのは水の球だった。
その水を高速で動かしながら槍のような形状にして撃ち放つ。
シィ姉の作り出したトライコントロールの壁に当たり、貫通する。
属性魔法にはそれぞれ特性があり炎や雷は破壊と貫通、風は貫通と形成、水や土は守護と形成となっていて完全に力を引き出せるのが1つでそれに近い特性のもので適性があれば6割程度までは力を引き出せる。全く違う特性の場合は引き出せても2割から3割がいい所だがカイルはブレイズランスを使えるほどの炎適性を持ちながらシィ姉のトライコントロールを貫通する程の水魔法を扱っている。
「すごいね君!炎と水をほとんど100%の力で引き出して私の壁を貫通するなんて!」
「さあ!まだまだいきますよ!」
「いや、もう終わり」
「降参ですか?」
「違うよ、君の負け。サイレントソーン」
「何を...痛ッ」
突然カイルの全身から少量の血が出る。その上カイルは身動きが取れない。
「サイレントソーン、最初に撃ったウインドアローがまだ消えてないでしょ?そこからトライコントロールの応用で茨をつくって巻き付けてるの」
「こんなもの俺の炎で...どうなってんだ?魔力の流れが悪い?」
「そう、魔力の棘が刺さって魔力の通りを阻害するの。だから君が魔法を使うよりも早くウインドアローで君を射抜ける」
そう言ってシィ姉はウインドアローを放つ。
ウインドアローはカイルの頬を掠めて消えた。
「俺の負けです」
「でもすごいよ君、1年生でブレイズランスが使えてさらにオリジナルまで使えるなんて」
「カイル大丈夫!?」
飛び出してきたのはシルフィアだった。
「大丈夫だ、時間が経てば治るし痛く無いから」
「だめ!そうやっていつも無理するんだから。じっとしててね、『照らせ、治癒の光、彼の者の傷を癒せ』ヒーリングライト」
シルフィアの杖の先が淡く輝きその光がカイルを照らす。すると数秒でカイルの傷が塞がった。
「別にいいのに」
「今のは光魔法ですか?」
「いえ、今のは光魔法のライトと治癒魔法のヒールの複合魔法です」
黙っていたカイルが突然頭を下げる。
「シィナさん!ミリアさん!俺に魔法と剣術を教えてください!」
数秒の沈黙の後シィ姉が口を開く。
「剣術はミリアちゃんに教わるといいけど魔法は私よりもこっち!」
そう言ってシィ姉が俺を指差す。
カイルは怪訝な目でこちらを見る。
「誰ですかこの人」
「私に無詠唱魔法を教えてくれた自慢の弟だよ」
「え!?この人が!?」
なんだその反応、失礼な。これでも先輩だぞ。
「嫌なら教えないけど」
「教えてください!えっと...」
「ノイターだ」
「教えてください!ノイター先輩!」
先輩って呼ばれるのも悪くないな。
「いいよ、教えてやる。えっと、シルフィアはどうする?」
「え、私もいいんですか?」
「1人も2人も変わんないし教えて欲しいなら教えるよ」
「はい!お願いします!」
こうして学院生活の2年目が始まった。
遅くなって申し訳ございません!
修学旅行とかいろいろ重なってしまい書く暇がありませんでした!(言い訳)
そんなことより新キャラ2人!後輩です!個人的にシルフィアちゃん好きです笑
それではまた次回!
次回はまさかの...!?