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7話 修羅場と旅立ち

それから僕はクロ姉さんと暫く暮らしている。

クロ姉さんによると、魔力があれば直ぐに帰れるらしい。

ただ一度に沢山貰うとなると、

“ああいう事”をしないといけないらしいので、

少しずつ貰うんだって。

本当かなぁ・・・。



一緒に暮らしてて分かったけど、クロ姉さんは料理が上手くて、

本当に物知りで凄かった。

毎日違う料理を作ってくれてたけど、全部が美味しかった。

毎日美味しいご飯ありがとうって言ったら、

「そ、そう?そ、それならさ、ずっと作ろうか?」っていってくれたから、

お願いしますっていったら、

抱きしめられて「ありがとう」っていわれたんだけど、なんでだろう?


それから召喚術の仕組みも詳しく教えてくれたし、

コツも教えてもう事ができた。

あと、貰った綺麗な石は賢者の石っていう物で、

金属ならなんでも金に換える事が出来るんだって。

遠くに投げても必ず手元に戻ってくる機能も付いているから、

無くさないっていっていたけど、これ呪いじゃないの・・・?

凄い性能だと思うけど、クロ姉さんは

「金属が金に変わって何が楽しいのか分からないしー」って、

凄くつまらなそうに説明してくれた。


それから僕の役割もクロ姉さんがお酒に酔った時に色々教えて貰っちゃった・・・。

「アクシオス君は勇者だよー?魔王とかと戦うと思うから頑張ってねー!死なないと思うけどー!チート万歳!!」

って言われても・・・。

具体的に何をするんだろう?

死なないってどういうこと?

チートってなに?

村に被害が出る前に旅に出た方がいいのかな・・・。

この前のドラゴンみたいな事もあるし・・・。

でもアル姉さんにはもう弓返しちゃったし、どうしよう・・・。


翌日クロ姉さんに聞いたら、慌てて誤魔化すように無理矢理話題を変えて、

結局聞きそびれちゃった。

もう一度アル姉さんを召喚しようかな?

それとも村を出て旅に出ようかな?

何故かアル姉さんを召喚しようとしたら物凄い勢いで止められちゃったから、

召喚するならクロ姉さんが居ないときにしないと・・・。

なんでそんなに慌てるんだろう?


気が重いなぁ・・・。



天界


クロ姉さんの部屋


「ねえ?それはそうとあなたからアクシオスの匂いがプンプンするのはどういうことかしら?」

笑顔だが異常に迫力がある顔でクロ姉さんに迫る。

「そ、そう?」

冷や汗を流しつつもごまかそうとするクロ姉さん。

「・・・あなたは“いつ”のあなたなのかしら?」

笑顔に何か形容しがたいどろどろしたものが混じっていく・・・。

「・・・っっ!?」

顔が真っ青になっていくクロ姉さん。

「時を加速させている事に、まさか私が気付かないとでも思ったのかしら?」

あからさまな殺意が混じっているであろう笑顔になっているアル姉さん。

「さ、流石御姉様っ!!」

もう顔が真っ青を通り越して蒼白といった所である。

「やはり始末しておくべきだったかしら・・・うふふ」

意図的に聞こえるような小声で呟くアル姉さん。

既に目のハイライトは消えている。

「ヒッ!」

もう完全に怯えきった顔で目じりに涙を湛えている。

「・・・で?今なら腹パン1発位で許してあげるわよ?」

きっと笑顔で人が殺せるならこんな笑顔なんだろうな、

というトテモステキナ笑顔で問いかける。



その後、土下座しながら事細かに詳細を洗いざらい全て吐かされる羽目になるクロ姉さんだった。

もちろんお仕置き(物理・精神的)も込みで。


*****


アクシオスの家


あれから“色々”あってクロ姉さんはいつでも帰れるらしいけど、

全然帰るつもりがないみたい・・・。

・・・全然迷惑って訳じゃないケド。



それとやっぱり僕は旅に出る事にした。

村はドラゴンのおかげですっかり裕福な暮らしが出来る様になったし。

僕が旅立つって言ったら村長さんが10万Gをポンとくれてビックリ。

いいのかなこんなに貰っちゃって・・・。



旅立つ前にアルお姉さんを召喚したいってクロ姉さんに相談したら、

何か覚悟を決めた様な顔で「分かった」って言ってギュッと抱きしめてくれた。

身長差が出来ちゃったけど、やっぱり僕はこれ位が丁度いいかもしれないな、

なんて思ったり。

でもなんでそんな顔するのかな・・・?


「・・・よし!」

いい魔法陣が出来て満足!

さあ、アル姉さんを召喚しよう!


僕が魔力を魔法陣へ込めるとそれに反応して魔法陣が輝きだす・・・。

閃光と共にお姉ちゃんが現れた。

でも何でだろう雰囲気が凄く怖い様な気がする・・・。


「・・・本体はやっぱりここにいるのね」

「お、お姉ちゃん・・・?」

「ごめんねアクシオス、“そこの人”と凄く大切な話し合いがあるの。

だから少し待っててね?」

「アー君ごめんね。ちょっと行って来るね」

そう言って二人はどこかへ行ってしまった。


暫くして遠くの山が2つ爆発音と共に消滅しちゃったけど・・・。

一体何が起こっているんだろう・・・。

まだ見たこと無いけど、魔王よりお姉ちゃん達の方が怖いんじゃないのかな?

と思い始めるアクシオスであった。



山が2つ消滅してそれに連なる山脈も全て消滅し、

平地になって暫くすると、

服がボロボロのお姉ちゃん達が帰ってきた。

隙間から色々見えてて凄く困るよ。


「だ、大丈夫・・・?」

お姉ちゃん達は睨み合っていたけど、

凄い勢いで二人とも僕の事を抱きしめてくるから苦しかった。

早く落ち着いて欲しいなぁ・・・。



「ねえアクシオス?あなたの中で誰が一番なの?」

「勿論アル姉さんだよ!」

「本当に?絶対に?神に誓える?」

「う、うん」

「そう・・・ならいいわ。“そこの人”も一応許してあげるわ」

アル姉さんはどこかホッとしような顔で優しく僕を撫でてくれた。

「・・・っ」

クロ姉さんは物凄く悔しそうな顔をしてた様な気がするけど、

アル姉さんが無理矢理キスしてきたので、よく分からなかった。



それから僕はお姉さん達と一緒に旅に出る事になったよ。

結局アル姉さんもクロ姉さん帰らないんだって。

また“何かをやりそう”な雰囲気だったから、

慌てて止めて、3人で行く事にしたよ。

でも、凄く空気が悪いのは何とかして欲しいなぁ・・・。



アル姉さんによると、神託の勇者は王都に行って勇者登録する事が必要なんだって。

そんな感じで、右にクロ姉さん、左にアル姉さんに手を繋がれて王都に向かって歩いている。

繋いだ手を離すという選択肢は絶対に無いみたい。

アル姉さんの手を離そうとすると、絶望的な顔をされて、

「やっぱりその人がいいの?」って泣かれるし、

クロ姉さんの手を離すと、

「ん・・・やっぱりそうだよねーへいきへいきー」って、

口では言うんだけど、物凄い涙目で体をフルフル震わせてるんだもん。

だからといって両方離したら、二人で喧嘩を始めそうになるし・・・。

二人がもっと仲良くしてくれればいいんだけどなぁ・・・。



アル姉さんによると、王都への道のりは1週間位らしい。

途中等間隔に村などもある筈って言ってたから、多分大丈夫!

・・・大丈夫だよね?



・・・どうしよう、トイレに行きたい。

でも恥ずかしくて言えないよ。

手も離してくれないし・・・。

流石に漏らしたくもないし。


意を決してアル姉さんに声をかけた。

「アル姉さん」

「どうしたの?」

「トイレに行ってきてもいい?」

「じゃあ一緒に行きましょうか、そこの人手を離してもらえるかしら?」

「なっ!姉さんこそ離せばいいじゃない!ボクが連れて行くよ!」

「アクシオスは私にお願いしてきたのよ?あなたが出る幕ではないわ」

「ぐぬぬ・・・」

ああ、やっぱり・・・。

結局離してくれないし、雰囲気が悪く・・・。

・・・あぁもう限界・・・。


ジャブジャブ・・・


・・・汚れた下半身を川で綺麗にしたよ。

あとズボンも川で洗っておいた。

後で乾かさないと・・・。

寒い時期じゃなくて、本当に良かった。


あの後、仲良くしないと二人とも嫌いになるよって言ったら、

二人とも真っ青な顔で仲良くするって約束してくれた。

・・・本当に嫌いになる訳無いケド・・・。


でもこれで少しは仲良くなって欲しいなぁ・・・はぁ・・・。



そんなこんなで始めの村についた時は日がもう落ちそうな夕方だった。

急いで宿屋を探すと、空き部屋が無いか確認してみると、

まだ空きが2部屋あるみたいだったので、二つ借りる事にしたよ。

「一部屋でもいいのよ?」ってアル姉さんはいうけど、

あんな事もあったし、ちょっと一人になりたかった。



コンコンコン

暫くしてから僕の部屋をノックする音が聞こえた。

「誰ですか?」

「私よ」

「今開けるね」

カチャッ

ドアを開けると、凄く申し訳なさそうな顔をしたアル姉さんがいた。

「どうしたの?アル姉さん」

「・・・ごめんね」

そう言ってギュッと抱きしめてくれる。

「昼間の事?それならもう大丈夫だよ」

「そう?私なりの償いをしようと思ったの」

「えっと・・・」

僕が迷っていると、アル姉さんは僕をお姫様抱っこしてベッドに連れて行く。

ああ、やっぱり・・・。


「お、お姉ちゃん・・・?」

「何かしら?うふふ」

「痛くしないでね・・・」

僕はそう言うのが精一杯だった。


その後は、アル姉さんが満足するまで“償い”をしてくれてたみたい。

途中で気を失っちゃったから最後までは分からないよ・・・。

・・・僕の身体は凄い事になっちゃってたけど。


ただ、翌日の一緒のベッドで目を覚ましたアル姉さんはもの凄く満足そうだったよ。

・・・勿論クロ姉さんは物凄く不機嫌だったけど。

「へーー償いねーふーん?帰ってこないからそうだろうとは思ってたけどさー」

なんていってたけど、“色々な事”があって僕がおぼつかない足取りだったので、

おんぶしてってお願いしたら一瞬で機嫌が良くなったみたい。

「もーしょうがないなー」とかいってたけど、物凄く笑顔だったよ。


不思議な事にアル姉さんは、そんなやり取りを笑顔で見ているだけだった。

僕は良く分からないよ・・・。


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