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「問題は大きく分けて二つあります。一つは、三人が殺されたこと。ですが、三人が殺されたのは深夜、ほとんど者がその時点で何の警戒もしていなかった時間に行われました。つまり、確実にアリバイがある人がいない、ということです。そちらから犯人を絞るのは難しいでしょう。ですから、もう一つの問題から考えてみました」
甲斐雪人はそこまで一気に言ってから、正面に座る彼女の目をまっすぐに見た。
「僕達がカレーを食べていた時に、鏡が割れる音が響きました。それが鏡だと分かったのは実際に割れた鏡を見つけてからのことですが。あの時、ダイニングには僕達皆が揃っていた」
「そうですわね」
落ち着いた調子で彼女は答える。
「偶然ここに迷い込んだ殺人犯が、誰にも気づかれずに二階に行き、そこで二階に来た芹沢さんを殺すことなく気絶させる。さらにテストを盗み、夢宮のテストだけどこかに捨てる。そしてその深夜、偶然外にいた五十嵐さつきを殺しテストを返し、偶然キッチンを通らずお風呂場に行き、偶然小野寺光次を殺し、服を盗む。さらに、偶然小野寺光一の部屋に行き、彼を殺した」
甲斐雪人は芹沢雅だけを連れ出して、リビングに来ていた。他はダイニングに待っている。確認したいことがある、ということで呼び出して、彼女はそれに応じた。
「可能性の一つです。このうちの偶然のいくらかは改善の余地はありますが、あまりにありそうにないことです。ですが、もう一つの可能性なら、一人で可能です」
甲斐雪人は一度言葉を切ってから続ける。
「テストを隠し、二階に行き、気絶をしたふりをする。深夜、一人ずつ殺害する。それだけです」
甲斐はまっすぐ芹沢雅を見る。
「あなたならすべてが可能です。このメンバーを選ぶことも、テストを隠すことも、大量の課題を与えることも。夢宮さやかがすべての課題をこなしたことだけが、予定外だったのではないですか?」
「わたくしが?」
「動機も考えられます。芹沢さんには秘密が多い。学園と同様の環境であれば、この合宿はもっと楽しい雰囲気になったはずです。実際夢宮も、勉強合宿こそ憂鬱そうでしたが、あなたと一緒に合宿ができるということで、とても喜んでいました。ですが、黄色の声をあげる人が少なかった。殺された三人、つまり芹沢さんによって選ばれた三人は、芹沢さんのことを脅したいほど憎んでいたのかもしれない」
「わたくしに脅される言われはありませんわ」
「芹沢さんに色がないからです」
「わたくし嘘をついておりません。ですが、甲斐くんが言うとまるで本当のことのようね」
「僕には他の可能性が浮かびません」
「もしわたくしのことを憎んでいたのだとしたら、殺されるのはわたくしではないでしょうか。それに素直に部屋の外に出て下さるかしら?」
「脅しに屈するといえば」
「わたくしが犯人だと、断定できますか?」
「信じたくありません」
「それでは信じないでください」
芹沢は立ち上がった。
同時に、玄関が開けられる音が響く。
「警察だ!」
聞き覚えのある声だ。甲斐も立ち上がるとロビーに移った。反対の扉からも人が出てくる。
日比野が警察手帳を前にかざしている。
「あれ、日比野さん」
「おお甲斐くんではないか。どうやら間に合わなかったようだな」
「どうして?」
「すぐにここに行くよう命じられたのでな。率直に聞くが、犯人は?」
甲斐は一度芹沢を見る。
「……逃げました」
「そうですか。分かりました。他に被害者は?」
「二名です。お風呂場と、二階の一番奥の部屋で。ここに僕たちは全員集まっています」
「よい判断です。すぐに警察の車で皆さんを地元まで送ります。遠慮はしないでください、ほぼ強制です」
日比野の声はダイニングにいた人にもすべて聞こえていたようで、全員がロビーに出てきた。
「皆さんの安全は警察が保障します」




