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サードパーティー  作者: なつ
第四章 選択肢は限られる
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 2

 坂崎陽菜は動いていないと落ち着かないらしく、片付けますと宣言するとテーブルの上に残った朝食の残りをキッチンに運び出した。それを芹沢雅も手伝う。

 アルフレッド・インディーと柳ヶ瀬尋司は五十嵐さつきの死体と一緒に見つかったテストをえり分けている。その一部を田村澪に渡す。

 はっきりと見えなかったが、横にはねた赤い字が多い。バツだらけのようだ。田村はそれを見ながら、激しくため息をつく。

 来栖都は両肘を付き顎に手を当てている。

 夢宮さやかは柳ヶ瀬とアルフレッドの動きを見ているのだが、彼女の元には紙が一枚も回ってこない。

 そのまま紙を分ける作業は終わってしまう。

「わたしのは?」

 アルフレッドは大げさに肩をすくめると、さぁ、と唸った。

「わたしのだけないの?」

「あまりにひどくて捨ててくれたんじゃない?」

「そんなことないよ、それなりに、いいところもあったはず」

「芹沢さん、夢宮さんのテストの結果ってどれくらいだったのですか?」

「さやかさん? どうだったかしら、褒められた結果ではなかったと思いますわ」

 キッチンから芹沢が答える。

「なるほどね、考えた通りかもしれないな」

 柳ヶ瀬が夢宮を見た、それから甲斐を振り返る。

「ほら、昨日風呂で言っただろ、大体想像がつくと。まず、昨日芹沢お嬢様が気絶をしたのは脱衣所ではない」

 眼鏡を指で一度直してから一ノ瀬が口元に笑みを浮かべる。

「ではどこだと?」

「何かが割れたのは確かだ。二階の角のあんな場所にカーテンがかかっているのはおかしいと思ってね、風呂に入る前に確認したら、ひび割れた鏡があった。そこじゃないのか?」

「夕食の時間、僕たちは誰もダイニングから出ていない」

「そう。だから、あれはお嬢様の演技だったんだよ、違うかな?」

 芹沢は答えなかった。

「答えられないのはイエスという返事だと受け取ろう」

「何のために?」

「脅されたからさ」

「誰に?」

 柳ヶ瀬の視線は夢宮を捉えた。

「わたし?」

「そう。答案用紙を使ってお嬢様を脅し、夕食中にどこかで襲われた振りをしろ、と。どうかな、俺の考えは?」

「わたし、ミヤビさまにそんなことできない!」

「これでアリバイを手に入れたお前は、夜中、次の犯行に及んだ、と」

「わたしじゃない!」

「それでは答案用紙はどこにある?」

「知らないわよ」

「知らないじゃすまない問題だな」

「ちょっと、雪くん、助けてよ」

「芹沢さんが演技で気絶していたのかどうか、僕には分かりません。そのときはそんなことを考える余裕はありませんでした」

「それは助けてくれてない!」

「ですが、本当の殺人のほうには、彼女はアリバイがあります」

「深夜なのに?」

 甲斐は紙を一枚柳ヶ瀬に手渡した。昨晩出された課題である。

「それを一枚やるのにどれくらいの時間がかかりそうですか?」

「十分もあれば」

「その計算でも一時間で六枚です。六十枚やるのに十時間です。与えられたのは五十枚でした。課題はおよそ昨晩の九時に与えられました。九時から九時間で六時です。彼女が一階に現れたのは七時半」

「一時間半ある」

「一枚十二分でも計算してみて下さい。与えられるのは自分が苦手な教科の課題です。常にその速度で休憩なく続ける。本当に可能だと思いますか?」

「彼女が全部やったなら、確かに難しいな」

「どうぞ」

 甲斐は課題の束を差し出した。すべて彼女の字だ。

「そうだ。わたしはずっとこの課題をやってたんだよ。だから、十二時以降の甲斐くんもアリバイありよ」

「へぇ」

「それって、朝聞いたって話。いいわ、信じてあげても。それなら、私とアルフもアリバイあるって話」

「オウ、シークレットだよ」

「殺人犯と思われるよりましって話だわ」

 田村がアルフレッドの隣に立つ。

「私も昨日彼の部屋にいたから」

「いつの間にそんな関係に?」

 来栖が目を見開く。

「英語の相談に行ったんだけどね、まあ、いいじゃないって話」

「お互いに寝てないの?」

「そう思って問題ないわ」

「ベイビー、まあ、そういうこと、ミーにはアリバイがあるんだな」

「来栖さんは?」

「えー、私十一時には寝てたわ。陽菜が起こしにくるまで全然気がつかなかったもの」

「都の眠りっぷりはすごいわよ。そのままにしておくとと一日中寝てるもの」

 キッチンから坂崎が答える。

「柳ヶ瀬さんのアリバイは?」

「俺には、ないね」

 柳ヶ瀬が苦々しそうに答える。


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