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サードパーティー  作者: なつ
第三章 装飾された殺人の謎
20/28

 5

 ダイニングに戻る途中、甲斐雪人たちは二階の部屋をすべて見て回る。けれど五十嵐さつきの姿はどこにもなかった。一階に降りて、トイレを覗き、それからリビング、ロビーを通ってダイニングに入った。全員の視線が一斉に集まる。

「お待たせしました」

「それでどうなった? 二人とも殺されてたのか?」

 柳ヶ瀬尋司が眼鏡を動かしながら震えた声を出す。

「違いますわ」

 甲斐も最初の位置に座る。

「現状を説明します。殺されていたのは、一人だけ。小野寺光一さんが部屋で殺されていました」

「五十嵐さんは?」

「どこにもいません。念のため皆さんのお部屋と一階を見て回りましたが」

「それって、彼女が殺したって話?」

「分かりません」

「分かりませんって」

「柳ヶ瀬さん、落ち着いて下さい」

 甲斐は立ち上がった。

「落ち着けって、ふざけるなよ。二人も殺されてるんだぞ、どう落ち着けっていうんだ」

「そんなことは全員分かっています。それでも落ち着いて下さい」

「うるさいな、無理だよ」

「無理なら黙れ!」

 甲斐は叫んだ。

「お前は何もやってないじゃないか。ただ震えてるだけで。そんな奴がでかい口を叩くんじゃねぇよ」

「甲斐くんこそ、落ち着いて下さい」

 芹沢の手が甲斐の胸を抑える。ビクッと甲斐の体が跳ねる。

「す、すいません」

 芹沢に頭を下げてから甲斐は椅子に座りなおした。柳ヶ瀬は俯き、歯軋りをしている。

「とにかく、まずわたくしたちがやらなければならないことを考えましょう」

「警察へは連絡したの?」

 来栖都が手を上げる。

「そうだわ、忘れてたわ」

「先生、ロビーの下駄箱の近くに電話があります、それで警察に連絡を」

 藤枝百合子は返事をすることなくダイニングから外へ出る。精神的にだいぶ疲れているようだ。

「本当に五十嵐さんが殺したのかしら?」

「それは分かりません。彼女の部屋を拝見しましたが、荷物は置いてありました。課題の紙も途中の状態で、少し部屋を出た、という印象を僕は受けました」

「逃げたのかもしれないわ」

「分かりません。ですが、外を探す必要もあります。柳ヶ瀬さん、今度はご一緒できますか?」

「さっきは悪かった。そういうのは男の役目だな」

 柳ヶ瀬は立ち上がる。

「それって最低の思想。わたしも行く」

 来栖も立ち上がる。そこへ藤枝が戻ってくる。

「お電話、代わってもらえますか、場所の説明ができなくて」

「あら、分かりましたわ。山奥の僻地ですからね。わたくしも住所しかわかりませんわ。坂崎さん、田村さん、アルフくんはここで待っていて下さい」

「ミーも、だいぶ良くなった、手伝うよ」

「いいえ、ここにいて下さい」

「オーケー、それが役目ね、徹するよ」

 甲斐も立ち上がり、ロビーに移る。芹沢は受話器を持ち、警察と話をしている。電話は通じているようだ。数時間もすれば警察が来るだろう、それまでに甲斐ができることは何だろうか。

 もし、篠塚桃花がこの状況を見たら、すぐに犯人を突き止めることができるだろうか。

 けれど、今彼女はいない。

 それなら、自分で考えるしかない。

 どうして自分が?

 だって、しょうがないじゃないか。

 あの時だって、

 結局……

「おい、甲斐、行くぞ」

 柳ヶ瀬はすでに靴を履いていた。来栖もブーツを履いている。ジャージにブーツは激しく似合わない。

 甲斐も靴箱から自分の靴を取り履いた。

 柳ヶ瀬が玄関を横に開ける。次の瞬間、柳ヶ瀬はしりもちをつく。

「やっ」

 来栖が短い悲鳴。

 甲斐も外を見た瞬間、言葉を失う。

 五十嵐さつきだ。

 すぐ先に仰向けに。

 胸には杭。

 甲斐はゆっくり近づいた。

 昨日と同じ服だ。

 その服に、何かが挟まっている。

 甲斐は手を伸ばす。

「お、おい、触るのかよ?」

 大量の紙。

 おそらく、昨日のテストだ。

 その一番上に、赤い文字の書かれた紙を見つける。

「聡明でなければ、良き助言にも気がつかない」


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