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サードパーティー  作者: なつ
第三章 装飾された殺人の謎
18/28

 3

 全員の動きが止まる。

 最初に立ち上がったのはアルフレッド・インディーだ。甲斐雪人も立ち上がる。叫び声は夢宮さやかのものだ。

「わたくしも参ります」

 芹沢雅も立ち上がると、キッチンから廊下を走る。T字を右に曲がり、最初の扉。扉には使用中のタグが降りている。

「さやかさん、どうしたのですか?」

「が、ぎ、ぎぎ、ぎ、ち、ちよ、ちょー」

「大丈夫か?」

 甲斐も声をあげる。

「わ、あた、しはだい、じょうぶ。で、も、ち、ちょーっと、まて、まって。あ、ああ。でも、ミヤビ、さま、いい、よ。あ、でも、だめ」

「何だ、開けるぞ?」

「だん、だめー、あと10秒」

「何だよ」

「ふ、服着てんのよ、待ってよ」

 ようやく夢宮の言葉が落ち着いてくる。少し待つと、中から夢宮が扉を開けた。けれど、まだYシャツを適当に着ているだけだ、さっと見て掛け違えているのに気がつく。けれど、それ以上に夢宮の表情がおかしい。

「へい、ベイビー、顔色が悪いね」

「大丈夫、少し、落ち着いた。でも、見ないほうがいい。特に、ミヤビさまは」

「どうされたのですか?」

「雪くん、見てきて。浴室に、ああ、でも見ないほうがいいかも」

「はっきりしないな」

 けれど、甲斐の胸は激しく打っている。夢宮が指した浴室のすりガラスの扉。そこに、うっすらと黒い塊が透けて見える。浴室の床に何かがある。

「何?」

 夢宮は答えない。甲斐はアルフレッドと一度視線を合わせてから、扉に近づく。ノブに手を掛けて力を込める。

 黒い塊の正体が判明する。

 表向きに、

 裸で、

 胸に杭を打たれて、

 動かない、

 死んでいる、

 あの顔は、

 小野寺光次だ。

 胸からはおびただしい血が流れており、シャワーが当てられている。甲斐の足元近くまで濁った湯が溢れている。

「シット」

「最悪だ」

 浴室の壁面に、光次の血によってだろうか、文字が書かれている。

「お前は美しい」

 芹沢がそれを声に出して読んだ。

「シャワーを止めますわ。甲斐くん、彼がまだ生きているか確認できますか?」

 甲斐は頷く。芹沢はさっとソックスを脱ぐと浴室へと入っていく。小野寺を回るように移動して、シャワーの蛇口を捻る。甲斐はその小野寺の近くへ。だめだ。どう考えても生きているはずがない。胸に、間違いなく刺さっている。それに、見開かれた目から生気を感じられない。

「ここで殺されたのでしょうか?」

「分かりません。ですが、杭を刺されたのはここに間違いがありません。血が流れています。脱衣所に血痕は残っていませんでした」

 分からない。

 けれど、不思議だ。

 まるで、遮断機でも下りてしまったように。

 目の前の惨状を冷静に見ている自分がいる。

 アルフレッドでさえ、浴室の入り口で腰を抜かしている。

 自分が、分からない。

 まるで、あの時と同じように、自分とはまるで関係のない状況を眺めているように。

 冷静でいられる。

「平気、ですか?」

「わたくしは、あまり大丈夫ではありません。ですが、今自分のすべきことをしているだけです」

「夢宮が服を脱いで浴室に入ろうとしたのですから、脱衣所に彼の着ていたものはなかったはずです。別の場所で殺されたのか、気絶させられたのか、ここに運び込まれたのだと思います」

「あるいは、ここに誘って後で服を持っていったのかもしれませんわ」

「とにかく、一度ダイニングに戻りましょう。それで全員を集めないと」

「そうですわね」

 目を瞑り、大きく深呼吸をする。

「戻りましょう」


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