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サードパーティー  作者: なつ
第三章 装飾された殺人の謎
17/28

 2

 まどろみから目を覚ますと、甲斐雪人はゆっくり立ち上がった。見渡すと机にひれ伏した夢宮さやかがいる。脇に置かれているカップめんは伸びきっためんが汁を吸っていて、悪臭を放っている。甲斐はそれをトイレに流してからゴミ箱に捨てた。その後で課題の進み具合を見ると、残り1枚のようだ。

 デジタルの時計を見ると七時を少し回ったところだ。甲斐は夢宮の肩を揺らした。

「ぐはぁっ」

 ばっと左右を振り返り、頭を振る。

「は、今、何時?」

「その一枚をこなしても朝食に間に合う時間」

「私、いつから寝てた?」

「さあ、先に僕が寝てしまったから」

「いいわ、とにかくこの一枚に気合を入れる」

 十分ほど待っていると、夢宮は一枚の紙を持ち上げた。

「お、終わったぁ」

「よし、それじゃあ下に降りよう」

「おう」

 夢宮は紙の束を持って立ち上がる。甲斐は先に立ち扉を開けた。その間を夢宮が通り抜ける。

「ひぃぃぃぃぃ」

 微妙な叫び声が聞こえた。

「それって不潔っていう話」

 小動物のように壁面に背中をつけた田村澪が顔をふるふると震わせている。

「いや待て、誤解だ」

「そうよ、誤解だわ。雪くんってば先に寝ちゃうんだもの」

「その言い方も誤解を招く」

「不潔よ、不潔、不純極まりないって話よ」

「名誉毀損だ!」

「雪くんのそれも名誉毀損だけど」

 とりあえず甲斐は田村に状況を説明する。夜食の準備をしたり、その上その夜食を放置されたりと、ひどい話だ。

「まあいいわ。でもよくないわ。たとえ何もないにせよ、そんなことって絶対いけないこと、覚えておくとよいって話」

 階段を下りてキッチンに向かう。夢宮は甲斐に紙の束を渡すと、トイレに行ってくるといい、廊下を曲がらずに奥に進んだ。

「おはようございます」

 キッチンに入りながら、あいさつをする。キッチンには坂崎陽菜と芹沢雅がいた。二人とも料理を作っている。

「おはようございます。どうぞあちらに、好きに座って食べて下さい」

 ダイニングを見るとテーブルにはすでに料理が載っている。パンとサラダとスープがある……ついでに藤枝百合子が昨夜いた場所と同じところにワインのボトルを抱えたまま眠っている。

「あれ?」

「ふふふ、先生もよほどストレスがたまってたのかしら。わたくしが朝起きてきましたときからああなのですわよ」

「そのままなんですか?」

「気持ちよさそうなんですもの」

 キッチンではサンドイッチを作っているようだ。今日のお昼だろうか。

 田村は先にダイニングに行くと、さっと席に座り足を揺らしている。夢宮もキッチンにきて挨拶をしている。甲斐もダイニングに移って席に着いた。

「ミヤビさま、あの、パンを食べてからお風呂に入っても大丈夫でしょうか?」

「課題は終わりましたの?」

「はい、なんとか」

「お風呂の掃除は八時半からの予定でしたから、それまでに入って下されば問題ないですわ」

「ありがとうございます」

「でも、八時台は男性の時間になりますから、気をつけてくださいね」

「雪くん、見張っててね」

「僕が?」

「さあ食べるわよ」

 まるで無視。昨晩柳ヶ瀬尋司もアルフレッド・インディーもお風呂に入っていたし、課題の少なかった小野寺光一、光次もきっと入っているだろう。二人が起きてきたら一応確認を取ろう。

 甲斐がサラダを前の皿に取り分けていると、アルフレッドがグッモーニンと元気に唸りながらキッチンから入ってきた。白いシャツから筋肉が暑苦しく揺れている。

「今日はとてもグッドな天気ね。窓からのサンシャインがとても美しいかったよ」

「おはようございます、どうぞダイニングへ」

「ヘイ、ティーチャー、朝から寝てるなんて関心できないなぁ」

「これは朝からじゃないよ、昨日の夜から。飲んだくれ」

 なぜか甲斐が説明をする。オゥとアルフレッドは派手に肩をすくませた。それからしばらくして柳ヶ瀬が起きてきた。四角い眼鏡を揺らしながら、すでに学生風を着こなしている。

 それと入れ替わるように夢宮は皿をキッチンに持っていく。

「どうぞ、流しに置いておいてください」

「それではお風呂に」

「ごゆっくり」

 甲斐は時計を見る。八時を少し過ぎたところだ。甲斐もパンは食べ終わっている。坂崎がさっとコーヒーを出してくれて、今はそれをすすっている。一つ離れて座っている藤枝は相変わらず気持ちよさそうに、ボトルをこね回しながら寝息を立てている。結局いつまでここで飲んでいたのだろうか。

 田村もすでにコーヒーを冷ますように息を吹きかけている。

 少ししてから、芹沢もダイニングのテーブルについた。

 坂崎も座る。

 けれど、

 朝ののんびりとした時間は、

「ぎゃーーーーーーっ」

 という夢宮の叫び声で失われた。


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