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機人さんと自立支援医療リライト  作者: がらんどう
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クレイドル・13




     クレイドル・13



 御堂未知花の提示したロードマップを実行に移すと、あれよあれよという間に物事が転がっていった。

 これは、御堂未知花ら〈叫ぶ機人の会〉が既に水面下で動いており、あとは表の仕事として円滑に運ぶだけという段階にまで持って行っていたからだ。

 伊勢京太郎はさっそく、御堂未知花から紹介された、〈叫ぶ機人の会〉の連盟員である銀行融資担当の支倉進に出会った。そして、〈新規事業として、伊勢京太郎が機人の身元保証会社を経営する〉といった筋書きを話し始めた。

 実際のところ、この事業計画は、今の伊勢京太郎と椎名の関係、つまり、機人の身元保証人になることで、市役所など公共機関に払い下げられた機人達に、社会一般生活を営ませ、機人の機人らしく生きる権利・幸福追求権を世に問うという意味合いも持たせるため、非常に注目の事業となるだろう。

 実際、支倉進は、すでに仮の契約ではあるものの、上司から了承を得ており、あとは正式な融資契約を結ぶだけという段階にまで来た。彼が、どのように上司を説得し、この伊勢京太郎が経営することになる珍奇な〈機人身元保証業〉という新しすぎる事業の未来像を提示したのかはわからない。しかし、融資の話は上層部までしっかり通り、伊勢京太郎は〈機人身元保証業〉を開業することができる運びとなった。

 この間、わずか一週間も経っていなかった。

 伊勢京太郎は、あまりの事のスムーズな動きにどぎまぎしたが、深呼吸し、まあ、とりあえずは〈叫ぶ機人の会〉案件に関しては‘ええいまよ!と流れに任せることにした。

 

 一方で、刈羽市市役所に払い下げされた機人たちを再び別の機関へ払い下げる競争入札は続いていた。この払い下げられる機関が、よい組織であればいいのであるが、毎回、こういった市・特別地王自治体競争入札には、〈ドールレンタルカンパニー〉が参入しており、防衛軍として払い下げた時よりも安く手に入れようとしている。

 この動きに関しては御堂未知花ら〈叫ぶ機人の会〉のメンバーや、機人を払い下げられた市役所・公的機関もわかっていたことだった。

  戦争は人間の業である。ソレに機人なるものを生み出し。戦線に送り出してきたのが今までの人間の機人に対する立ち位置だ

 しかし、今はそうではないのだ。人間の形、人間の性格を習得しようと彼女たち機人は社会生活というものを学び、そして、それを受入れ、人間と共に〈日常〉を過ごすことを希望するようになったのだから。

 御堂未知花ら、〈叫ぶ機人の会〉はそれを声高に主張し、運動をじわじわと重ねていくことで、機人権の認知度・必要性を提示し、かつ、他国の戦争介入に否定的な自国民の層の支持を取り付けていた。その上で、〈叫ぶ機人の会〉は、刈羽市市役所において、機人の競争入札が行われる前に、ある情報を意図的にリークした。

 それは、競争入札に参加する〈ドールレンタルコーポレーション〉は防衛軍がバックに付いている組織であり、そこが身柄を確保した機人は皆、今、そして今後、さらに苛烈を極めようとしている中東の紛争地帯に再び戦闘機械として投入されようとしていると、週刊誌に暴露したのだ。

 このことによって、〈叫ぶ機人の会〉も〈ドールレンタルコーポレーション〉も一躍世間の注目の的となった。今までは、なんとなく、〈機人〉という存在と、〈機人権〉といったものにあまり関心を示さなかった者達も、

〈他国への再戦争介入と、一度日常生活に戻った機人たちを戦闘機械として再び働かせるために防衛軍が民間のダミー会社を使って暗躍している〉

 といったことに関心を持ち、ネットのSNSや掲示板などで議論がかわされ、大きなムーブメントが起こった。

 これはある程度〈叫ぶ機人の会〉も予想していたことであるが、思ったよりも大きなムーブメントとなり、〈防衛軍〉はバッシングの嵐を受け、結局、競争入札に参加するのを取りやめるほどになった。

 これは、吉報だった。当初、〈叫ぶ機人の会〉のプランでは、市役所職員である御堂未知花によって官製談合を伊勢京太郎と企み、事前に落札額最低額を伊勢京太郎に漏らし、〈ドールレンタルコーポレーション〉を蹴落とす予定だったからだ。

 今やその手間は省けた。不正を働く必要もない。そして、同時に、伊勢京太郎と椎名の二人は、〈叫ぶ機人の会〉を通じて、人間と機人という新たなカップル・生き方として意外なほど快く世間に受入れられ、応援が得られたのだった。


 結局、刈羽市市役所での機人の競争入札は、伊勢京太郎がその権利を獲得し、〈伊勢機人身元保証会社クレイドル〉を運営し、機人たちの身元保証を引き受け、仕事を斡旋し、調整する会社として世間にも認められたのだった。


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