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早田音さよの超絶物語  作者: 中二病少女
第一章 私達の出会い
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魔法学校の生徒4

 ようやく午前の授業がすべて終わった――午前は俺のいた世界と同じような内容だったのでつまらなかった。新しい環境で受ければ普通の授業も楽しいと思ってたがそんなことはなかった。自分が興味がない授業はつまらない。そういうことなのだろう。

 でもここからは違う!ここからは未知の領域だ。授業がこんなに待ち遠しいなんてこと実際あるんだな。授業大好きとか言ってる奴って次元の違うやつらだと思っていた。なんだかんだ言って魔法には興味がある。せっかく魔法学校に通ってるんだ。自分の世界に帰る前にせめて一つくらい魔法を使えるようなってから帰りたい。きっと俺が魔法を使ってたらみんな驚くだろうな。そんなに魔法を見せる相手はいないけど……。

「雛井君一緒にご飯食べましょう」

 隣に座っている雛井が弁当を机に出しながらそう言ってきた。この弁当は朝俺が作ったやつだ。朝残ったパンを使って作ったサンドウィッチ。朝飯を作る時に暇すぎてたくさん作りすぎてしまった。と言っても最初から弁当にする気だったんだが――女子に弁当を作って食べてもらうのって結構恥ずかしい。逆なら別に何とも思わないんだけどな。

 あれ?さっきは考え事をしていて気が付かなかったが気が付けば教室にほとんど生徒がいなくなっていた。みんなどこに行ったんだろう?

「なあ雛井」

「なんですか?」

「なんでこんなに人が少ないんだ?」

「えっとですね、昼食は教室か自分の所属しているギルドのギルド室か精霊喫茶のいずれかで食べることになってるんですよ。だから昼食の時はほとんどのクラスがこれくらいですよ。誰もいない教室もいくつかあると思います」

 ギルド室ってのは校長が言ってたやつだよな。精霊喫茶ってなんだ?学食みたいなものだろうか?

「精霊喫茶ってなんだ?」

「学校の前に学校が公認の喫茶店があるんですよ。私は行ったことないんですけど、なんでもいろんな生き物になりきって接客してもらえるらしいですよ。それに一回食べたら病みつきになるくらい美味しいって言ってました」

「そういや学校に来る前にそんな店があったな――あれがそうなのか」

 あの派手な店が俺の世界で言う学食みたいなやつなのか。まあ金のない俺には関係のない話か。そもそも俺は昼飯は自分で作る派だし、行く機会はほとんどないだろう。

 俺は椅子を雛井の机に前に移動させて同じ席で食べることにした。結局、このクラスに残っていたのは俺と雛井ともう一人小柄の女子の三人だけだった。あいつもギルドに入ってないのか?

 その少女は今もなお現在進行形で本を読み続けている。あいつ飯とか食わないのか?滝見と喧嘩していた時もその子は俺や滝見に目を向けることもなく黙々と本を読んでいた。そのせいでかなり印象に残っている。

 あいつはと関わることなんてないだろうな。あの子はきっと俺と同じタイプだ。出来るだけ人とかかわりたくない。そんな空気をかもしだしている。そう言うやつには話かけても嫌がられるだけだからな。俺もそうだったし。



「雛井、良かったら一緒にギルド作らないか?」

 俺は午前の授業中に考えていたことを話した。

「――んっ、こほこほ」

 俺がそういうと雛井が急にむせ始める。その仕草に少しドキッとしてしまう。女子と二人きりで学校で昼飯を食べるなんて俺ってかなりリア充なんじゃないか?リア充に見えるだけか。実際はただの友達だけど……。まあクラスで話せるやつが居るだけでも幸せだな。

「な、何言ってるんですか?私達でギルド作るなんてそんなの……」

「だって雛井は人と話すのあんまり好きじゃないだろ?俺もあんまり話すタイプじゃないしな」

「で、でも――」

「それにギルドに入らないとクエストが受けれないんだろ?なら俺は金銭的に絶対に入らないといけないんだ。いつまでも雛井の金に頼るわけにはいかないからな。クエストもどんなのがあるか知らないけど、危なくないやつを選んでいくから頼む」

 俺は頭を下げて頼む。多分、こんなことされたら雛井は断れないだろう。雛井の性格を利用してるようで気が引けるが今はそんなこと言ってる場合じゃない。これからずっと雛井の金で暮らしてくもの男としてありえない。それに俺の性格的に他人のギルドに入ってやっていける自信がない。

「分かりました……そこまで言うなら……」

 雛井はしぶしぶ俺の提案を了承してくれる。

「そそそ、その、ギルド作るには三人以上の人がいないといけないんですよ。知ってますか?」

「そうだったのか?」

 てっきり誰でも作れるものだと思っていた。

「多分ほとんどの人達がすでにギルドに入ってると思いますよ。それに私達みたいな階級の低い魔法使いがギルドを作っても入ってくれる方は少ないと思います……」

 確かにそうだな……。さっきの反応を見るかぎり俺達がギルドを作っても入ってくれそうなやつは少なそうだ。生徒会長はああいってくれてが今まで避けていたことで雛井と一緒のギルドに入るのは後ろめたさを感じたりして入ってくれるか心配だ。そもそもまだギルドに入ってないやつって誰がいるんだろ?直也とかなら入ってくれるだろうか?好きな人と同じギルドに入りたいって言っていたけど何とか説得して入ってくれないかな?俺は気に入られてるみたいだし。そもそも俺はどれくらいの階級なんだ?

「雛井は俺の階級知ってるか?」

「ごめんなさい、わからないです。でも、魔法が使えないなら多分私と同じF級になってると思いますよ」

「一応聞くけどF級って一番最下位か?」

「はい……。そもそもF級は私の為に作られたものなので。少しでも魔法が使える人だったらE級とかになってると思います」

 雛井は苦笑いしながら言う。また余計なことを聞いてしまった。

「あの少しいい?」

 気が付くと俺達の後ろに一人の小柄の女の子が来ていた。この教室に残されていた最後の一人。茶髪のショートカットで雛井と同じ幼児体型の女の子。

「あなた達ギルドを作るの?」

 突然話しかけられたせいか雛井が黙り込で目を伏せてしまう。雛井はこいつのことが苦手なのだろうか?雛井のコミュニケーション能力が低いおかげで最近人と話すことが多くなってきた気がする。

「ああ、そのつもりだったんだけどな。三人いないと作れないらしいからどうするか困ってたところなんだ」

「私は神奈月優香(かんなづきゆうか)。良かったら私もいれてほしい」

 なっ!?どういうことだ?こいつ一体何を考えてるんだ。俺ら二人のギルドに入ってなんかメリットがあるのか?

「私も雛井さんと同じでF級だからどこにも入れてもらえるとこがないの」

 そう言いながら自分の生徒手帳のようなものを見せてくる。そこには確かにF級魔法使いと書かれていた。名前は神奈月優香か。てか、俺そんな手帳貰ってないけど……。それにしても雛井以外にもF級魔法使いがいたのに驚きだ。雛井のために作られたみたいなこと言ってなかったか?こいつも雛井のように避けられていたのだろうか?

「俺はいいけど……」

 目の前で固まっている雛井に目を向ける。あきらかに神奈月が来てから雛井の様子がおかしくなった。今までとは違う感じ……完全にこの神奈月に対して苦手意識を持っている。

「悪いけど、雛井は人付き合いが苦手なんだ。入ってくれるのはありがたいんだけど……」

「わかったわ。無理言ってごめんなさい」

 顔色一つ変えずそう言って自分の席に戻って行く。

「待ってください」

 雛井が勢いよく立ち上がり自分の席へ戻ろうとしていた神奈月を呼び止める。

「そそ、その、少し考えさせてください」

「そう……ギルドに入れてくれるならまた話しかけて」

 そう言うと神奈月は自分の席へ戻り本を読み始めた。無愛想なやつだな。あいつも人付き合いが苦手なのだろうか?ずっと本読んでるし、本以外まるで興味ないって感じだ。

「あ、あの神山君に話したいことがあります」

「なんだ改まって?」

「そ、その高校に入る前に普通は学科試験と実技試験があるんですよ」

「そんなのがあったのか」

 入学試験受けてない俺って大丈夫なのか?これって裏口入学なんじゃ……ま、まさかな。校長が何とかしてくれてるだろ。そもそも転校って扱いだし……大丈夫だろ、多分……。

「はい、それで実技試験のほうで魔法を見せる場面があるんですけど……」

「それがどうしたんだ?」

「二人一組でやるんですよ…………」

 ――二人一組か。ここまで聞いて何となく言いたいことを察することができる。

「そのもう一人の方がさっきの神奈月さんだったんです……。もちろん、神奈月さんは魔法を失敗してしまいました。だから、私絶対に嫌われてると思ってました……」

 そうか。それでさっきみたいな反応になったのか……。じゃあ、あいつは魔法が失敗したからF級になったのか?

「でも、さっき生徒会長が言ってただろ?魔法が失敗するのは雛井のせいじゃないって」

「そうですね、でも、私が近くにいたから……。神奈月さんはきっと私のこと恨んでると思います……。でも、神奈月さんはそれでも私のギルドに入ってくれるって言いました」

 今にも泣き出してしまいそうな声で神奈月に聞こえないよう雛井は話しを続ける。

「私嫌です――自分が嫌いです。優しくされるとどうしても裏があると思ってしまうんです。さっきも助けてもらった生徒会長さんを疑って、今も神奈月さんを疑ってます……。きっとクラスの人達のこともまだ信じれてないと思います……」

 こいつそんなに自分のこと思いつめてたのか……。全然気が付かなった……こういう時に俺はなんて声をかけてやればいいんだ?大丈夫か?元気出せよ?だめだ。そんなこと言ってもなんの意味もない。

 でも、俺はこいつを安心させてやりたい。

「俺だっていきなり優しくされたりしたら絶対に怪しむと思うぞ。それに何か裏があるならそれでいいんじゃないのか?人間なんてみんなそんなもんだぞ。だから安心しろ。みんな一緒だ」

「でも……」

「大丈夫だ。もし何かあっても俺が付いてるだろ。俺は何が何でもお前の味方でいてやるからな」

 雛井が顔を真っ赤に染める。ああ、また変なことを言ってしまった。こいつと話しているとついこういったことを言ってしまう。

「そそ、そうですね。神山君がそう言ってくれるなら安心です……ごめんなさい、急に変な話をしてしまって」

 そう言うと覚悟を決めたかのように雛井は神奈月の方へ歩き出した。

「あ、あの神奈月さん」

 神奈月は本を読むのをやめて雛井の方を向いた。

「さっきはごめんなさい。いきなり話しかけられて動揺してました……。神奈月さんは私のことどう思ってますか?」

「入学試験のこと?」

「はいそうです。そのことで私のこと恨んだりしてませんか?私のせいでF級と言う階級になってしまって……」

「別にあなたのせいじゃない。あれは私がちゃんとできなかった。生徒会長が言ってたでしょ?それに私は階級なんて気にしないわ」

「ですが……」

「それより私はギルドに入ってもいいの?」

「神奈月さんさえよければぜひ入ってもらいたいです。でも、本当にいいんですか?私と神山君しかいないギルドですけど……」

「だからいいの。私は人が多いのは苦手だから雛井さん達のように新しく作ったギルドに入りたかったの」

「そうですか……」

 神奈月は無言で手を差し出す。雛井はその行動の意図を理解できず戸惑っている。

「えっと、どうしたんですか?」

「握手」

 神奈月にそう言われ慌てて雛井も手を差し出した。

「これからよろしくね、雛井さん」

「は、はい。これからよろしくお願いします」

「神山君もこれからよろしくね」

 雛井と握手をしながらこっちを向き神奈月がそう言った。

「ああ、よろしくな」

 これでこいつらも仲良くなってくれると嬉しいな。

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