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早田音さよの超絶物語  作者: 中二病少女
第一章 私達の出会い
4/50

休息

 雛井の家に帰る前に俺の希望でコンビニに寄ることにした。もしかしたら俺のいた世界に存在していないものとかが売ってるかもしれない。そんな期待しながら俺達はコンビニに入る。

「いらっしゃいませー」

 店員のお姉さんが元気よく挨拶してくる。

「こんばんは。いつもご苦労様です」

 雛井は律儀に店員に対して挨拶する。コンビニの店員に挨拶するやつなんて初めて見たぞ。

「雛井ちゃんいつもありがとね」

「こちらこそいつもありがとうございます」

 雛井が言っていた仲のいいやつってこの店員のことなのだろうか?さすがにそれはないか。コンビニの店員に名前を憶えられる雛井って……。

 俺はコンビニに来る前に雛井からお金を借りていた。こっちの世界の通貨もどうやら俺のいた世界と同じものだったので少し安心する。でも、分かっていたことだがやっぱり普通にコンビニだった。

「今日はこれにしましょう」

「待った!!」

「ひい、ど、どうしたんですか?」

「お前毎日こんなのばっかり食べてるのかよ?」

 雛井の手の中にあるのはいわゆるコンビニ弁当だ。

「こんなのって言わないでください。買ってすぐに食べれるなんて凄いことですよ!」

「コンビニ弁当が悪いとは言わない。けど、俺と一緒にくらい以上は食生活はちゃんとしたものにしてもらうぞ」

 このコンビニにはまるで普通のスーパーのように野菜や肉、調味料などほとんどのものが揃っている。おまけに服なども売っている。ここで生活に必要なもの全部揃うんじゃないか?もうコンビニじゃなくてスーパーでいいだろ!

 せっかく借りた金でいろいろ買おうとしたが仕方ないか。とりあえずこいつの金だし、こいつに俺の料理の腕でも見せてやるか。はっきり言って料理の腕には自信がある。

「ごめんなさい。私料理とかしたことなくて……で、でもほんとにここのお弁当は美味しいんですよ」

「いや、別に不味いとは言ってないだろ。でも、ここの弁当より俺の作る飯の方が美味しいと思うぞ。明日の朝を楽しみにしとけ」

 咄嗟にそんなことを言ってしまう。こいつには助けてもらった借りもあるし、毎日美味しいものくらい作ってやるか。って夫婦かよ!

 どうせ自分のは自分で作るつもりだったし、一人分作るのも二人分作るのもあんまり大差ないことだ。

「ね、雛井ちゃん。今日は友達と一緒なの?」

 店員が雛井に話しかけてくる。今このコンビニには俺と雛井とこの店員の三人しかいない。きっと暇だったので話しかけに来たのだろう。

「えっと、それは……」

「ああ、俺はこいつの友達だ」

 俺がそういうと雛井が顔を真っ赤にしながら首を縦に振る。

「へーそうなんだー。雛井ちゃんちょっといい?こっちに来て」

 ニヤニヤしながら雛井に何か耳打ちする。なんて言ってるかは大体予想できるが……。話しが終わり、雛井は首を傾げている。今ままで見てきたけど雛井はそういうのには鈍感そうだからな。

「店員さん、俺達はそんなんじゃないから」

「ちぇー、つまんないの。雛井ちゃんにはこれからも純粋なままでいてほしいからこれでいいっか。ま、これからも雛井ちゃんのことよろしくね」

「ああ、仲良くするように頑張ってみるよ」

 雛井はぽけーっとしながら俺達二人の会話を聞いてた。



 買い物が終わりコンビニを出て再び雛井の家に向けて見たことのない歩道を歩き始める。

 店員さんは「またいつでも来てね」といいながら俺達を笑顔で見送ってくれた。あの店員絶対俺が雛井のこと好きだと勘違いしてるだろ……。

 さっき店員に聞いたがこのコンビニは大きいスーパーから結構離れているため、ここには野菜や肉などの生ものなどが売ってるらしい。値段も良心的だし、きっと俺もここへはこれから通うことになるだろう。それを考えるとこの先が思いやられる。それにしてもこいつどうしたんだろう?横を歩いているこいつの方を見る。学校を出てからずっと俺と目を合わせないでどこかそわそわしている。

「なあさっきからどうしたんだ?」

 雛井は俺の急な質問に体をびくんとさせる。

「ななな、なにがですか?べ、別に私は何とも…………」

 雛井はそう言うと黙り込んでしまう。またやってしまった。自分では仲良くなっているつもりでも相手からしたらそうじゃないのだろうか?他人の考えてることなんて全然わからない。


 ――それから無言の時間が続いた。なんであんな質問してしまったんだろう?これからずっとこいつこいつと一緒に暮らさないといけないのに……。

「神山君、一つだけ聞いてもいいですか?」

 雛井が俺と顔を合わせないように歩いたまま話しかけてくる。

「そのさっき校長先生と話してた時に言ってたじゃないですか?『俺はお前のことなんて友達とも何とも思ってない』そう言われた時もの凄くショックでした。でも、さっきコンビニで友達って言われた時とっても嬉しかったです。結局私って神山君の友達なのかなって考えてて……。ごめんなさい、変なこと聞いてしまって……私と友達なんて嫌ですよね……」

 雛井は悲しげにそう教えてくれた。そうかこいつそんなことで悩んでたのか。いや、こいつからしたらきっと相当重要なことなのだろう。

「あの時はああでも言わないとお前俺の代わりに死ぬとか言いだしてただろ?結局、死ぬ寸前に目の前に飛び出したから意味なかったけどな。俺はお前のこと友達だと思ってるぞ。だから安心していいぞ」

 口からついそんな言葉が出てしまった。自分でも言ってて恥ずかしくなってくる台詞だ。でも雛井は鈍感なところもあるし、これくらいしっかり言わないと伝わらないだろう。

「でも……私と友達なんて……」

「お前が友達って思ってなくても俺の中ではお前はもう友達だからな」

「そ、そんなことないです!わ、私も神山君ことは友達だと思ってます!」

「なら良かった」

「これからもよろしくお願いしますね」

 満面の笑みでそう答えてくれる。一瞬、ドキッっとなってしまう。ただ純粋に可愛いと思っただけだ。本当に特別な意味はない。雛井はただの友達だ。



 そうこうしてる間に雛井の家まで到着する。ようやくまともに休める場所に到着した。

「ど、どうぞ。上がってください」

 雛井は緊張しているのか少し照れながらそう言った。

「お、おう」

 今更だがやっぱり女の子の一人暮らしの家に自分が止まってもいいのだろうかと思ってしまう。

 俺は玄関にコンビニで買った荷物を置き、少し体を横にした。

「ふぅ、やっと休める……」

 そう思った瞬間に一気に眠気がやってきた。ヤバイ――こんなところで……寝るなんて…………。だけどこの眠気には勝てそうにない……。今日はいろいろなことがありすぎたし仕方ないか。全力で森を走ったり、二回も殺されそうになったりと精神的にも肉体的にもきつかった。もしかしたら朝起きたら全部夢だった、そういうこともあるかもしれない……。夢だったらそれはそれで残念だ。せっかく雛井と仲良くなったのに……。俺の人生はこれからどうなるんだろう……。そして俺はそのまま眠りについた。

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