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ボイス  作者: シアラ
9/9

第9話

その夜、私は滅多に見ない夢を見た。さっき考えていたように、みんなが集まっていたのだ。非難の矛先は私に向けられる。

「ヤスと付き合っていたくせに、すぐに聖也と付き合うなんて・・・。聖也はカナもお互いに好きだったのに!」

 みんなに非難をされ、ヤスからも

「お前ってほんと軽い女だな」

 とまで言われたところで目が覚める。地元の友達とよく集まる初石のデニーズでの夢だった。高校の友達とは行ったことのない場所ではあったが、やけに現実っぽい設定の夢で、「これは夢」と何度も言い聞かせる。

「私が悪いわけじゃないし・・・」

 みんなへの不信感が余計に深まった。そして、「みんなに非難をされても・・・」あの言葉が嘘だったことに気がつく。

 そんな中でも、今までと変わる事なく大学生活は続く。サークル仲間のふみにコンパに誘われた。ダンス部の男友達が主催するコンパで、メンバーは三人ともダンス部だということだ。

「優香は彼氏と別れちゃったんだよね。だったら一緒に行ってくれるよね。」

 少し考えたが、正直、しばらくの間は恋愛は休みたい気分でいっぱいだった。

「友達作りならいいけど、彼氏はしばらくはいらないかな」

「何言ってんの?今恋愛しなかったらいつするの、今でしょ?(笑)」

「まーそうなんだけど(笑)」

「優香は出席ということで、ね、ね、いいよね?」

「うーーーん。あくまで友達作りの一環ということでね」

「でも、一言もしゃべらないのは無しだからね」

「あ、それいーかもね」

「んーもうだめだめ。優香はいつもどおりムードメーカにならなきゃ始まらないでしょ。よろしくね」

「日にちはいつ?」

「今週の金曜日、絶対に予定空けといてよね」

「はいはい」

 集合は渋谷の居酒屋だった。渋谷にはクラビンをする為に、夜中には行く事があるのだが、昼間の渋谷は優香にとって久しぶりだった。せっかくだからと、今日はウィンドウショッピング目的で文と一緒に早めに渋谷で待ち合わせをしていた。午後三時。クレープを食べながら、空いているテーブルを探して椅子に腰掛ける。

「そういえば優香、例の彼とはどうして別れちゃったの?めんどくさくなったって聞いてたけど、ほんとのとこ、詳しい話が気になってたんだよね」

全てを話せば長くなるし、なんと言ってもコンパ前だ。重い話はしたくないし、聞きたくもないだろう。

「ちょっとみんなに裏切られちゃってね」

「浮気かー。それはしょうがないって言うか、男ってやっぱり最低な人多いよね」

「うん」

「優香はちゃんとした人を見つけなきゃだめ!かわいいしおもしろいんだから、優香は自信をもたなきゃ」

 聞いてもないアドバイスまでもらった。

「ありがとう、文」

 文は固定の彼氏は作らない。いわゆる遊び人の類とでも言うのだろうか。それでもとてもさっぱりしているので、私は悪い感情は全くと言って持っていない。逆にそんな文の恋愛観に憧れる点もいくつかある。文もまたフライガールでダンスも少しかじっていた。文の本当のタイプは黒人なのだ。だから滅多に出会う機会もなく、高校時代は黒人の彼氏がいたが、ある日突然母国アメリカに帰国してしまい、そのショックから今のような恋愛観になったと言う。彼氏はいるが、複数の彼氏がいて、彼氏たちには他にも彼氏がいる事もちゃんと話している、と言う。それは、自分にも魅力がないとできない事だと思う。文はもちろん顔もスタイルも申し分がない。それに加えて、よく気も利くが自由奔放な人間である事は見る人が見ればすぐにわかる。それでも誰からも嫌われる事はないだろう。とてもさっぱりとした性格なのだ。文が羨ましく感じる事も度々ある。しかし、もし自分にそんな魅力があったとしても、自分ではそんなに疲れる事はできないだろう、とも思うのだ。つまり他人として認める事のできる存在なのだ。文には後日、聖也との本当の事を話さなきゃと思う。さっぱりとした答えを文なら出してくれる気がする。

 6時40分。

「そろそろ里美さとみも来る時間かな。電話してみるわ」

「うん、よろしく」

 里美は、文と同じ高校の同級生で、サーフィンをしている友達だ。私とはサーフィン繋がりで、会うのは今日で五度目になる。里美はR&Bが好きで、ブラックミュージック繋がりということでヒップホップもたまに聴く。一緒にクラブに行った事も一度ある。そこで里美は、ナンパをされたユウジの事を好きになった。それでも、その日のうちに肉体関係を持ってしまったものの、連絡も里美からしない限りは無いという。つまりただ遊ばれてしまったのだが、それをわかった上で、里美はその関係を三ヶ月の間続けている。会ったのは七回だという。

「時間とってくれてるのなら、もしかするともしかするかもよ」

 と文は言うものの、

「デートはホテルとご飯だけ」

 との事だった。みんなそれぞれ恋愛には事情がある。男の身勝手というのか、いや、女の中にも文のような女だって、悪くはないがいるのだ。遊んでる男でも、本命の女には、本気の恋愛をするのだろうか。わからない事は山ほどあるが、考えたところで何の答えにもなるわけでもなく、こればかりは誰にも答えを出す事はできない永遠の難題だろう。だから恋愛は難しい。

「里美~」

「文~、優香~」

 里美が早足でこちらに向かってくる。里美は身長が高い。私の身長は150センチ弱だ。

「小さいともてるでしょ」

 とよく言われるが、恋愛の中では、妹扱いをされてしまうなどの、子ども扱いを受ける事くらいしかないように感じている。それに、モテ期がきた時も、それを身長が低いお陰だ、とは思いたくはない。それでも、身長が低いことで得をしている事もいくつかあると思う。子供扱いをされる分、たいがいみんな私に対して優しい。

「優香はかわいいから」

 と、ただの男友達からも、普通の調子でいつも言われるのだ。真に受けることはしないが、身長が小さくて「子供のようでかわいい」そういう意味だと私は理解している。

「子供扱いしないでよ」

 そうは言うものの、恋愛感情のない男友達にそう言われることだって損ではないし、「かわいい」のだから、嫌なことでもないだろう。

「優香、背伸びた?」

「ヒールだし」

 それがいつもの里美との会話の始まりだ。

「優香、彼氏と別れたんだって?今日はいい人探そうね。多分あたしとかぶることはないと思うし、大丈夫だから頑張ろう!ダンス部だからかっこいい人多そうだし、ね」

「優香は友達限定なんだって、今日は」

「そうなの?優香。相手はダンス部だし、本命探そうよ」

「うん、でも何だか今疲れちゃっててさ、そういうの」

「だめだめ。常に恋愛はしてないと、輝きが消えちゃうぞー」

 そんな話をしながら、三人は約束の「葵や(あおいや)」に向かう。

 

 その日のコンパは思いもよらず楽しかった。深夜2時。私たちは二次会のあとの、女子だけの三次会でサイゼリアに来ていた。決して顔がタイプとは言えないが、笑いのツボの合う男の子が一人いたのだ。芸能人でいうと、お笑いのザキヤマのような感じだった。外見は少しぽっちゃりしているBボーイ。私は彼の言葉に何度も大爆笑した。

「あの男、うるさくてうざかったんだけど」

 文はそう言った。

「私は楽しくてしょうがなかったんだけど(笑)」

「お笑い聞きに来てるんじゃないないっつーの」

「じゃあ文はやっぱり隆也たかやくん狙い?」

「かな?でも、彼、本命を探したいって言ってたし、私には無理だろうな、とも思った。里美は?」

「私は将太しょうたくん、結構いいと思ったんだけど・・・」

 ザキヤマだ。私も最初は里美がすごく楽しんでるな、と思ったけど、後半はずっと別のイケメンのじゅんくんとずっと話していたから、やっぱりそっちか、と思ったのだが・・・

「里美、意外・・・。だけどって何?」

 文はすかさず聞いた。

「だけど、小さい子が好きだって言ってて、多分、優香なんだろうなと思って」

「いや、私は聞いてなかったけど」

 気まずい空気が一瞬流れかけたが、文は、

「里美は純くんがいいでしょ?めっちゃイケメンだしさ」

 イケメンだから好きになるとは限らないのだ。それでも気がつくと、

「そうだよ、彼も里美のこと気に入ってそうだったし。」

 と、発言をしていた。それでも純は確かに里美を気に入っていたように見えた。それでも電話番号とアドレスは途中に全員で交換したのだ。だから誰が誰を気に入っていたのかも余計にわからない。

 

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