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ボイス  作者: シアラ
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第1話

難しい言葉を一切使わずに、誰でも読みやすい恋愛小説になっています。ノンフィクションの部分も交えているため、共感していただける部分もあると思いますので、ぜひ、一読してみてください。

心を空っぽにして読んでいただきたいと思います。

「優ちゃーーーん」

叫ぶ声が聞こえたがそれは幻だったのだろうか。



桜の花びらが汚い。そう感じるのは、仕事が忙しいからだろうか?車のフロントガラスに散った桜の花びらはお世辞にも綺麗とは言えない。これから聖也せいやに会う約束だ。急いで花びらをで拭い取り、汚れた手のままで車のエンジンをかける。約束の場所まで、ここからだと30分はかかるだろう。約束は午後6時半。車を走らせいつもよりスピードを上げる。


 聖也とはもう5年の付き合いになる。高校時代のクラスメイトだった。クラスでも人気のあった優香ゆうかは誰と付き合うことになるのか?を男子生徒が数人で賭けていたという。優香にとって決して嫌な事ではなかった。二年生で同じクラスになり。初めて言葉を交わした。

「俺の席ここ?」

「・・・みたいだけど」

 一年生の時から優香が気になっていた聖也は、ここぞとばかりに声を掛けた。運命的な事に隣の席だった。そしてそれから二人の仲は急接近した。

 


交差点を通り過ぎた時に優香の携帯電話の着信音が鳴る。聖也だ。「ちょっと遅れる」とでも言うのだろう。車を路肩に寄せて電話に出たが声がよく聞こえない。

「もしもーし」

 何度も言うが、雑音が凄くてうまく声が聞き取れない。ぼそぼそと声がして、電話が切れる。優香は掛け直すが聖也は出てくれない。きっと遅れるという事だ。その直後にメールがきた。

『柏の葉公園に来て』

 どうした、というのか。今日は二人の「付き合って五周年記念日」で、柏の葉公園の近くのサンマルクレストランでディナーをする予定だ。

『オッケー』

 とメールを返し、すぐにアクセルを踏み込んだ。



 聖也といた5年の月日には色々あったのだ。喧嘩になった事も、半年間の離れていた時期もあった。学生時代には聖也も優香も人気があったので、付き合うことができずに、優香にも聖也にもお互いに彼氏彼女がいた。付き合い始めたのは高校を卒業してからだった。

 高校に入学した初日、聖也は友達と話をする為、優香のクラスのドアの前に立っていた。教室の中を覗いている時に優香と目が合った、と聖也は言う。その瞬間に一目惚れをしたらしい。いくら言われようが優香にはその覚えはどこにも無い。そして、席が隣になってからは、二人は付き合ってるんじゃないか、との噂もよくされた。いつもくだらない話や冗談を言い合う。それでも、優香にとって聖也は、手の届かないお兄ちゃんのような存在に感じていた。

 

 優香は放課後も、夜遅くまで遊び歩いていた。毎日、ファミレスや公園、そしてカラオケ漬けの日々で、ナンパで知り合った友達も少なくない。その中で一人、優香が好きになった男がいた。亮二りょうじという2つ年上の男だ。彼はいわゆるHIPHOP好きなBボーイだった。坊主頭にニューエラのキャップを被り、お決まりの白いスニーカーを履いている。亮二の影響で優香もまたHIPHOPを聴くようになり、フライガールになった。ジェイ・ZもDMXもビギーも2Pacも教えてくれたのは全部亮二だった。出会った当初、亮二には彼女がいたが、しばらくしたある学校帰りの夜、優香と亮二は偶然に駅で会ったのだ。亮二の真っ白なTシャツは砂のようなもので少し汚れていた。すかさず突っ込みを入れようとしたが、今日の彼はいつもと少し違っていた。ポケットに手を突っ込んだまま、何も話そうとしない。優香が微笑んでもいっこうに表情を変えない。優香は何も言わずに、手の平でその汚れをサッと払い落とした。

 その直後だった。

「俺と付き合って欲しい」

 驚いてひっくり返りそうになる。

「だって彼女が・・・」

「別れたんだよ。だから一緒にいよう」

 亮二はいつになく真剣な表情だった。そしてそれを境に二人は付き合うようになった。もちろん、聖也はそんな事知るはずも無かった。

 

 着信音が鳴る。聖也だ。いつものように冗談を言いながら楽しい会話が続く。

「早く車の免許欲しいな」

「聖ちゃんが運転するのちょっとこわいよ」

「うるさいよバーカ。俺、卒業したらすぐにさ、お前の為に免許とるよ」

「じゃあ助手席に乗せてくれるの?」

「一番に乗せてやるよ」

・・・・・・・・・・・・・・・・

 聖也にとってそんな言葉は、きっといつも誰にでも言っている言葉だろう。それでも優香は少し心が弾んだ。

 ある日いつものように席替えをして受ける授業があった。隣の男の子とも優香は笑いながら楽しそうに話をする。

「あまりしゃべると・・・」

「あ、ごめん。授業だよね。うるさくてごめん」

「いや、君の彼氏に怒られるからさ」

 優香はきょとんとした。

「え、彼氏知ってるの?」

 まさかこの学校にいるはずもない。男の子は斜め後ろを振り返ると、小さく指を差して、

「あの人がさ」

 指を差した先には聖也がいて、それに気づいた聖也は、

「何?・・・なんだよ」

 と、ぶっきらぼうに言った。

「あの人全然彼氏じゃないから。席が隣なだけ」

 優香は小声でそう言って笑った。

 

 その事について聖也に聞いてはいないが、今となっては、もしかして、私の事彼女だって言ってたのかな、そう思うと気持ちがウキウキしてくる。何かあった時に言ってやろう!と思っている。優香は突然気分が良くなってくる。

「♪公園まーではあとすこーしー口笛をふーきながらーーーー♪♪♪」

 公園の入り口には犬のモニュメントがある。渋谷のハチ公のパクリじゃないか、といつも聖也と話していた。昔からここで待ち合わせをする時には必ず「犬前ね」だった。急いで駐車場に車を停めようとするが、優香の車はセダンの高級車のクラウンで、横列駐車がなかなかできない。親戚が、新しい車を買うから、と譲り受けたものだった。駐車にはいつまで経っても慣れない。ようやく車を停めると、優香は車から飛び降り、ドアを閉めて走り出す。キーレスエントリーの車だが、間違えてオープンボタンを押し続けていることに気が付き、慌ててクローズボタンを押すが既に距離が届かない。

「もーーー!!!」

 またイライラしながら走って近づき、ボタンを連打する。優香は急いでいる時に限って何かヘマをする。そして必ず、聖也との約束の時間に遅れる。

 6時38分。息を切らせて「犬前」に急ぐ。木の立ち並ぶ隙間から「犬」の姿は見えてきたのに、どうやら聖也の姿はまだ見当たらない。

「まだ来てないのかな」

でーとで聖也が遅刻をしてくることは滅多にない。

『犬前着いたよ』

 メールを打つが、多分まだ運転中だろう。周りをウロウロしていると、先程の電話を思い出す。やっぱり時間変更の連絡だったのかも?そうに違いない。

「電話してみよっ」

 とにかく早く声が聞きたい。呼び出し音は鳴るが、聖也が出る事は無く留守番電話サービスに接続される。近くで何か物音がしたが気にしてる場合ではない。

「時間変更?早く来て」

 留守電にメッセージを残すと、

「何で繋がんないんだよ、ねー」

 犬に相槌を求めた。その次の瞬間だった。犬の尻尾の予期に何かが置いてある事に気が付いた。真っ白なリボンが付いて真っ赤な包装紙に包まれた箱のようなものだった。おそるおそる身を乗り出して覗き込んでみると、小さな小さな文字で、

「●ちゃんへ?」

 誰かの忘れ物だろうか?優香はその箱のようなものを思わず手に取っていた。

「●ちゃんへ

 いつもありがとう」

 細マッキーの細い方を使って書いたような文字だ。肝心な名前は字が潰れてしまって誰宛のものなのかはわからない。元の場所に戻そうと手を伸ばしかけながら、ふと裏を見た。優香の体は電気が走ったように震え上がる。

「君の聖也より」

 大きな文字でそう書いてある。聖也のサプライスなのだろうか。ふいに涙が溢れて、

「聖ちゃん」

 その場にしゃがみこみ、リボンを解く。真っ白に見えたリボンだったが、ところどころに赤いインクが付いている。包装紙も少し汚れている。優香はそんなところにフフフッと笑えてくるのだった。包装紙をきれいにはがすと、中からは真っ白な箱が出てくる。開けてみると、それは指輪だ。誕生石のルビーが入ったエンゲージリング。

 聖也は優香に対してたまにサプライズをする事があった。くさい言葉も照れもせずに言うのだ。それでも今日の事は今までの中で一番嬉しかった。また聖也に電話をするが、相変わらず電話には出ない。照れてでもいるのだろうか。またどこかで物音がしたようなきがするが気のせいだろう。

『ありがとう、大好き!』

 と、メールを入れる。



 優香は聖也との今までの事を思い出していた。




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