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第95話

新選組 廊下-


総司は信じられないと言う表情で目の前にいる人物を見た。


総司「…礼庵殿…?」


礼庵は総司の手にべったりとついている血を見て目を見開き、後ろから付いてきている隊士に、総司の部屋に床をひくように指示した。

総司の後ろで、ばたばたとあわただしい足音が遠ざかっていった。


総司を追って来ていた永倉が、心配そうに礼庵の顔を見た。

礼庵は「大丈夫です」というように頷いて見せた。


永倉「…後を…お願いします。」


永倉は礼庵に頭を下げると振り返った。一番隊の隊士達がぼんやりと、総司と礼庵を見つめて立っていた。


永倉「後は、礼庵先生にお任せしよう…さぁ、道場へ戻るぞ。」


永倉はそう言って、先に道場へ帰っていった。

礼庵は、中條を先頭に立っている隊士達に微笑んで見せた。


礼庵「沖田先生は大丈夫です。…さぁ、帰って。」


皆、うなだれたようにして立っていたが、やがて一人二人と道場へ戻っていった。

中條は最後まで残っていたが、山野にうながされ、礼庵に一礼すると、ゆっくりと道場へ帰っていった。


礼庵は総司のあごを片手でささえながら、そっと口元の血を拭いた。総司はただ、されるがままになっていた。

総司は、血で汚れた手を出すように言われ、素直に手を礼庵に差し出した。

礼庵は、やるせないような表情で総司の手を拭った。


礼庵「なぜ、稽古など…」


その呟くような声に、総司は答えた。


総司「…私はもう…一番隊組長は務まらない…」

礼庵「…!?」

総司「最後の稽古のつもりでした。もう…前のように剣をふるうことはないかもしれない。」


礼庵は黙って、総司を見つめている。


総司「…剣を取れなくなったら、私に何が残るのだろう…」


礼庵はしばらく黙り込んでいたが、すぐに表情を明るくして言った。


礼庵「また剣を取れる日が来ます。できるだけ休養を取って、できるだけ食べるようにすれば、きっと、前のように…。あせることはありません。ゆっくり休養すれば、元気になります。」


気休めでしかないことは総司にもわかっていた。しかし、必死にそう慰めてくれようとする礼庵に応えようと総司は微笑んで見せた。

礼庵はその総司の微笑みに、ゆっくりと頷いて見せた。

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