第92話
総司の部屋 夜-
総司は体を起こして、じっとふすまを見ていた。
報告を待っているのである。
総司(…藤堂さん…)
どうか生き延びて欲しい…総司はそう強く願っていた。
何の音沙汰もなく、時間だけが過ぎていった。
しかし、総司は体を横たえる気にもならず、時折咳き込みながら、誰かがくるのを待っている。
やがて、何か外が騒々しくなった。
総司(帰ってきた…!?)
総司は床から立ち上がり、部屋を出た。
何か怒号のような声が聞こえた。永倉の声である。
総司はそれを聞いて、すべてを悟った。
総司(…藤堂さん…助からなかったのか…)
総司は肩を落とし、黙って部屋へ戻った。
そして、そのまま床の上へ座った。
総司(…藤堂さん…)
総司の膝の上で、握り締めた拳に涙が落ちた。
……
総司の背中で、ふすまがゆっくりと開く音がした。
「総司…」
永倉の声だった。
総司は嗚咽が漏れるのを堪えられなくなった。
永倉は黙って、総司の後ろに座った。
永倉「…すまん、総司…」
永倉の怒りを堪えたような声がした。
総司は必死に嗚咽をこらえながら、首を振った。
永倉「…三浦のばかが…。」
永倉がそうひと言呟いた。
総司は、もう嗚咽を堪えることもしなかった。
その後ろで永倉は何も言わず座っている。
やがて、永倉がふと振り返った。
永倉「…中條君…入って来い。」
総司の嗚咽が止まった。
そして、永倉に振り返った。
総司「…中條君…?」
永倉「…彼はよくやってくれたよ。…ねぎらってやれ。」
永倉はそう言って立ち上がり、ふすまを開いた。
すると、その場にひれ伏している中條の姿が現れた。体中が血だらけになっている。
総司は中條に駆け寄った。そしてその血だらけの体を、何かを探すように両手で探った。
総司「中條君、怪我はっ!?…大丈夫だったのか!?」
中條は、ひれ伏したまま首を振った。
中條「僕…僕…藤堂先生を守れませんでした…。」
泣きながら言う中條に、総司は首を振った。
総司「いいんだ…よくやってくれた…。君に怪我がなくて…本当によかった…。」
総司は中條の背中に伏して泣いた。




