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第82話

近藤の部屋-


近藤は腕組みをして目をじっと閉じ、土方の言うのを聞いていた。


近藤「…総司は、私に気を遣うほど、悪くなっているのか。」

土方「…そう言うことだな。」


近藤は目を開いて、大きくため息をついた。


近藤「どうしよう…歳さん…。総司にこのまま巡察を続けさせていいだろうか…。」

土方「私もやめさせたいが…我々がやめろと言えば、総司はよけいに反発するような気がするんだ。」

近藤「…うむ…」

土方「…総司の判断に任せるしかないと思う…。…しかし…今の様子だと、なかなかやめようとはしないような気がする…。」

近藤「…また、私が悪役をするか。」

土方「…!?…何を…?」

近藤「総司に「これ以上隊に迷惑をかけるな」と言うんだよ。」

土方「…それは…!」


総司にも近藤にも酷過ぎる…と土方は思った。


土方「…それは…私がやる。」


土方が声を低くしていった。


近藤「歳さん…!」

土方「あいつを想い人と別れさせる時に、近藤さんは役目を果たした。…今度は私の番だ。」

近藤「…しかし…!」

土方「総司は私よりも、近藤さん…あんたのことを慕っている。そこまで近藤さんがやっちまったら…総司は本当に支えをなくしちまう。」

近藤「それをおまえさんが、支えてくれればいいじゃないか。」

土方「私ではだめだ。…あんたでなけりゃ。」

近藤「…歳…!」

土方「…私は、もともと隊の嫌われ者だ。…慣れてるよ。」


近藤は黙って、いつものように顔をいがませてそう笑う土方を見つめていた。


土方「総司のためなら…嫌われ役だってなんだってやるさ。…その気持ちは近藤さんもわかってくれるだろう?」


近藤は目を伏せてうなずいた。


近藤「…すまん…歳さん。」

土方「お互い様だ。…前は、近藤さんに嫌な思いをさせちまったからな。」


近藤は黙って首を振った。


土方「ただ…もう少し、時間をくれ。」

近藤「…?」

土方「…あいつを…もうしばらく一番隊組長として働かせてやりたいんだ。…あいつには、剣しか生きる術はない。…それをすぐには奪いたくないんだ。」

近藤「…わかってる…。歳さんに任せるよ。」


土方はうなずいた。近藤は腕組みをしたまま、開いた障子から見える空を見上げた。


近藤「…あの時も晴れていたなぁ。」

土方「…え?」

近藤「想い人と総司を別れさせることを決めた時も…。」


二人は苦笑して顔を見合わせた。そして、再び空を見上げた。


土方「…そうだな。…腹が立つほど、晴れてやがる。」


雲ひとつない、晴天であった。

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