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第8話

新選組屯所-


総司が屯所へ戻ると、玄関先で中條が外へ出ようとしていたのに出くわした。


中條「沖田先生!」

総司「おや、中條君…今からどこへ?」

中條「いえ、遅かったので今、副長に許可をいただいて、礼庵先生のところまでお迎えにあがろうと…」


総司は苦笑した。


総司「すまない…君の大事な人を家まで送ったんだ。」

中條「????」


中條は目をぱちくりさせた。


総司「さえちゃんだよ。」


総司が笑いながらそう言うと、中條は「えっ!?」と声をあげた。


中條「さえが…こんな時間に?」

総司「ん…お母さんの仕事の手伝いだったそうだ…。…大変だな…彼女の家も…」

中條「…そうですか…」

総司「またさえちゃんに会ったら、礼を言っておいて欲しい。咳込んでいる私の背をさすってくれたんだ。」

中條「!…先生、咳込んだんですか!?」


総司は、しまったという顔をした。


総司「まあね…。大したことはないんだけど…。…すぐに部屋へ戻って薬を飲むよ。…すまないが、水を持ってきてくれるかい?」


総司は逃げるようにして、中條の横を通り過ぎた。


中條「はいっ!…あ、でも、先生っ!」

総司「…?」


総司は立ち止まって、中條に振り返った。


中條「副長が…戻ってきたら部屋へ来るようにと…」

総司「…わかった…」


総司はため息をついて、そのまま土方の部屋へ向かった。



副長の部屋-


土方、総司をにらみつけるように見つめている。


土方「…本当に熱があるとしか言われなかったのか?」

総司「はい…。ちゃんと薬ももらいました。すぐに飲みたいので、今日は勘弁してくださいよ。」


総司はすぐにでも、この場から逃げ出したい気分だった。


土方「…わかった…食うもの食ったら薬を飲んで、すぐに寝ろよ。」

総司「…もう…まるで子ども扱いなんだから…」


ふくれる総司に、土方が苦笑した。そして突然真顔になって言った。


土方「…姉上も心配されているだろうな…」

総司「!…」

土方「…もちろん、おまえの病のことは知らんが…。姉上のためにも、早く治るよう努力するんだ。」

総司「……」


突然、姉のことがでたので、総司は動揺した。


土方「…江戸へ行くたびに姉上のところへ寄るんだが、おまえのことを聞かれると辛くなる。…お前に口止めされているから、病のことは言わないが…とても心配しておられるぞ。姉上の心の中では、おまえは京へ上がったときの年齢で止まっているんだそうだ。」


総司は小さく笑った。


総司「…姉上も心配性だから…。」

土方「どうだ総司。今度江戸へ行く時に、一緒に行かないか?」

総司「!…それはできませんよ…!」

土方「……」

総司「姉上の前で咳き込んだりしたらどうします。よけいに心配をかけにいくようなものです。…会いたいのは会いたいけれど…。」

土方「……」


2人はしばし黙り込んでいた。


土方「…すまんなぁ…総司…」

総司「何を土方さんが謝るのです(笑)」


総司は土方の急な言葉に笑いながら言った。


土方「…すまん…」


土方はそう謝ったまま、再び黙り込んでしまった。

総司は何も答えることができず、同じように黙り込んでいる。

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