第78話
総司の部屋-
総司は今日も、畳の上で体を横たえていた。
最近、長く座っていることすらできなくなってきている。
今までは医者に言われていたため、できるだけ体を横たえるようにしていたのだが、このところ自然と横になりたくなるのである。
咳も抑えることができなくなっている。
微熱は相変わらず続いているが、熱には慣れてしまっていた。
総司「…やばくなってきたなぁ…」
総司は見慣れた天井を見上げてつぶやいた。もう人前で平然とすることもできなくなっている。巡察もかなり辛くなってきた。
総司「これでは、皆に迷惑をかけてしまうな…。」
しかし、巡察にも出られなくなっては、自分の存在価値が失われてしまうような気がした。
総司「いけない…気力まで落としてはだめだと、礼庵殿も言っていた。」
総司はそう呟くと、体を起こした。そして、一つ大きく息を吐いた。
総司「…道場で一汗かいて来よう。」
総司は立ち上がり、一回伸びをしてから、部屋を出た。
……
道場-
誰もいない道場で、総司は独り竹刀を振っていた。
総司「十!…十一!…十二…十三…!」
一つ一つ数を数えながら、びゅんという音を確認しながら、竹刀を振る。
しかし、二十を超えただけで息切れがした。じっとりと、こめかみに汗がにじみ始める。
総司(…たった、これだけで…)
そう弱気になりかけたが、すぐに気を取り直し、竹刀に力を込めて振り続けた。
総司「…!…」
三十を越えた時、突然胸に苦しさを感じ、咳き込んだ。体が崩れ落ち、その場にしゃがみこむ。
総司(…やはり、もうだめか…!)
咳き込みながら、総司はそう思った。




