第76話
ここからは「一番隊隊士「中條英次郎」」の後半と同じシーンが入りますが、微妙に違うところや、ここだけにしかないシーンも入りますので、これからも読んでいただけると、嬉しいです(^^)
新選組屯所 総司の部屋-
総司はふと眼をさました。
寝入っていたらしい。いつの間にか窓が閉められており、体には羽織が掛けられていた。
文机の傍に置いていた汚れ物もなくなっている。
総司(中條君が来たのだな。)
人が入ってきたことに気づかないほど疲れているとは、よほど体が弱っているらしい。
頭は少しすっきりしたが、まだ体は重かった。
総司はゆっくりと体を起こした。
その時、ふすまの外から、中條の声がした。総司は返事をし、入るように言った。
中條「失礼いたします。」
中條は食事を持ってきたのだった。
総司「いつもありがとう。…さっきも来てくれたのですね。寝入っていて気づきませんでした。」
中條「大丈夫ですか?…とても疲れているご様子でしたが。」
総司「ん…君の手料理を食べたら元気になるでしょう。きっと。」
総司はそう言って笑った。中條は少し照れくさそうにした。
中條「礼庵先生のところで、煮物を教わりました。…これまでのよりもお口にあうと思うのですが。」
総司はいつも煮物を残していた。中條はそれを自分の味付けが悪いと思っているらしい。
総司「気を遣わせて申し訳ない。…いただきます。」
中條は頭を下げて、出て行こうとした。総司はそれを止めた。
総司「中條君、食事は?…もう終わったのですか?」
中條「いえ…。これから、ですが…」
総司「よかったら、私と一緒に食べてもらえませんか。独りだとあまり食が進まないんです。」
中條「!?…先生と…ですか…!」
中條が驚いた様子に、総司はあわてて言った。
総司「ああ、いや。…やはり、よしておきましょう。…皆と食べた方が…」
「楽しいでしょうね…」と続けかけたのを、中條が「いえ!」と遮った。
中條「僕、すぐに自分の分を持ってきます!」
中條はそう言って嬉しそうに立ち上がり、あわただしく出て行った。
総司はほっとしたように、微笑んだ。




