第70話
明日香との約束の日-
中條は、約束の場所で明日香を待っていた。気が早って、早めに着いてしまったのである。
…だが、何か悪い予感のようなものを感じていた。
中條(…何だろう?…何かもやもやとする…)
そう思いながら、ずっと川辺の傍に立ち、ただ明日香を待っていた。
中條(…もしかして…明日香さん…来ないとか…?)
そう思い、慌てて頭を振った。
そして、懐から明日香に渡す小さな「木箱」を取り出した。
中條(…いつ渡したらいいのかな…?…いきなりじゃ、驚くかな…。)
中條がそう悩み始めた時、一人の少年がこちらに向かって、走ってくるのが見えた。
中條(?)
中條は、あきらかに自分に向かって来ている少年が傍まで来るのを待った。少年は息を切らしながら中條の前で止まり、丁寧に頭を下げると、懐から白い物を取り出した。
少年「中條英次郎様ですね?」
中條「…はい…?」
少年「これを、明日香お嬢様がお渡しするようにと。」
中條「!!」
中條は、差し出された物を思わず受け取った。
少年「確かにお届けいたしました。失礼いたします!」
少年はそう言って再び頭を下げると、踵を返して走り去ってしまった。
中條「……」
中條は、ぼんやりと見送ってから、受け取った白い物を見た。…手紙のようである。
中條は、その手紙を開いて読み始めた。
…やがて、中條の目が悲しげに伏せられた。




