第65話
礼庵の診療所-
礼庵は、寝ずの番で中條の横にいる。
中條が、うめき声を上げた。
礼庵「!…中條さん!」
礼庵は、中條の手を取った。
中條は顔をしかめて、その手を強く握リ返してきた。
礼庵「痛みますか?」
中條が首を振った。それを見た礼庵は苦笑した。
礼庵「強がりですね。」
中條は堪えながらも、うめき声をあげている。
……
翌朝-
中條が目を覚ますと、礼庵が優しい目で中條を見下ろしていた。
中條「…先生…」
礼庵「やっと目をあけましたね。」
中條「…僕、生きてるんですか?」
礼庵は苦笑しながら、うなずいた。
礼庵「ええ…」
中條「!?…合田さんは!?」
中條は起きあがろうとしたが、体中に痛みが走り、顔をいがめた。
礼庵「いけない!」
礼庵は中條の体を支え、そっと寝かせた。
礼庵「合田はかすり傷ですみましたよ。あなたに感謝すると言って、奉行所へ連れて行かれました。」
中條「僕に感謝?」
礼庵「ええ。あなたの「家族はどうするんだ」という言葉に目が覚めたと、言っていたそうです。」
中條「…そうですか…」
中條の表情は暗い。
礼庵「中條さん?」
中條「これから、合田さんのご家族はどうするんだろう?」
礼庵は、中條の優しさにふと微笑んだ。
…中條は、この三日後に礼庵の診療所を出た。




