第63話
土蔵-
中條は、火のくすぶっている土蔵へ飛び込んだ。
中では、合田が座り込んでいた。火はさほど広がっていないが、煙が充満している。
合田「!?…君は…この前の!?」
中條「何をしているのです!?」
中條は煙に咳き込みながら、合田の腕を取って外へ引き出そうとした。
合田「私はここで死ぬ!」
中條「!?」
その時、山野が土蔵の中へ飛び込んでくる。
山野「中條さん!」
中條「!?山野さん!!」
中條は、入ってきた山野をあわてて外へ押し出し、戸を閉じた。
山野「!?中條さん!」
山野は、外から必死に戸を叩いた。
中條の声「ここから、離れてください!いつ爆発するかわかりません!誰も近づけないで下さい!」
山野「中條さん…」
その時、総司が駆け寄って来た。
総司「山野君!」
山野「!?沖田先生!?」
山野は土蔵から離れ、あわてて総司の体を押さえた。
山野「爆発するのも時間の問題です!離れて下さい!」
総司「中條君は!?」
山野「中です!合田を説得するつもりです。」
総司「!?」
……
火が怪しく土蔵の中を照らしている。合田と中條は睨み合うようにして、立ちつくしていた。
合田「…お上に捕まるくらいなら、死んだほうがましだ。」
中條「合田さん…」
合田「あんた、早くいきなさい。私のために、命を無駄にするな。」
小さな爆発音がする。中條は、はっとしてそちらを見るが、合田はみじろぎもしない。
合田「早くお逃げなさい。」
中條「そんな自尊心の為に、家族をお捨てになるのですか?」
合田「!?」
中條「あなたはそれで満足かもしれませんが、あなたを失った勘吾君やご家族は、これからどうやって生きていくのでしょう?」
合田「……」
二人は、黙って睨み合った。
……
小さな爆発音が、土蔵の外からも聞こえる。
山野「先生!離れてください!」
山野は、総司を抱くようにして、土蔵から離そうとした。
総司「…しかし…」
その時、土蔵の戸が音を立てて開き、中條が合田をかばうようにして姿を現した。
総司と山野の顔に、安堵の表情が映った。
総司「中條君!」
その時、土蔵がいきなり爆発し、中條と合田の姿が一瞬にして消えた。




