第60話
川辺-
中條は、川辺を歩いていた。
中條「最近、誰も剣の自主稽古の相手してくれないんだもんなぁ。今日は山野さんにも断られちゃったし…。薪も割ったし、字の稽古も済んだし…。」
その時、川にまりが流れて来たのが見えた。
中條「!?」
中條は思わず下駄を脱ぎ、袴が濡れるのもかまわず川に入って、まりを拾い上げた。
そして、じっとまりを見つめた。
中條「…なつかしいなぁ。茜(妹)とよく遊んだっけ…」
「兄ちゃん!それ返して!」
突然、男の子の声がした。
中條は、はっとしてそちらを向いた。
中條「え?」
男の子「それ…姉ちゃんのや…。僕内緒で遊んでて、流れてしもたんや。」
中條「…ああ…」
中條は川から出て、手ぬぐいでまりを拭くと、子供に手渡した。
男の子「…おおきに…あのまま、流れてしもたら、怒られるところやった…」
中條は、微笑んだ。
中條(勇三郎が今、同じくらいかなぁ…)
男の子が少し困った顔をした。
男の子「…兄ちゃん、ここどこ?」
中條「え?」
男の子「…これ追いかけてたら、家わからんようになってしもた。」
中條「ええっ!?それは…困ったなぁ…」
男の子は、半ベソをかいている。




