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第58話

礼庵の診療所-


礼庵は、少し苦笑しながら言った。


礼庵「…本当はね。東さんに美輝さんの遊郭を紹介してから…後悔したんですよ。」

総司「…え?」

礼庵「…彼女達の仕事を増やしてしまったなぁって…。」

総司「??????」

礼庵「美輝さんは、喜んでくれましたけどね…。『今日はお客が少なくて、店の主人の機嫌が悪かったから助かった』って…」


総司は、礼庵が何を言いたいのかわからない。


礼庵「…遊女の仕事が性に合っている人なんているのでしょうか…。」


礼庵が、目を伏せていった。総司は思わず「え?」と言った。


礼庵「毎晩、好きでもない男に抱かれ…それもひと晩に一人ではすまないでしょう。そんなことを毎日続けているんです…体だってぼろぼろになってしまう。…そんなことが性に合う人なんて…いるのでしょうか。」


総司は、その礼庵の言葉に息を呑んだ。男性では計り知れない「女心」ではないかと感じたからである。

礼庵は、はっとして総司を見た。


礼庵「…これは、失礼を。私は何を言っているのやら…」


礼庵はそう苦笑したが、総司は真面目に答えた。


総司「…私は礼庵殿のおっしゃることがわかります。」

礼庵「……」


礼庵は、何かうれしそうな顔をした。

総司はその顔を見て「やはり、この人は女性だ。」と確信した。


……


総司が、礼庵の診療所から屯所へ向かって歩いていると、人ごみの中で急に後ろから声をかけられた。

驚いて振り返ると、女性が微笑んで頭を下げている。


総司「え…っと…?」


見たことはある。…が、誰かはなかなか思い出せなかった。


女性は「ここは人が多いさかい」と笑って、路地に入った。総司もつい、ついて入ってしまった。


「沖田はん、殺生やわ。うちを忘れてしもたん?」


そうすねる女性に、突然総司は思い出した。


総司「ああ!…失礼、美輝殿でしたか!」


さっきまで、礼庵と話をしていた美輝だった。普段着だと全く雰囲気が変わるので、すぐには思い出せなかったのである。


美輝「ごめんやあらしまへん。ひどいお人やわ。」


美輝はすねた風を見せて笑った。


総司「実は、さっきまで礼庵殿とあなたのお話をしていたのですよ。」

美輝「え…!?」


美輝の頬が、赤くなった。


美輝「礼庵先生とうちの話どすか?…いやぁ、うれしいわぁ!」


美輝はそう言って、総司の肩をばしばしと叩いた。


美輝「いったいどんな話してはったんどす?…悪口やったらいやどすえ。」

総司「悪口など言うものですか。…あなたの身請けの話です。」


総司がそう言うと、美輝は目を丸くした。


美輝「…身請け?…何の話どす?」

総司「礼庵殿があなたを身請けしたいと…」

美輝「!!…」


美輝の目がみるみるうちに丸くなった。

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