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第53話

三条橋下-


三条橋下は、地獄絵図のようになっていた。

斬られた浪人たちがあちこちで血を吹いている。川に向かって顔を突っ込むようにして吐いているのは、最近入隊してきた隊士だった。

人を斬ったの初めてだったらしい。総司は駆け寄って、その隊士の背をさすってやった。


総司「…大丈夫かい?」

隊士「…も、申し訳ありません。情けなく思います。」

総司「…いや…初めて人を斬ったときは誰でもそうなるんです。…そうならない方がおかしいのですよ。」

隊士「…ありがとうございます。」

総司「さぁ、帰りましょう。」


新人隊士は恐縮しながらうなずいて立ち上がった。


総司は、後始末を頼みに番所へ伍長を走らせ、怪我人を調べた。

深手を負っているものはいないことがわかり、総司はほっとして、皆に帰るように指示した。

そして、自分は番所から用人が来るのを待つためにその場に残った。いつもなら新人隊士に任せるのだが、さっきの姿を見てしまっただけに、それができなかった。


総司は堤を見上げ、女の子が、摘んだ花を握り締めていたのを思い出していた。


総司(誰かにあげるつもりだったのかな…。)


総司はふと川辺に視線を戻した。小花が川辺で揺れている。…しかし、いくつかは血で汚れていた。


総司(…もう…二度と、ここへは花を摘みに来ないのだろうな…。すまないことをした…。)


くしゃくしゃになった花を握り締めている女の子の怯えた目を思い出した。



しばらくして、番所から死体処理の用人たちが現れた。


「あーあ…また派手にやりはりましたなぁ…」


そんな声が総司の耳に届いた。


総司「…いつもすまない…よろしく頼みます。」


総司はそう言って、堤へと上がった。


「…よくもまぁ、これだけばっさばっさとやれるもんや。」


総司に聞こえないと思ったのか、そんな風に囁きあっているのが聞こえた。


総司(好きでやっているわけじゃない…)


心の中で言い返す。…何故か口にはできなかった。言ったところで、彼らにはわかってもらえないだろう…。総司はそうあきらめていた。

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