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第5話

総司の部屋-


総司は口元から離した懐紙を凝視していた。

血を吐いたのである。

量は少なかったが、このところ落ち着いていただけに、衝撃を受けていた。

懐紙に少しずつ血がにじみ広がっていくのを見てぼんやり座っていると、外から声がした。


「沖田先生…失礼します。」


中條の声だった。

総司は、はっとして懐紙を丸めて袂へ隠し、平静を装って返事をした。


総司「お入りなさい。」

中條「いえ…副長がお呼びです。部屋まで来て欲しいと…。」

総司「そうですか。すぐに参ります。」

中條「はっ」


中條が去っていく足音を耳で追いながら、総司は立ち上がった。

そして新しい懐紙で口元を拭い、血がついていないのを確かめ、部屋を出た。


……


副長の部屋-


土方は、部屋に入ってきた総司の顔を見て、眉をひそめた。


土方「…顔色が悪いな…大丈夫か?」


総司は内心ぎくりとしたが、それを悟られないように笑いながら言った。


総司「いやですよ…土方さん。私の顔を見ると、そればかりなんだから。」

土方「そうかな…」


土方は頭を掻いた。


総司「それより、なんの御用です?」

土方「ああ…また会津さんとの会合があるんだが…」


総司はとたんに不機嫌な顔になった。


総司「また供をしろとおっしゃるのですか?」

土方「そんな顔をするな。」


土方は笑った。


土方「心配するな。今回は近藤さんと私で行くよ。…お前には留守を頼みたいんだ。」


総司はほっとした表情をした。


土方「会合は明日の夜だ。出動などの権限をお前に与える。何かあったら、頼むぞ。」

総司「はい。」


しかし、これも責任重大だな…と総司は思った。


土方「手を焼くようだったら、いつもの天見屋でやってるから連絡してくれ。」

総司「ああ、天見屋ですか。」


あの説教女将の店である。総司はふと、女将の声を聞きたいなと思った。


土方「?どうした?天見屋で何かあったか?」

総司「いえ何も。わかりました。安心して、ご接待ください。」


苦笑する土方を尻目に、総司は立ち上がり部屋を出ようとした。


土方「…総司…」

総司「?はい?」

土方「やはり顔色が悪い。あの女医者にでも診てもらえ。」

総司「わかりましたよ。散歩がてら行ってきます。」

土方「ん」


土方は総司が障子を閉める瞬間まで、鋭い目で総司を見つめていた。

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