第45話
先斗町から、屯所への戻り道-
総司と中條は黙って、歩いていた。
二人とも何かすっきりしない気持ちだった。
中條は、本気で跡取りを斬るつもりだったのだが、今になって思えば、あの跡取りを斬ったところで何もならない。
またそんなことをすれば、よくて斬首、悪くて密殺されるところだったろう。どういう理由にせよ、無抵抗の一般人を斬ったことになる。
総司はそれを止めてくれたのだった。
総司「さて…秋吉はどう出るでしょうね。」
総司が腕組みをしながら、前を歩きながら言った。
斬らなかったにせよ、助勤である総司が跡取りの顔に金包みを投げつけたことが公に知れれば、隊としては総司を罰さずにはいられないだろう。
中條「僕がすべて責任を取ります!僕1人でしたことにすれば、隊にも迷惑はかからないはずです!」
総司「それを私が承諾するとでも思ってるのですか?」
総司が腕組をしたまま、中條に振り返りにこりと笑って見せた。
中條は下を向いた。
中條「…いえ…」
総司「私が責任を取ります。その方が自然でしょう。」
中條は総司の前に進み出て、行く手をふさいだ。
中條「それを僕が承諾すると思っているのですか!?」
総司は一瞬目を見開いてから、笑った。
総司「まぁ…ことが起こってから考えましょう。」
そう言って、中條を避け歩き出した。中條は表情を固くしたまま、総司に続いた。
総司「ねぇ…中條君」
中條「…はい…」
総司「私たちのこともそうですが…これから秋吉はどうなると思う?」
中條は憮然として答えた。
中條「そりゃぁ…何事もなかったように、商売を続けていくでしょう。…今までだって、きっとそうしてきたのでしょうから。」
総司「さぁ…それはどうでしょうね…」
中條「…え?」
総司「…今回ばかりは相手が悪かったようですよ。」
総司はそう言って、中條ににっこりと微笑んだ。
中條は訳がわからず、ただ「はぁ」と答えた。




