表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/101

第15話

町外れの集落-


中條は久しぶりにさえに会いに、集落にやってきた。

…が、いつもなら、子供たちが井戸の周りで洗濯をしているのに、誰もいない。


中條「?…おかしいな…」


中條はそう思って、ふとさえの家の方へ歩き出した。すると、さえの家の前あたりで、人だかりがしている。


中條「!?」


中條はあわてて人だかりの後ろに立って中を見た。すると、さえが男に手をひっぱられ大声で泣いているのが見え、その男を周りの男たちが必死に抑えているという感じだった。

中條は戦慄のようなものを感じて、思わず人を押しのけるようにして、中へ入っていった。


中條「待て!さえに何をする!!」


中條は思わずそう叫んでいた。その声に皆が中條に注目をした。そしてざわめきが大きくなった。


「新選組のだんなはんや!」


そんな声が飛び交った。

さえの手をひっぱっていた男は、何かぎくりとした表情をしたが、中條を見て憮然とした表情で「誰だ」と言った。


中條「さえの知り合いです…。この子をどうするつもりです?」


中條は必死に昂ぶる気持ちを抑えながら、男を見下ろした。

男は自分よりもはるかに大きい中條を見上げて、少し怯えた表情をした。


男「…親に金を貸していたんだ…でも、返してもらえないから娘を…」


中條の目が吊り上った。


中條「そんなことはさせない!…だいたいそんな約束でもしていたのか!?」


中條は思わず怒鳴っていた。男は驚いて、借用書のようなものを震える手で中條に見せた。


男「…し、したとも…ここへ書いてある。」


中條はその借用書をひったくるようにして取りあげた。字は大分読めるようになっている。

やがて中條の目が驚愕したように見開かれた。…確かに書いてあったのである。


さえは泣きながら中條の足にしがみついていた。そして、肝心の母親は、泣き叫ぶ弟たちを抱きかかえ、家の中から震えながらこちらを見ていた。


中條は借用書を見つめたまま、その場に立ちすくんでいる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ