第14話
総司の部屋-
総司は障子を開いて、月を見上げていた。
綾のことを思い出している。
総司「…許婚殿は幸せ者だな…。」
そう呟いた。
そして可憐も斬り合いがあったと聞くと、いつも文をくれていたことを思い出した。
総司「…あの人も、別れる前に私が死んでしまっていたら…綾殿のようになってしまっていただろうか…」
それは…悲しすぎるな…。と総司は思った。
総司「やはり…先に離れてよかったんだな…」
今、どうしているだろう…と、総司は月を見ながら思った。
可憐に、近藤が縁談をすすめていることを、土方から伝え聞いている。
縁談は、うまくいっただろうか…。相手はいい人だろうか。幸せになるだろうか…。
『体は離れていても…心はいつも寄り添っていることを忘れないで欲しい…』
可憐に、そう言ったことを思い出した。
総司(…あれは言ってはならなかった…。すぐに私を忘れるようにと言えばよかったのかもしれない。)
可憐に忘れられても、自分が忘れなければいい…。それでよかったのだ。
だが、別れるときは、可憐の将来のことまで考えていなかった。
ただ、自分の辛い思いを「忘れないで…」という言葉で癒したかっただけだった。
総司「全く、自分勝手な男だな…。」
総司は、そう呟いて苦笑した。
そして、机に伏せた。
自分の戒めの思いとは裏腹に、可憐に会いたくて仕方がなかった。
顔を見るだけでいい。通り過ぎるだけでもいい。
…元気な顔が見られたら…それだけでいい。
総司「可憐殿…」
総司の涙が机を濡らした。
そして…いつの間にか、そのまま眠りについていた。




