第1話
四条河原-夜-
一番隊は、押し込みの集団を河原に追い詰めた。
襲撃されれば、近くの河原へ追い込むことになっていた。関係ない人間を巻き込まないようにとの配慮からである。
斬りあいののち、押し込みの頭だけが傷を負いながらも、気丈に刀を構えて一番隊士達を睨みまわしていた。その鬼のような形相に隊士達も気後れがするのか、誰も斬りかかっていかない。
やがて、総司が進み出た。
総司「逆らわなければ、命は助けて差し上げます。…刀を納めなさい。」
頭はぎっと総司をにらんだ。
頭「沖田総司…だな…」
総司「…そうです」
頭「どうせ死ぬなら、おぬしとやりあってからに死にたい…。それを叶えてくれるか?」
総司「…お相手しましょう…」
二人は腰をかがめた。思わず隊士達が駆け寄ってくるのを、総司がそれを制すように空いた手を上げる。
総司「…誰も手出しするな。」
総司は平青眼に構えたまま、頭の動きを伺っている。
やがて、頭が上段から総司に斬りかかった。そのまま胴を払えば斬れるのに、総司はそうせず身をかわした。
頭「…うぬ…!」
頭は再び斬りかかってくる。総司はその刀を受け止める。
頭「何故斬らぬ!?」
総司「…どうして、そんなに死に急ぐのです…?」
頭「おぬしも男ならわかぬか…生き恥をさらしたくないだけだ。」
総司「…!…」
総司、結んでいた刀をはじき上げる。
頭、気合の声とともに斬りかかってくる。総司、そのまま胴を払った。
頭の体から血しぶきがあがり、声もなく倒れていく。
総司は痙攣している頭を見ながら血ぶるいすると、刀を納めた。
総司(…生き恥か…)
総司は息絶えた頭の側にかがみ、見開いたままの目を手のひらで閉じてやった。
そして、しばらくその場から動かなかった。




