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宮廷書記官の復讐記録  作者: 高山直
オブレシア国記
1/12

【某日の陛下のご様子】

そこはかとなく漂う恋愛中編小説、予定。


 さて、今日もオヴレシア国は腐りきっている。


 無駄に豪華絢爛な、華美も度を越えて品がない装飾の玉座に、同じく派手で品がない衣に身を包む、地味で品のないオヴレシア国第27代国王マグノス=セスティアロレス=オヴレシアは、怒り心頭のご様子で口汚く私を罵った。


「失敗しただと! ええい何とかせぬか! それがお前の仕事だろう。……謝罪? 余に、頭を下げよ、と。――……ッ愚弄する気か! 分を弁えろ下郎ッ!」


 唾を飛ばし、怒りで紅潮した頬をピクピクと動かしながら叫ぶ様は、為政者としての余裕などなく、ただ癇癪を起こして周囲に当たり散らす子供と同じ。王の唯一の美点である美声も、あのように金切り声で叫ばれては何の意味も成さない。キンキン煩い頭痛のタネめ。そのまま憤死すればいい。


「分かりました。では責任を取って辞職を、」

「それはならん! お前がどうにかするんだ! いいか! 我が国があのような蛮国に侵されるなどあってはならん。お前の命を賭して、余を守れ!」


 信じられますか。これが一国の王の発言です。歴史あるオヴレシアの最後の王は、後の世では愚王としてその名を広く知られそうですね。既に他国からは“破滅王”や“墓穴王”など、残念な方向であだ名が付けられておりますからほぼ確実でしょう。“世界三大愚王”に、まだ存命中にもかかわらず認定されたのには笑いました。はっはっはっざまぁ。王の耳に入れば、周りの人間を手当たり次第処刑するのが目に見えているため全力で情報を秘匿しなければならないのが口惜しい。それがなければ嬉々として報告してやるのに。


 愚王。実に的を射た表現だ。


 ところで私は、宮廷の出来事や叙位勲章を記録する、一介の書記官である。お前の仕事も何も、私は記録者であって、実際に政治を動かすわけではないのだから、今回の失策を責められるのはお門違いもいいところだ。自国の臣の仕事内容も把握していないとは、呆れを通り越してもう何の感慨も沸かない。むしろ、絶対失敗するから止めましょうという私の諫言を一蹴したのは王である。どうして失策を講じた宰相や貴族、最終的に決断を下した王の記録を綴っていただけの私が責任を負わねばならないのか。理不尽過ぎる。


 王曰く、“蛮国”である大国カルフシアで、宮廷魔導師を務める兄弟子オズワルト様。今回のオヴレシアの杜撰(ずさん)な計画を打ち砕いたのはあなただと聞き及んでおります。あなたが昔と変わっておられないのなら、「オヴレシアやっべ阿呆過ぎ」と大爆笑で反撃に転じるでしょう。どうぞ思う存分滅して下さい。手加減は不要です。民に被害が及ばなければ、あの愚王を炙って消し炭にして一物ぶった切って下さって構いません。むしろお願いします。ふはは滅されろマグノス=セスティアロレス=オヴレシア。


 マジ滅んでしまえ。



【オヴレシア国記】

―マグノス歴8年外交譚

書記官 ラヴェンナ=ルシェド


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