アザとー式作文講座(怒涛のアクションシーン編)
今日はカメラワーク理論によって作り出される、かっこいいアクションシーンの書き方を伝授しちゃいましょう。
映画マト●クスで有名になった、いまやアクション映画でよく見かける超絶かっこいいカメラワークといえば、あれですよね、
――敵の胸の高さまでの跳躍と、今にも蹴りかかろうとする体の動き、そこでストップモーション。中心の人物を360度ぐるっとなめる……
ってヤツですよね。これは円形にカメラを設置し、同時のコマだけをそれぞれから取り出して編集することによって作られる……よくわかんない? 今まで縦方向に撮っていた映像をその一瞬だけ横方向に展開するテクニックです。
これを利用して竹取物語のあのワンシーンを絶対無敵な感じのアクションシーンに変換してみましょう。
文章がカメラだとしたら、書き手はむちゃくちゃ豪華な撮影設備を持っているようなものです。台数無制限、ハイスピードカメラも特殊映像カメラも、昔懐かしい8ミリだって選び放題。おまけに設置も現実では不可能な場所にまでもぐりこむことが出来るのです。
これは利用しないテは無いでしょ? 数千人いるエキストラさん全てにカメラを持たせて主人公に切り込む瞬間をスロー編集するとか、地面に埋め込んだカメラでその上に倒れこむ敵兵を映しこむとか、カメラ使いほーだいっ!
だけど今回は見本文なので黄金の竹と対峙した爺さんを丸く囲むように四台のカメラを用意しました。そして、ぅアクションっ!
「これはなんと怪しい竹だ」
爺さんはその竹の根元に向けて鉈を振り上げました。
はいストーップ! この瞬間、物語の中のワンシーンが4台のカメラに収められました。これを順番に文章に直して見ましょう。
まずは爺さんを正面で捉えていたカメラから。このとき、その画面の全てを書き出す必要はもちろんありません。
海老に曲がった腰を精一杯に伸ばす。刃は頭上へと振りかざされていた。
次は爺さんを横から捕らえていたカメラっ! こっちは光源のある方向だと仮定しましょう。
竹の間から差す光が鉈刃を濡らす。
そして後ろからのカメラ!
およそ歳に似合わぬ職人じみた体の捌きは着物の背中に深い皺を寄せて、その身のうちに未だ消えぬ狂気にも似た破壊の力を示していた。
そして横カメラっ! アザとーここに、映すもの全てを邪神に変える特殊なカメラを仕込んでおきました!
老いという隠れ蓑に包まれた本性がさらけ出される!
刃を得た腕は悪鬼のごとく荒ぶり、荒れ狂い、破滅の喜びを遅しと待ち構えている。大地を踏みしめる両の足は大河を渡るがごとく踏み開かれ、足元の小石はその勢いに撒きこまれて跳ね上がっている。
そうして正面のカメラに戻ってストップモーション解除!
さや、と風が竹の葉を揺らした刹那、爺さんの鉈はごうとその風道を断つように振り下ろされた。
よし。完成! つなげてみましょう。
海老に曲がった腰を精一杯に伸ばす。刃は頭上へと振りかざされていた。
竹の間から差す光が鉈刃を濡らす。
およそ歳に似合わぬ職人じみた体の捌きは着物の背中に深い皺を寄せて、その身のうちに未だ消えぬ狂気にも似た破壊の力を示していた。
老いという隠れ蓑に包まれた本性がさらけ出される!
刃を得た腕は悪鬼のごとく荒ぶり、荒れ狂い、破滅の喜びを遅しと待ち構えている。大地を踏みしめる両の足は大河を渡るがごとく踏み開かれ、足元の小石はその勢いに撒きこまれて跳ね上がっている。
さや、と風が竹の葉を揺らした刹那、爺さんの鉈はごうとその風道を断つように振り下ろされた。
どうです? ただ竹一本を切るだけなのに、この豪華さ!
もっと長くストップモーションを楽しみたいのなら、カメラを増やせばいいだけです。簡単でしょ?
皆さんもぜひ、ご自身の作品に生かしてみてはいかがですか?