力の乱舞
フォウ…彼はかつて、戦場の死神と言われていた。
その戦歴の一部を…
お見せしよう。
バサリ、と黒い外套が風にはためいた。
フワリ、と香ってくるのは血の香り。
フォウは僅かに愉快そうに笑うと、そのまま敵へと向かっていった。
フォウが近づいた事によって、敵達は色めきたった。
一人で…しかも悠々と歩いて来ているのだ。
一人が切りかかろうとした時、呪文を唱えていた事に気付いた。
フォウ「…全てを闇に鎖し賜え……<ミスティ・グランズ>」
その瞬間………その辺りは暗闇に包まれた。
暗い暗い舞台の中…暗殺人形は剣を構えた。
片方は水を滴らせ、時折地面に水たまりを創っている。
もう片方は電気を纏っていて、時折バチバチと発光する。
彼はいわゆる“双剣使い”なのだ。
…辺りの暗闇は…驚いた事に、電気の発光でも全く見えなかった。
だが、そんな事は暗殺人形にとってはどうでも良かった。
何故なら…彼は気配察知能力が格段に高かったからだ。
突然、一人の人間に何か液体がかかった。
驚いて臭いを嗅ぐと、全くの無臭。
水だった。
安心した様に脱出口を探そうとした瞬間……バチバチと音がした。
振り向こうとしたが…できなかった。
何故ならば…その人間は、巨大な雷の力で命を奪われたからだ。
どんどん、辺りの人間が消えていくのを感じていた。
今日は後、何人狩れる?
また消した。
水と電気はやはり相性がいい。
また消えた。
後何人?後何人?
OPは…身動きが取れなかった。
あちらこちらで同じ所属の仲間が悲鳴を上げて倒れていく。
そして風を感じた…と思った瞬間、切っ先がすぐ目の前にあった。
OP「うわ…!?」
思わず構えたが……
フォウ「対象外。」
一言だけ言って、消えた。
それと同時に、黒い空間も消え去った。
暗殺人形は嗤う。
人間の愚かさを。
暗殺人形は訝しむ。
正義同士の戦いを。
暗殺人形は――――――
問題が発生するとき……それは突然だ。
突然で突然で………
誰も予想など、できない。