弔いの炎
皆が静かに眠っている時間帯……深夜
その時、事件は起こっていた……
ここは…街の中心地にある、帝王宮と呼ばれる建設物。
そこには名の通り、帝王が住んでいる。
中では……住民達と同じ様に、眠っている帝王の姿。
その傍に―――音も無く、一つの影が降り立った。
…この国には、とある隠れ職業があった。
職業の名は“アサシン”。暗殺が主な仕事である。
つまりは暗殺業を生業とする者や…副業としてやっている者など、様々いるのだ。
大体のアサシンは、お抱えの暗殺者として働いている。
彼等の事は“アークォッテ”と呼んでいる。
アークォッテとは“忠実な影”という意味だ。
そんな彼等とは別に、フリーの暗殺者達も居る。
…彼等の厄介な所は、一つの任務を終えると自分の手元を離れる事だ。
国の者達は彼等の事を“クィーットック”と呼んでいる。
因みにクィーットックの意味は“気ままな陰”である。
降り立った影――彼はアークォッテの方だ――は帝王の近くへと静かに歩み寄る。
気配も消して…音も無くし…………大分ギリギリまで近付いた。
そして…手にした暗器を、帝王の首に掛けた。
…この暗器は不思議なモノで……傷は一切残らないのに、普通に人を死に至らしめる事が出来る。
首に掛けたそれを……そのまま、引いた。
その瞬間、帝王が眼を開けたが……既に手遅れだった。
宙に手を伸ばして………そのまま、息絶えた。
彼は仕事の完了が確認できると、そのまま夜の闇の中へと消え失せた。
次の日は……唐突に、帝王の葬式となった。
国民全員が、薄々と感じていた。
聖 戦 が 始 ま る 事 を 。
聖戦は、国民達に何を残すのか。
聖戦は、国民達の何を奪うのか。
それは……………




