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雪だるま

作者: 早倉慶太

 いつもより一層気温が低かったある日のことでした。空から雪が降りました。白い粉でほこりのような肌触りでしたが、確かに雪でした。

 人間も動物も、すべてのものが寝静まった真夜中に、誰にも気付かれることなく静かに雪が降りはじめました。

 朝になると雪はもうすっかりと積もっていました。


 「雪かきしなきゃいけないじゃない。面倒ねえ」

 「あーあ、車洗ったばっかりなのに」

 「これじゃあ電車は遅れているだろうなあ」


 大人たちは次々に雪に対して不満を漏らしていましたが、子供たちは正反対に大喜びでした。


 「おれが一番に足あとつけたんだぞ」

 「うおー雪だー! 雪合戦しようぜ」

 「お母さん、もう外に行って遊びにいっていい?」


 一人の小さな男の子が、温かい服装に身を包んで家から出てきました。外を見上げると、ねずみ色の空からはまだ雪が降っていました。

  男の子は庭に積もっていた雪で雪だるまを作りはじめました。さらさらの雪だったためかなかなか固まりにくかったのですが、男の子は丁寧にそれを丸く固めていきました。

 ようやく完成した雪だるまには、頭に葉っぱ、体には小さな枝がつけられ、顔に小石をつけてできた目がありましたが、口だけがありませんでした。雪だるまの口に合うようなものがどうしてもそこで見つけることができなかったのです。

 男の子は雪だるまの口に合うようなものを公園まで探しに行くことにしました。ちょうどいつもの光景とは違った雪景色を見たいという思いもありました。

 公園に着くと、小学生の子たちが楽しそうに雪合戦をしていました。


 「ぼくも今度小学生になるんだ」


 男の子は誰に言うでもなくそう呟きました。


 「楽しみだけどちょっと不安なんだ。友達たくさんできるといいな」


 それは雪だるまだけがしっかりと聞いていました。

 男の子は雪だるまをベンチにおいて、雪だるまの口に合うようなものを一生懸命探しました。これでもない、あれでもないと言いながら、男の子は雪だるまのために必死になって探しました。

 だんだんと雪の降る量が少なくなってきたころ、男の子は雪だるまの口に合うような素敵なものを見つけました。それは******でした。それを雪だるまの口にあてると、まるで雪だるまが笑っているように見えました。すると男の子は何かに気付いたようでした。


 「そっか。自分から色んな子に話しかければ友達たくさんできるよね」


 男の子は雪だるまに向かってそう言いました。そして男の子はばいばいと言って、雪だるまとお別れしました。

 次の日の朝になって、太陽が昨日の雪をすべて溶かしてしまいました。けれど、雪がとけた道はまるで宝石のように光り輝いていました。



おしまい


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