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雨が降ってきた

作者: WAIai
掲載日:2026/06/30

「わ。雨が降ってきた」


彼女が下駄箱を出、手のひらを上に向け雫を受ける。


俺も空を見上げ、黒い雲が白い雲を襲っているような様子に、げんなりする。


この時期、雨が降ると蒸し暑いんだよなと思いながら、カバンを探す。


「あれ? あれ? 傘がない」


確かに入れたはずなのに、何故と戸惑っていると、彼女がオレンジ色の傘を取リ出す。


「一緒に行こう?」


雨の音よりも響く彼女の美しい声。

俺は思わず「おう」と答えてしまった。


本当は俺が傘をさして、誘いたかったのにと悔しがる。


「俺が持つから。そのほうが入りやすいと思うし」


彼女から傘を譲り受けると、外へ歩き出す。


雨の独特の香り。

すっとした中に草木の香りがし、滝の飛沫を浴びているような清涼感。


雨は嫌いではないが、大量に降られるのは困る。


彼女を見れば、肩が濡れているようなので、傘をずらす。

自分は濡れてもいいが彼女だけは、守りたかった。


しかも下着が見えるなんてことは、絶対に避けたかった。


「もっとこっちに来い。俺は濡れても平気だけど、お前に風邪をひかれたら困る」

「ありがとう」


彼女は柔らかく微笑むと、俺に一歩、近づいてくる。

肩と肩がぶつかり、密着した形となる。


俺はドキドキが伝わらないように、息を細く吐き出す。

抱きしめたくなるだろう、馬鹿野郎、と1人で悶々としていると、彼女が見上げてくる。


「大丈夫? 冷たくない?」


優しい言葉に、俺は感動する。


「大丈夫だ。それよりも、お前は…濡れていないな。よしよし」


俺は満足そうにすると、彼女に聞く。


「どこかに寄っていくか?」

「そうね…。あなたと一緒なら、どこでも行くわ」

「え…」


すごい台詞に、俺はしばし戸惑う。

それを見て、彼女も口を押さえ、顔を赤くする。


「ごめん、今のは忘れて」

「忘れるものか。俺は嬉しい」


はっきり言うと、俺も顔を赤くする。


2人は雨の中、黙って歩く。

雨の音よりも、心臓の音がうるさかった。


「カラオケでも行く?」

「そうだな。雨宿りするか」

「おー!!」


彼女が腕を上げ、笑顔を作る。

その笑顔が曇らないようにしてやる、と俺は決意したのだった。

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