第拾伍話 スーパーフラっとUSA
前回までのあらすじ:
【異次元の世界に足を踏み入れた和真は、その奇妙な法則に困惑する。彼は左右に動けないのに、異次元の生物たちは自由に横へ移動していた。そんな異様な光景に言葉を失っていた彼の前で、突然地響きのような叫びが響き渡る。
広場では、ゴリマッチョの男がキノコ帽子のオッサンを圧倒する壮絶な格闘が繰り広げられていた。戦いの最中、ゴリマッチョは姫の誘拐を嘆き、その責任をキノコ帽子のオッサンに押し付ける。しかし、和真は機転を利かせて仲裁し、「争っている場合じゃない」と説得。結果、和真はオッサンを預かり、共に姫を助けに行くことを決意する。
こうして、二人は電動スクーターに乗り込み、未知の冒険へと旅立った。しかし、和真はまだ知らない。この先、さらに異次元の不可解な出来事が待ち受けていることを――】
大雨が容赦なく降り注ぎ、雷鳴が空を裂く。
その轟音は大地を揺るがし、どこまでも続く暗闇の中に不気味な古城がそびえていた。
漆黒の雲に包まれた空の下、その城はまるで生き物のように息づいているかのように。
「……ここが姫のいる城ってことかな?」
雨粒に濡れながら、和真はオッサンの運転する電動スクーター出ライドンの背にしがみついていた。
視界は悪く、息苦しいほどの湿気が漂う。
そんな中、目の前の古城は異様な威圧感を放っている。
城門がギギィ……と鈍い音を立てて開いた。
まるで侵入者を誘うかのように。
「……なんか嫌な予感しかしないんだけどぉぉぉ!」
オッサンが震える声を漏らしながら、恐る恐る城へ足を踏み入れたその瞬間――霧のような闇が二人を包み込んだ。
闇が迫った瞬間、視界が“砂嵐のようにザザッ”と乱れた。
そして、気が付くと和真の前からオッサンの姿が消えていた!
「ちょっと、嘘だよね!?
オッサン、お元気で」
あまりにも突然の出来事に和真は驚愕するも、
いなくなったのがオッサンでよかったと割とすんなり諦めてしまう。
しかし、薄気味悪い空間は彼をじっと静かに見つめていた。
床は巨大な鏡でできており、その先にも壁一面に並ぶ巨大な鏡。
見渡す限り、自分の姿が何重にも映し出されている。
だが――
「……僕が見ていないときにだけ、鏡の中の僕が違う動きをしてる気がする……」
鏡の中の“和真の影”が、一瞬だけ遅れて動いた。
背筋が凍る。和真はそっと視線をずらしながら、じっと鏡の中の自分を観察する。
そのとき、不意に静かな足音が響いた。
「和真……?」
和真が振り向く。すると――
鏡の中に、現実世界にいた頃に出会った少女・影織の姿があった。
影織の輪郭が“二重にぶれて”見えたが、瞬きをすると元に戻った。
彼女は何かを知っているような目をしていたが、何も言わずに手を差し出す。
「こっちへ来て……あなたの連れのおじさんを見つけたの」
影織の案内に従い、和真が恐る恐る歩を進めると――
気絶したオッサンが横たわっていた。
そして、彼のズボンの染みた部分が……
「……うわぁぁぁぁぁぁ!?!?」
「……うわぁぁぁぁぁぁ!?!?」
驚かされた者と、驚かす者。
二人のリアクションは見事に重なった。
和真は鼻を摘みながらイヤイヤとションベン臭いオッサンを担ぎ、影織の導きのまま古城を脱出する。
城の外へ出ると、天気はすっかり回復し、雲の隙間から光が差し込んでいた。
「影織ちゃん、ありがとう……」
和真は彼女にお礼を言おうと振り返ったが――
鏡の世界に縛られた影織の姿は、もうそこにはなかった。
ただ、鏡の表面に“ノイズのような揺らぎ”が残っていた。




