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第丗伍話 折り神の塔

ある日、和真は祖父の遺品を整理している最中、一冊の古びた折り紙の本を手にした。


表紙に記された題名は「式神の折り方」。その内容はどこか謎めいており、ページを捲るほどに不思議な引力で和真の心を惹きつけていく。彼は意を決し、その秘術を試してみることにした。


その日の部活を休み、自室で折り紙を広げた和真は、思わず仰天する。

「なんだこの折り紙、デカすぎないか……? 畳二畳分はあるぞ」

あまりの規格外なサイズに圧倒され、思わずのけぞってしまうほどだ。


「よし、やるしかない」

そう自分に言い聞かせると、指先だけでなく全身を使い、座る位置を変えながら丁寧に折り始めた。


一回、二回と折りたたむごとに、紙はどんどん分厚さを増していく。

しかし奇妙なことに、何度折っても全体の面積がまったく変わらないのだ。


最初はただの紙だったものが、和真の手の中で次第に得体の知れない熱を帯びていく。

「これ、本当に……何かが起きるのか?」

半信半疑のまま、彼は一心不乱に折り続けた。


やがて折り紙は驚くべき厚みへと成長し、ついには部屋の天井を無音で突き破った。

和真は驚愕しつつも、もはや引き返すことはできず、その先を見届ける覚悟を決める。

そこで、ふとある違和感の正体に気づいた。


「そうか……折り紙が大きかったんじゃない。僕の体の方が、折るたびに小さくなっていたんだ」


不可解な現象はそれだけではない。

外では風が吹き荒れているはずなのに、この巨大な紙の塊は微塵も揺るがない。まるで空間そのものに釘打たれたかのような、絶対的な存在感がそこにはあった。


彼はさらに、深く、高く、折り進めていく。

気づけば眼下には、ジオラマのような街並みが広がっていた。あの巨大な東京タワーですら、今は指先ほどのサイズに過ぎない。


「すごい……まさか、こんな高さまで来るなんて」

胸の鼓動が早まる。

さらに手を動かし続けると、すぐ側を旅客機が静かに通り過ぎていった。

「飛行機よりも高い場所まで……。嘘だろ?」

未知の領域へ踏み込む興奮が、全身を駆け巡る。


次に見えたのは、大気圏を突き抜ける一瞬の閃光だった。

突き抜けるような青い空が深い闇へと塗り替えられ、目の前には星々が瞬く宇宙が広がる。

「これは……夢を見ているのか?」

和真は自分の目を疑った。

驚くべきことに、宇宙空間に出ても呼吸に支障はない。

「なんで息ができるんだ……?」

疑問は尽きないが、不思議と手は止まらなかった。宇宙から眺める地球の圧倒的な美しさに、和真は思わず手を休め、言葉を失う。


やがて、折り重なった紙の頂上に現れたのは、国際宇宙ステーションだった。

冷たい外壁に手をかけ、銀河の渦を見つめながら、和真は感嘆の声を上げる。

「すごい……。折り紙だけで、本当にここまで来ちゃったよ!」


その時だ。不意に耳元で、懐かしい祖父の声が響いた。

『よくここまで来たな、和真。これは私からお前への、ちょっとした挑戦だったんだよ』


驚いて周囲を見渡すが、人影などどこにもない。ただ、祖父の温かな声だけが、心の奥底に優しく響き渡っていた。


「ありがとう、じいちゃん。僕、最後までやり遂げたよ……」


宇宙ステーションのハッチをくぐると、そこには祖父の研究成果が記された一冊のノートが置かれていた。

和真はページをめくりながら、自分がこの旅を通じて確かに成長したことを実感する。

祖父の遺志を継ぎ、彼はまだ見ぬ宇宙の深淵へと、新たな冒険の胸を高鳴らせるのだった。


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