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スーパーフラット・ブレイク

陽葵の光がふわりと揺れた瞬間、

海斗の瞳が大きく揺れた。


「……やめてよ……

陽葵さん……

僕じゃなくて……

カズマと……

仲良くなんてしないでよ……!」


声が震え、

その震えが次第に怒りへと変わっていく。


和真は、

胸の奥がざわつくのを感じた。


「……海斗……

陽葵は……

君を恨んでない。

でも……

君の中の“歪み”が……

陽葵を縛ってるんだ。

陽葵は……

もう行きたいんだよ。

“本当の姿”で……」


海斗の肩が震えた。


「……やめろよ……

やめろよ……

カズマ……

お前が……

陽葵さんを……

奪ったんだ……!」


その瞬間だった。


海斗の手が、

フードの内側へと滑り込んだ。


和真は、

嫌な予感に息を呑んだ。


「……海斗……?」


海斗は、

ゆっくりと手を引き抜いた。


その手には──

細く光る金属。


毅が叫んだ。


「和真、下がれ!!」


だが、海斗の動きは速かった。


「返せよ……

返せよ……

陽葵さんを……

返せよォッ!!」


海斗が飛びかかってきた。


和真は反射的に後ずさったが、

足がもつれ、体勢を崩した。


視界が揺れる。


海斗の腕が振り上がる。


金属の光が、

夜の闇を裂いた。


「──っ!」


衝撃。


胸の奥に、

熱いものが走った気がした。


息が詰まる。


世界が一瞬、白く弾けた。


和真は、

自分の体が後ろへ倒れ込むのを感じた。


胸元に触れた指先が、

じんわりと濡れていく。


それが何かを理解するのに、

数秒かかった。


ぽたり──


木の床に落ちる音がした。


生々しさはない。

ただ、

雨粒が落ちるような静かな音。


和真は、

震える声で呟いた。


「……あ……」


視界が揺れ、

足元に落ちる“赤い影”が滲んで見えた。


毅の微かな声が耳元で響いた。


「海斗ッ……やめろ……」


海斗は、

荒い呼吸をしながら震えていた。


「返してよ……

返してよ……

陽葵さんを……

僕の光を……

返してよ……!」


和真は、

胸の奥の熱さを感じながら、

かすれた声で言った。


「……陽葵は……

君の光じゃ……ない……

陽葵は……

陽葵だ……」


海斗の瞳が揺れた。


その揺れは、

怒りでも憎しみでもなく──

崩れ落ちる寸前の、迷子のような震え。


そのとき。


展望台の奥で、

淡い光がふわりと揺れた。


陽葵の魂だ。


和真は、

霞む視界の中でその光を見つめた。


「……陽葵……」


和真の意識が、

ゆっくりと沈んでいく。


そして──

ぽたり、と赤い滴が落ちる音を最後に、

和真の視界は暗く閉じた。


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