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スーパーフラット・トレース

海斗の家を出たあと、

和真と毅はしばらく無言で歩いていた。


冬の風が頬を刺す。

けれど、胸の奥の痛みのほうがずっと鋭かった。


毅が口を開いた。


「……和真。

さっきの陽葵……

“本当の姿を見て”って言ったんだよな」


和真は小さく頷いた。


「……うん。

あれは……

僕が見ていた“歪んだ陽葵”。

陽葵自身の魂が……

僕が創った偽の姿……

フラットランドの陽葵だ」


毅は息を呑んだ。


「じゃあ……

本当の陽葵は……

まだどこかに……?」


和真は、胸の奥を押さえた。


「……いる。

でも……

“歪み”の奥に隠れてる。

僕が……

ちゃんと向き合わなかったから……

陽葵は……

歪んだまま……

僕の前に現れたんだ」


毅は立ち止まり、

真剣な目で和真を見た。


「和真。

お前は悪くない。

陽葵は……

お前を守ろうとしてたんだろ」


和真は、

唇を噛んだ。


「……守られたくなんて……

なかったよ……

僕は……

陽葵を守りたかった……

本当は……

ずっと……」


そのとき──


ふ、と空気が揺れた。


和真の視界の端に、

また“何か”が立っている気配がした。


毅には見えていない。


和真だけが視える。


今度の陽葵は、

線画ではなかった。


輪郭はまだ揺れているけれど、

さっきよりも“人の形”に近い。


和真は息を呑んだ。


「……陽葵……?」


陽葵の影は、

かすかに首を振った。


『……ちがう……

まだ……ちがうの……』


声はかすれている。

でも、確かに“陽葵の声”だった。


和真は一歩近づいた。


「……陽葵……

僕は……

君の本当の姿に会いたい……

歪みじゃなくて……

君自身に……」


陽葵の影が、

震えるように揺れた。


『……かいと……

みつけて……

わたし……

そこに……』


和真の心臓が跳ねた。


「……海斗のところに……

陽葵が……?」


毅が驚いた顔で和真を見る。


「和真……

陽葵が……

海斗の居場所を示してるのか?」


和真は頷いた。


「……陽葵は……

海斗の“そば”にいる……

魂が……

まだ……

そこに縛られてる……」


陽葵の影が、

ふっと薄くなった。


『……ま……くん……

こわく……ないよ……

だいじょうぶ……

わたし……

まってる……』


そして、

影は消えた。


和真は、

胸の奥が締めつけられるのを感じた。


毅が肩を掴む。


「和真。

行こう。

陽葵が示した場所……

海斗の“次の居場所”を探すんだ」


和真は、

涙を拭いながら頷いた。


「……うん。

陽葵を……

解放するために……

僕は……

海斗と向き合う」


毅は静かに言った。


「お前は一人じゃない。

俺もいる」


和真は深く息を吸った。


逃避世界はもうない。

線画の陽葵も消えた。


残っているのは──

本当の陽葵の魂が残した“道しるべ”。


そしてその先に、

海斗がいる。


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