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スーパーフラット・リバース

世界が剥がれ落ちた。


紙のように薄い空が、ひらひらと舞い散り、

陽葵の墓の周囲に積もっていく。


和真は膝をついたまま、呼吸ができなかった。


「……なんで……」


自分の声が、自分のものではないように震えていた。


毅は、和真の肩を掴んだ。

その手は、逃避の世界では決して感じられなかった“重さ”を持っていた。


「和真……もうやめよう。

お前、ずっと……限界だったんだよ」


毅の声は怒りでも呆れでもなく、

ただただ、痛みに満ちていた。


和真は震える唇で言葉を探す。


「だって……陽葵が……

僕を……許してくれたんだ……

ちゃんと……笑って……」


毅は首を振った。


「違う。

あれは……お前が作った“陽葵”だ」


和真の心臓が、ひどく痛んだ。


「そんな……わけ……」


「あるんだよ」


毅は、墓石を指差した。


そこには、

陽葵の名前と命日が、確かに刻まれていた。


《陽葵 享年17》


風が吹き、線香の煙が揺れる。


毅は、喉の奥で言葉を噛みしめるように続けた。


「……あの日のこと、覚えてるだろ」


(陽葵からの着信に……

そうだ、僕は気づくのが遅れたんだ)


和真の呼吸が止まる。


「やめろ……」


「駆けつけた時には……もう……

どうにもならなかったんだよ」


和真は耳を塞いだ。


「やめてくれ……やめてくれよ……!」


「逃げるな!!」


毅の叫びが、空気を震わせた。


「お前の時間はずっと、あの日から止まってるんだよ!!

“もし気づいていれば”って……

“もし間に合っていれば”って……

その後悔に押し潰されて……

全部、自分のせいだって思い込んで……」


和真の視界が滲む。


胸の奥で、何かが崩れていく。


毅は、そっと和真の背中に手を置いた。


「陽葵は……お前のせいじゃない。

でも……

“妄想の世界”に閉じこもってたら……

お前自身が壊れるんだよ」


和真は、涙をこぼした。


その涙は、逃避の世界では決して流れなかった“重さ”を持っていた。


「……陽葵……」


風が吹き、剥がれ落ちた紙片が舞い上がる。


その中に──


剥がれ落ちた“紙の裏側”には、

どこかで見たはずの陽葵の笑顔が、

色のない線画のまま静止していた。


和真は息を呑む。

その笑顔は、温かいはずなのに、どこか冷たかった。


「……僕が……作った……?」


毅は静かに頷いた。


「そうだよ。

お前が“生み出した陽葵”だ。

本当の陽葵じゃない」


和真は、震える声で呟いた。


「……ごめん……陽葵……

僕……やっと……」


毅が静かに言う。


「……戻ってこい、和真。

現実に」


和真は、ゆっくりと目を閉じた。


逃避の世界の残骸が、風に溶けて消えていく。


そして──


真実の物語が、ここから始まる。


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