第廿参話 〔エピローグ 〕スーパーフラっとギャラクシー
目を覚ますと、和真は自室のテレビの前にいた。
薄暗い部屋の中、カーテンの隙間から朝の光が揺らめいている。
視線を落とすと、手の届く場所にあるゲーム機が目に入った。
その姿は変わらない。けれども――壊れていた。
もう、再び起動することはない。
何度電源を押しても、何度コードを繋ぎ直しても、
和真の手元で動き出すことはなかった。
「……これで、本当によかったのかな」
囁くような声が、静かな部屋に溶けて消える。
和真はそっとゲーム機を撫でた。
その表面には、長年触れてきた感触が染み付いている。
数え切れないほどの時間を、この画面の前で過ごした。
それは、陽葵との最後の時間を刻んだ場所でもある。
「……またね、陽葵ちゃん」
その言葉がこぼれ落ちると同時に、和真は静かに立ち上がった。
ぎしり、と床が軋む音がする。
窓の外には青空が広がり、柔らかな風が木々を揺らしていた。
和真はゆっくりと玄関へ向かい、靴を履くと外へと踏み出した。
向かった先は、陽葵の墓。
墓地へ続く道は、静かで落ち着いた雰囲気に包まれていた。
遠くで鳥のさえずりが響き、風が草を優しく撫でている。
和真は手に持った線香を焚きながら、墓前に座り込んだ。
「陽葵、久しぶり。
天国では元気にしてる?
僕さ……今、新しいゲームやってるんだよ」
ぽつりと語りかける。
その言葉は風に乗り、墓標の前へと届く。
「また、陽葵ちゃんに話しに来るから……。
次はどんなゲームか、楽しみに待っててね」
和真がそっと目を閉じると、懐かしい思い出が蘇る。
陽葵と過ごした日々――
笑い合った時間――
競い合った瞬間――。
それらが全て、今も確かに和真の中に息づいている。
それが、彼の新しい楽しみとなった――。
陽葵との再会の余韻を胸に、和真は立ち上がり、再び前へと進んでいく。
彼の足取りはゆっくりと、
しかし確かに未来へと向かって……。
fin
しかし次の瞬間──和真の頭の中に、まるでガラスがひび割れ、
パリン、と音を立てて砕け散るような強い衝撃が走った。
和真は振り返る。
墓地の空気が、急に冷たくなる。
背後から、重い足音が近づいてきた。
「……和真」
低く、押し殺した声。
振り向くと、そこには親友の 毅 が立っていた。
険しい表情。
握りしめた拳。
震える唇。
「……いい加減にしろよ」
毅は、今にも泣き出しそうな声で言った。
「いつまで逃げてんだよ……!
陽葵は……」
和真の胸が締めつけられる。
毅は叫んだ。
「現実を見ろ!!
目を覚ませ、和真!!」
その瞬間――
世界が“紙のようにめくれ”、色が裏返った。
和真の視界が大きく揺れる。
陽葵の墓も、青空も、風の音も――
すべてが、薄い紙のようにひらひらと剥がれ落ちていく。
剥がれ落ちた“紙の裏側”には、
どこかで見たはずの陽葵の笑顔が、
色のない線画のまま静止していた。
毅の叫びだけが、現実の重さを持って響いていた。
つづく
次回より真相編に入ります。




