第廿二話 〔最終話〕スーパーペーパーフラっと
前回のあらすじ:
【王国の玉座前で始まった謎の決闘。姫の掛け声と共に始まったのは、まさかの「ラジオ体操アルティメットリミックス」。
和真はウラ拍やオモテ拍のリズムに翻弄され、混乱の渦に巻き込まれる。
一方、余裕の青年は完璧な動きでリズムを制圧する。
しかし、カエルの謎のボーカルが入り乱れ、さらに状況はカオスにな展開に。
ミスを検知する審判・ボム師範の厳しい目が光る中、追い詰められた和真は突如覚醒。何かしらの謎の力により、完璧な跳躍とリズムの波動を掴み、カエルのテンポさえもシンクロ。
その瞬間、場の空気が一変し、観衆は息を呑んだ。
和真の動きに合わせて床が共鳴し、リズムの波が王国全体を揺るがす。
青年も動揺しながらも全力で応戦し、激しい応酬が続く。
最後の決め技が炸裂し、和真は完璧な着地を決める。
ボム師範の「勝者、和真!」の宣言とともに、王国中が歓声に包まれた。】
「僕ね……実はずっと、陽葵ちゃんに言いたかったことがあるんだ」
和真は、小さく震える声で言葉を紡いだ。
「僕は……あの時、君を傷つけた」
陽葵は、ゆっくりと目を伏せる。
「私も……和真君を傷つけた……」
いや違う――。
「僕は……僕は、君にちゃんと謝らなかった」
陽葵の瞳が潤む。
「私も……ずっと謝りたかったの……」
二人の心が、静かに重なる。
その瞬間、玉座の間の壁に刻まれた紋章が“紙のように揺らいだ”。
和真は涙で滲んだせいだと思い込んだ。
幼い日の記憶が、ゆっくりと巡り始める。
僕たちは、ずっと一緒だった。
夏の日、木陰で並んでアイスを食べたこと。
「ちょっと溶けてるよ」
陽葵が笑いながら言ってくれたこと。
春の日、桜の下でお互いに夢を語ったこと。
「僕たち、大人になったら、どんな風になるのかな?」
僕は、何も気にせず「楽しい人生を送りたい」と言った。
でも、陽葵は。
「私は……ずっと、和真君のそばにいたい」
あの日の言葉が、今になって胸に刺さる。
そして、最後の日――。
「そんなの、知らない!!」
陽葵は怒っていた。
「だったら勝手にすれば?」
僕も、彼女に冷たく言い返した。
あの日、僕は何も知らずに、何も考えずに言葉を投げた。
陽葵は、小さく眉をひそめていた。
でも――
それが、彼女と最期に交わした言葉だった。
記憶の中の陽葵の輪郭が、一瞬だけ“ノイズのようにざらついた”。
和真は涙で見間違えたと思った。
「ごめん……陽葵ちゃん……僕は……僕は、君に……」
言葉が詰まる。
そんな和真の緊張を和らげるように、
陽葵は、そっと微笑んだ。
「……遅いよ、和真君」
その言葉は、優しくて、切なくて、
そして……暖かかった。
「でも……今、聞けてよかった」
和真は、涙を流しながら陽葵の頬に触れた。
彼女も、静かに僕の手を重ねる。
「ずっと、待ってたの……」
僕も――
「僕も……ずっと、君に伝えたかった……」
陽葵が、そっと瞳を閉じる。
僕も、静かに目を伏せる。
そして――
ふたりの唇が重なる。
その瞬間、すべての思い出が溢れ出した。
楽しかった時間。
笑い合った日々。
すれ違ったあの日。
楽しかった事も、悲しかったことも、
その全てを、抱きしめるように――。
陽葵の唇は、温かく、そしてどこか懐かしい。
涙が、二人の頬をつたって落ちる。
「素敵な思い出をたくさん……ありがとう、和真君……」
「陽葵ちゃん……!」
和真の声は震え、彼の瞳には溢れそうな涙が滲んでいた。
そして、陽葵はゆっくりと微笑んだ。
その微笑みは、どこか寂しげで、それでいて優しく、
包み込むようだった。
「和真君……
もう、私のことに縛られずに、生きてね。
これからは、和真君の幸せな未来のために……」
彼女の声は柔らかく、春の風のように穏やかだった。
「私は、ずっと……和真君の心の中で応援してるから……
だから、もう大丈夫。歩いていけるよね?」
和真は、涙をこらえながら大きく息を吸い込む。
「……うん。僕……僕は、ちゃんと前に進むよ。」
陽葵は嬉しそうに微笑み――そして……、
その姿は、優しい光に包まれて、消えていった。
光が消える直前、陽葵の影が“紙のように折れ曲がった”。
和真は気づかない。
気づけない。
※エピローグに続きます。




