第廿一話 New ペーパーフラっとブラザーズ
あらすじ:
【王宮の玉座前に巨大な和太鼓が運ばれ、試合が始まる。主人公・和真は、貴族の青年との太鼓勝負に挑む。青年の演奏は芸術的な腕前で、和真も必死に食らいつくが、指がほんの一瞬ズレたことで敗北してしまう。しかし、なぜか試合に関係ないオッサンがボム師範によって爆破され、謎の展開で幕を閉じる。】
「次は……ラジオ体操で勝負よ」
姫が高らかに宣言すると、まるで魔法のように、玉座の前に謎のステージが現れた。
黄金の縁取りがされた床には、巨大なスピーカーがいくつも設置されている。
和真の目が点になる。
「いや、なんでこの流れでラジオ体操!?!?!?」
叫ぶ和真をよそに、審判役のボム師範は深く頷きながら腕を組んだ。
もはや疑問を挟む余地はないという顔だ。
ステージの床が一瞬だけ“紙のように折れ曲がった”ように見えたが、
和真が瞬きをすると元に戻っていた。
「極めれば極めるほど、体の芯からリズムを感じられるものだ……」
青年は余裕の笑みを浮かべながら、体操の構えをとった。
背筋を伸ばし、ゆったりと足を開く。
その姿はまるで戦場に立つ剣士のように堂々としていた。
そして――
「ラジオ体操アルティメットリミックス、開始!!!」
突如、スピーカーから謎のおじさんの掛け声が爆音で流れ始める。
「ハ、ハ〜イ、!ホ!ホ!ホ!ホ!!」
会場全体が震えた。
ステージの床からビートが伝わり、空間そのものがリズムに乗っているかのようだった。
青年はすぐさまテンポを掴み、流れるように腕を振る。
しかし――和真は全く理解できていない。
「え!?どっち!?オモテ!?ウラ!?!?」
腕を振る方向を誤り、ボム師範がピクリと反応する。
観客席にいるオッサンはひそかに和真を応援していたが、彼も困惑している。
「ミス検知中……」
冷たく響く判定の声。和真の額に汗がにじむ。
「やばいよやばいよ!!」
ぎこちなく動く和真を見て、オッサンはオロオロしている。
そのとき、オッサンがぽつりと漏らした。
「……また間違えるとこだったな……あの日みたいに……」
自分でも何を言ったのか分からないように、すぐに首を振った。
青年は完璧な動きでウラ拍とオモテ拍を交互にこなし、
まるでリズムを制圧しているかのようだった。
突然、スピーカーから謎の歌声が響き渡る。
「ゲロッ!ゲロ!ゲロ〜!!」
「ちょ!!歌付いたぁぁ!?!?」
ラジオ体操なのに、どこからか現れたカエルのボーカルが謎の曲を歌い始める。
そのメロディーがラジオ体操のリズムを狂わせる。
青年はなぜかカエルのテンポにも完全に乗っている。
しかし和真は――完全に混乱状態。
「うわぁぁぁ!!カエルのテンポ、乗れねぇぇぇ!!」
カエルの鳴き声の合間に流れる謎のシンセサウンドが空間に響き渡る。
和真は腕を振るごとにタイミングを誤り、ボム師範の目が鋭く光った。
「ピピピ……ミス検知完了……」
「ヤバいヤバい!!!」
その瞬間――
何かが和真の体を突き動かした。
視界の端で、世界が“紙芝居のようにカクッ”と切り替わった。
和真は一瞬だけ、別の景色を見た気がした。
しかし次の瞬間には、またステージに戻っていた。
まるで運命が介入したかのように、彼の筋肉が勝手に反応し始めた。
オモテ拍とウラ拍の間を見極め、完全にリズムの波動を掴んだ。
「うぉぉぉぉ!!???」
跳躍が完璧なタイミングで決まり、ウラ拍とカエルのリズムが完全にシンクロしていく。
「えぇぇぇ!?なんで急に覚醒した!?!?」
青年は驚きの表情を浮かべる。
まるで異世界の神が降りてきたかのような演出に、観客席もどよめいた。
ボム師範も興奮しながら審判旗を掲げる――
「勝者……和真!!!」
「うわぁぁぁ!?!?勝ったぁぁぁ!!」
ベンチ警備員のオッサンが勝者本人を差し置いて偉そうに喜ぶ。
青年は呆然と立ち尽くし、姫は静かに微笑んでいた。
「和真……あなたの勝ちよ」
こうして、ウラ拍やオモテ拍、割り込むカエルのボーカルを乗り越えた
奇跡の逆転勝利が決まった――。
「約束通り、和真、あなたのお願いを一つ聞くわ。
遠慮なく言ってごらんなさい」
「じゃ、じゃあさ……君の秘密を……
君の正体を教えて……」
姫は静かに微笑む。
「あら、薄々気付いていたのね、《《和真君》》?
いつ以来かしら?《《スーパーフラットブラザーズ》》?
これが、答えよ」
「は、陽葵ちゃん!?」
その名を聞いた瞬間、和真の視界が一瞬だけ“真っ白”になった。
まるで記憶の奥底が揺れたように。




