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だれがピーターパンを殺したのか?vol.2

『5月15日』


 あ、あー。テスト、テスト。これは前もやったか。ちゃんと音声も録れてたし。割愛割愛。

 前回のボイスメモがボクのなかで好評だったので、引き続き、この機能を使っていくことにしたよ。うん。まぁ、好評ではあったんだけどね。自分の声を聞き返すと恥ずかしくて死にそうになるよね。なんなんだろうね。「ボクにできるのは聞くことだけ」って。キメ台詞みたいに言っちゃってさ。ヤバいよ。思い出しただけで顔から火が出そう。あーヤバい。ちょ、ちょっと録音止める。今の精神状態で録音は無理!


 というわけでですね。今回は前回のようにポエミーにならないように努めていきますので、よろしくお願い致します。

 ええっとですね。前回はどこまで話しましたっけ?

 あ、そうでした。飛田雄太氏を殺したと思われる容疑者を絞って、彼ら彼女らが協力をしてくれるってところまででしたね。たぶん。

 そうなんです。わたくしめの友人であらせられる、飛田咲良氏の尽力によって、明日の放課後、彼らのお話をお聞きになることができますのですね。

 なにせわたくしめに出来るのは聞くことだ――あ゛あ゛~!!!



 失礼致しました。取り乱し致しました。取り急ぎお詫びの方をさせていただきたく存じます。

 お言い直しの方を致しまして、矮小で厚顔無恥なわたくしめに致せるのは皆様のお話をご拝聴になることのみでございますため…………疲れた。敬語むじゅかしい。

 まぁ、そういうわけで、いよいよ明日から容疑者もとい飛田雄太氏と仲の良かった人たちへの聞き込みがはじまるわけだね。

 聞き込みは1日に1人。一人につきどれくらい話が長くなるのかわからないからね。あんまり1日に詰め込み過ぎても混乱するし。

 うん。まぁ、とりあえずそんなとこかな。

 あ、そうだ。

 これを聞いている未来の月見里よ、容疑者たちの聞き込みを録音したデータを咲良さんに提出するのを忘れないようにね。彼女、今回の事件に関してはガチだからさ。



『容疑者A 花咲千歳』


 後悔しかない。私が守ってあげなきゃいけなかった。雄太はすごい純粋な子だったから、良くも悪くも人を受け入れてしまうんだ。どんなに悪い人でも雄太は笑顔で受け入れちゃう。私はそれを知っていて、見過ごしていたところがあった。それが雄太の良い所だったから。

 間違いだったんだ。たとえ、雄太に嫌われても私がそういう人たちを遠ざけないといけなかった。

 断言できる。雄太は自殺なんてしない。雄太は誰かに殺されたんだ。


『容疑者B 中西亨』


 アイツのことは嫌いだったよ。ウザいって思ってた。オレがちょっとでも危ない橋を渡ろうとすると、喧しく説教してきやがる。でも、最後には一緒にその橋を渡ってんだ。アイツはそんな奴だった。

 オレはな、自殺でも他殺でもどっちでもいいんだ。

 変な意味に取るなよ。他殺ならアイツを殺した犯人がいる。自殺ならアイツを追い込んだ犯人がいる。どっちにしてもアイツを殺したのは変わらねぇんだ。

 そいつを見つけ出して一発ぶん殴らないと気が済まないってだけだ。


『容疑者C 白鷺冬華』


 そうですよね。もう死んじゃったんですよね。

 そっかぁ。もう、いないんだなぁ。おかしいな。お別れはもう済ませたはずなのに。

 ううん。大丈夫です。続けてください。

 雄太くんはわたしの恩人です。ずっと昔からの夢だったアイドルを彼だけは笑わずに応援してくれたんです。

 すごく明るくて、元気をくれて、私の幸せをいつも喜んでくれました。

 ああ、今度のライブ見に来てくれるって言ってたのになぁ。

 わたし、バカだから自殺なのか誰かに殺されたのかはわかりません。でも、雄太くんのためなら、なんだって協力します。



『5月19日』


 あ、あー。音声は入ってるね。

 3日間の聞き込みが終わったよ。たった今、咲良さんに3人の録音を送ったところだ。

 流石にふざける余裕はないね。ちょっと暗い気持ちになってしまったよ。

 ………ボクは探偵じゃないから、道筋たてた推理はないんだけど。


 飛田雄太は自殺したんだと思う。


 なんの証拠もないから。

 もしかしたら、

 花咲千歳さんが言ったみたいに誰かが彼を殺したのかもしれない。中西亨さんが言ったように彼を追い込んだ犯人がいるのかもしれない。白鷺冬華さんが言ったように「わからない」といのが真理なんだろうな。

 あ、咲良さんからラインだ。

 『続きを送ってください』だって。

 そりゃそうだよね。3日間かけた聞き取りの成果があんな合計で5分もかからないモノなわけないもんね。

 気乗りしないなぁ。わざわざ自然になるように切り取り編集したボクのことも考えてほしいよ。いや、咲良さんは考えたうえでこのメッセージを送ってきたんだろうなぁ。

 どんな残酷な告解が待ち受けていようと、それを乗り越える覚悟は持っていますって。

 それは立派な心掛けだと思うんだけど、考えてほしいのは君を思いやったボクじゃなくて、これを送るのを怖がっているボクのことなんだよね。

 これを送って彼女が何も思わない人間なら、ボクと彼女の間に溝ができてしまいそうなんだ。

 まぁ、いいか。溝なら埋めればいい。聡明な彼女なら、ボクには到底見えてこない犯人が見えるのかもしれないし。

 

 

 

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