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ドザえもん  作者: 大金母知
9/50

9第六王女ロクサーヌ

王女様が出てきます。

「どうか!どうかお願い致します!姫様っ!」

ユーリは地にひれ伏して願った。 どうすれば己の願いの大きさを伝えられるのか。その想いを込めに込め、結果このような形になった。

額を地べたに擦り付け、ユーリは頭を下げ続ける。

遠い異国のとある地ではこれを土下座と呼ぶのだが……ユーリは知る由も無い。

「あなたともあろう者が……やめなさい。そこまでする必要なんて無いわ」

そう口にし、ユーリの身を起こそうとしたのは大英帝国第六王女であるロクサーヌ。

齢八と幼い子どもの身でありながら、そのずば抜けた聡明さと人の心理を悪魔的までに読み解く才能から数多くの政治問題を任されている超天才。

王家の者は当然ながら皆優秀なのだが、中でもロクサーヌは頭一つ抜けている。

ロクサーヌは子どもに似つかわしくない慈愛の笑みでユーリに応える。

「あなたにはこの国の大きな危機を救ってくれた借りがある。そして、これまで魔道騎士隊長としての役目を立派に果たし、多くの民を救ってきた。加えて、あなたのそのまっすぐな心根はとても好ましく思っているわ。そんなあなたの頼みとあらば、私はどんなことでも応えたい」

「姫様……!それでは……!」

「でもダメね」

……え?

「えぇえええ!?だ、ダメなんですか!?しかし、どんなことでも応えたいって……」

「あくまで法律の許す範囲でね」

「うぐっ……」

先程までの慈愛の笑みとは打って変わって、ロクサーヌは現在サディスティックな笑みを浮かべている。

「……あなたからアポがあった時は楽しい時間を過ごせると期待してこうして部屋に招いたのだけれど、残念ね。今の話は聞かなかったことにしてあげるわ」

「そこをどうか!私にできることがあればどんなことでも致します!何とぞ!何とぞ便宜を図っていただけないでしょうか!?」

「はぁ……あなた自分が何を言ってるか分かってるの?こんな真似が知れればあなた除隊よ?」

「シンの命がかかっているんです。私の除隊で済むのなら喜んで受け入れます」

「……本当、あなたって人は……馬鹿ではないはずなのにどうしてこんな頼み方しかできないのかしらね?まあ、そこがまた好ましいのだけれど……困ったわね……」

ロクサーヌは困ったように頬をかき、

「ひとまず、その不法入国者の捜査を打ち切るように動いてみるわ」

「!姫様ぁぁ……ありがとうございますぅぅ……」

「情けない声出さないの。言っておくけれど、あなただけだからね?こんな頼みを聞いてあげるのは」

ユーリは感謝の気持ちを再び土下座で示す。

「悪いけど、今できるのはここまで。もしもそのシンとやらに自由な生活をさせてあげたいのなら、彼の価値を示してみせなさい」

「……価値……」

マリアにも言われた話であった。

「……彼は、異国の者でありながら魔道騎士と同等の力があるとのことです。管理局を脱走できたのもその力によるもので……」

「足りないわね」

「え……?」

足りない?大英帝国以外に魔道騎士と同等の戦力を有する存在など超重要な参考人だとユーリは思うのだが……

「恐らくかつて米国を打ち負かしたサムライとやらでしょう?魔道騎士と同等と言っても、その実力は低ランク相当。面白い存在ではあるけれど、私が本気で庇いだてする価値は無いわ」

「……高ランク相当の実力だとしたらどうです?」

実際にこの目で見たわけではない。しかし、入国管理局の者の話に脚色が無ければ、その可能性は十分にある。

「……力があるだけでは何の意味も無い。大事なのはその力で何を為すか。とはいえ、一考するだけの価値はあるわね」

「……分かりました」

「とりあえず、現時点でできることは捜査の打ち切り。彼が騒ぎを起こして人目に触れるような真似をしなければ当面の安全は確保できるでしょう。彼に生活の自由を与えたければ、皆を納得させることのできる価値を示してみせなさい」

「……はい」

「再三言っておくけれど、いくら私でも庇いだてできるのには限度がある。それだけは分かってちょうだい」

「十分です。ありがとうございます。姫様」 望みをつなぐことはできた。後は晋矢とユーリ次第。

(シンならきっと大丈夫……!あの子が『特別』でないはずがない……!)

常識に非常識を納得させるなど無理な話ではあるが、晋矢なら大丈夫。ユーリにはそんな不思議な確信があった。


✳︎


ユーリがロクサーヌの自室を後にしてから、

「話は聞いていたわね?」

ロクサーヌは自室にてロクサーヌの存在しか認識していない。しかし、ロクサーヌがそう呼びかけると、どこからともなく一人の男性騎士が姿を現した。

「……聞いていないことにしてもらうってのは……無理みたいですね」

男は面倒臭そうに頭をかく。 男の名はリュウ。大英帝国近衞騎士にして第六王女専属の騎士である。そして、

「あの子の元上司のあなたに聞かせてもらうわ」

元二番隊隊長にして、ユーリの上司であった過去をもつ。

「あの子がこれまでにあんなワガママを言うことはあって?」

リュウは思い返すまでもないとばかりに即答する。

「無いです。人一倍情に厚いところはありますが……それでもあんな聞き分けの無い無茶を主張するような真似はしませんでした」

「それも王女たる私に対して、ね」

ロクサーヌはニヤリと意味深な笑みを浮かべる。

そんなロクサーヌにリュウは訝しげに眉を歪める。

「……なんか悪いこと考えてます……?」

「失礼ね。悪いことじゃないわ。面白いことよ」

どちらにしてもロクなことではなさそうだ。リュウの目がそう物語っている。

ロクサーヌはそんなリュウの心情を見透かしてなお、突き進む。

「では、スケジュールの調整を始めましょうか?」

ニッコリと無邪気な笑顔を浮かべて言うロクサーヌに、

「……御意」

リュウは苦々しく頷くことしかできなかった。

特に無し!

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