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5 罪悪感

 水曜日になった。いつもと同じ時間に目が覚めて、下に下りていくと、お店のカウンターで春香ちゃんがご飯を食べていた。

「あ、おはようございます。早いですね」

「おはよう。春香ちゃんも早いよね。今日もクロの散歩?」

「いいえ、今日はお母さんか、お兄ちゃんが連れて行くと思うから」

「じゃあ、なんでこんな早くに?」

「コーヒー持って、海に行くんです。いつも…」

「あ、彼氏に持っていくの?」

「はい」

 ちょっとはにかみながら、春香ちゃんはうなづいた。


「朝ごはん作りましょうか?」

「え?いいよ。大丈夫。何かパンでも焼いて食べるし…」

「いいですよ。サンドイッチでも、作ります。あ、コーヒーは淹れてあるから、飲んでください」

「朝、いつも自分で作ってるの?」

「水曜日だけ。お母さん、水曜はゆっくり寝てるから」

「そうなんだ」

 なんか、えらいな~って思ってしまう。


「そのうち、パテシエになったら、お店に私のケーキを置いてもらおうと思ってて…」

「へえ。そうなんだ」

「お料理をするのも、好きなんですけど、ケーキって人を幸せにするじゃないですか」

「うん、そうだね。ケーキを食べただけで、幸せ~~って言ってる時あるよね」

「そう!それなんです。うちのお店でも、ケーキを出すとみんな、すごく幸せそうな顔をするから、それを見ているのが好きで…。美味しいケーキを作ったら、幸せになる人がたくさんになるんだろうなって、小学生のころ思っちゃって…。単純なんですけどね」

「ううん、素敵。素敵な夢だよね…」

「でも、今は私が楽しいからしてます。どんなケーキを作ろうかって考えてるとき、めちゃくちゃ楽しいんですよね」

「ああ、自分が楽しんでいるのが、何よりも1番だよね。それ、わかる気がするな」

「本当ですか~~?嬉しいな、そう言ってもらえると…」


 春香ちゃんは、すごく嬉しそうな顔をして、サンドイッチを持ってきてくれた。

「今は、うちの店のケーキ、近くのケーキ屋さんのを持ってきてもらってて…。お母さんも早くにパテシエになって、うちに春香特製のケーキを置きたいわって、言ってくれてるんです」

「そうなんだ。瑞希さんはケーキを作らないの?」

「スコーンや、パンケーキくらいかな」

「あ、スコーンも美味しいよね。それから、ジャムも…」

「はい。美味しいですよね。スコーンはうちの店の売りだから」

「春香ちゃんも、れいんどろっぷすが好きなんだね」

「はい。好きです。居心地いいんですよね。だから、お休みの日もつい、お店で勉強したり、ケーキを作ってみたり…」


「爽太君も好きだって言ってたな。いいね。そんな場所が自分のおうちなんて…」

「そうですよね」                      

 にこって微笑んでから、春香ちゃんは、ポットにコーヒーを入れ替え、

「じゃ、海に行ってきます」

と、外に出て行った。

 サンドイッチを食べてみると、とても美味しかった。

「ああ、なんか、いいな~~~」

 春香ちゃんの話を聞いてて、ますますこの家族を好きになっている自分に気づいた。


 キッチンで片づけをして、自分のものを洗濯していたら、瑞希さんが起きてきた。

「おはよう。早いのね。ゆっくりしててよかったのに…」

「おはようございます。なんか、目が覚めちゃって…」

「そうなの?あ、春香は?」

「海に行ってます」

「早朝デートか~~。あら、洗濯していたの?言ってくれたら、一緒に洗って干しとくのに」

「いえ、そんな悪いですから…」

と、申し訳なくてそう断ったけど、

「いいのよ~~。前に住んでた人なんて、ばんばん洗濯物出してたわよ」

と瑞希さんが、笑ってそう言ってくれた。


「じゃあ、一緒にみなさんのと洗濯します。瑞希さん忙しそうだし、洗濯くらい私にさせてください」

「そう…?じゃ、お願いしようかしら。でも爽太のパンツは私が洗わないと、爽太に怒られそうだわ」

「え?」

「それとも、爽太に自分で洗わせようかしらね」

 そう笑って言うと、瑞希さんはお店のキッチンへと向かいながら、聞いてきた。

「あ…。くるみさん、朝ごはんは?」

「春香ちゃんが作ってくれました。サンドイッチ、美味しかったです」

「あら、そうなの?」


 洗濯物ができたので、2階に行き、ルーフバルコニーに干していった。少し曇っていて、風もあった。潮の匂いがして、海を思い出した。まだ、この店で働くようになってから、海は行ってないな。

 そのまま、バルコニーでぼ~~ってしていると、爽太君が部屋から出てきた。

「あ、おはよう。早いね。休みの日なのに…」

「爽太君も早いね」

「ああ、うん…。なんか、急にデートすることになって…」

「え?」


 顔が引きつるのを、ばれないように笑顔を作り、

「五月ちゃんと?良かったね」

と言うと、爽太君は頭を掻いて、

「う~ん。微妙…」

と、笑っているような、困っているような、そんな複雑な顔をした。

「なんで?嬉しくないの?」

「う~~ん、あまり…。だから、微妙…。嬉しいっていうより、緊張する」

「なんで?」

「だって、何をどう話していいのやら…。いつも、なんか俺、緊張しちゃうんだよね。あ、デートってそんなもんかな?」                   

「初めのうちはね。多分…」

「ああ、そっか。そういうもんか…」


 頭が寝癖だらけで、おおあくびをする爽太君は可愛かった。パジャマ姿も、やけに可愛い…。

「デート、どこ行こうかな~~」

とつぶやきながら、爽太君は下におりていった。

 やばいな…。五月ちゃんがめちゃくちゃ羨ましい。

 私は、早々と支度をして、アパートに行くことにした。そのままそこにいたら、もやもやと嫉妬する自分を見る羽目になりそうで…。


 電車に1時間以上ゆられて、アパートに着いた。ドアを開けると、少しむっとした。埃っぽさもあった。私はすぐに窓を開け、掃除を始めた。

 玄関を掃こうかと思って行ってみると、メモが落ちていた。さっき、ドアを開けた時には気づかなかった。多分、ドアの隙間から入れたのだろう。

 メモには、懐かしい稔の字が並んでいた。

 不思議だ…。稔と別れたのはつい最近のことなのに、すごく懐かしさを感じた。もう、何ヶ月も、何年も会っていないような気もする。


 メモには、

「仕事の帰りに寄った。まだ、アパートは引き払ってないんだね?電話をしてもつながらないから、直接アパートに来てみたよ。また、仕事帰りに寄るよ。稔」

と、書いてあった。いったい、何の用件があったのかは、書いていなかった。

「はあ…」

 ため息が出た。また、夜に来られても、私はいないだろう。もう会う気もないし…。


 アパートの掃除を終えてから、近くのお店をぶらついた。ついこの前まで住んでいた町。懐かしかった。

 よく一人で入っていたカフェに入った。そこで、お昼を食べた。

 ぼ~~って、コーヒーを飲みながら遠くを見つめた。今ごろ、爽太君は、五月ちゃんとデートなんだな…。そのことを思い出し、頭をふって、忘れようとした。

「そんなに好きじゃなかったら、別れちゃえばいいのに…」

と、また私は思っている…。そんな自分が嫌になる。


 なんの用事もないので、そのまま電車に乗り、江ノ島に戻ることにした。

 お店に戻ると、誰もいなかった。合鍵を作って渡してくれていたので、その鍵で家に入った。

 し~~ん…。家の中が静まり返っていた。

「なんか、不思議…」

 誰もいない家…。いつも誰かが必ずいるから、変に静かで、すごく寂しくなった。


 リビングに腰を下ろして、テレビをつける。急に静かな中に、テレビからの音楽が流れ出し、それが返ってむなしく感じられた。

「は~~~。なんか、寂しい…」

 休みの日って寂しいな…。なんだか、やっぱり私は家族のようで、家族じゃないんだ…、なんて思い知らされているような気もしてきた。そう思ったら、涙が出た。

「あれ?おかしいな…。こんなことで泣いてる…」                

 どうにも、涙が止まらなくなり、声をあげて泣き出してしまった。


「何泣いてるの?」

 いきなり背後から、声がしてびっくりした。

「え?爽太君?なんでいるの?」

「なんでって。その…。それより、なんで泣いてるの?嫌なことでもあったの?」

「ううん。何も…。ちょっと寂しくなっただけ…」

「そっか…」

 爽太君はそう言うと、私の横に座り、私の顔を覗き込み、

「くるみさんでも、寂しくて泣いちゃうことあるんだ」

と、優しい目をして私に言った。


 私は急いで、涙をふき、

「爽太君、デートだったんじゃないの?」

と聞いた。

「うん…。そうなんだけど…」

「……?どうしたの?何かあった…?」

「…別れた」

「え?!」

 驚いた…。と同時に、罪悪感に襲われた。別れちゃえばいいのにって思ったことに、ものすごい罪悪感を覚え、血の気も引いた。


「なんで?ふ、ふられちゃった?」

「ううん。俺のほうから、別れ話をしたんだ…」

「え?なんで?」

「う~~~ん。なんか、今日一緒にご飯とか食べててさ、やっぱり、違うよなって…」

「違うって?」

「う~ん。可愛いとは思ってるけど、好きとは違う。なのに付き合ってるのって、五月ちゃんに失礼じゃん」

「……」

「そのうちに、好きになれるかなって、ちょっと思ってたんだけど…。それ、今は好きじゃないってことだしさ…」

「そっか…」

 なんて言っていいか、わからなかった。


 別れたら、私はどっかで喜ぶかもしれない…。なんて思っていたが、実際は全然だった。喜べるはずがなく、落ち込んでいる爽太君になんて声をかけようかとか、別れたらいいと思っていた自分を、自分で責めていた。

「ほっぺ、赤い?俺…」

「え?」

「ひっぱたかれちゃって…」

「ええ?!」

「ビンタ、生まれて初めてだよ。強烈だね」

「そ、そうなの?たたかれちゃったの?」

 すごい。そんなことしそうもない子に見えたけどな…。


「でも、すっきりした。なんかこれだけ痛い思いしないと、申し訳なさが残るよね」

「え?」

「なんていうか、罪悪感っていうの?」

「……」                  

「くるみさん、ごめんね」

「え?何が?」

「あれこれ、相談に乗ってくれてたのに、もう別れちゃったよ、俺…」

「……」

 ああ…、罪悪感がどっと、押し寄せてくる。私もひっぱたかれたら、すっきりするだろうか。


「あ、謝るのは私かも…」

「え?」

「ひっぱたいてもいいよ…」

「え?なんで?!」

「だって、いろいろと相談に乗ってたふりして、心の底では別れたらいいって思ってたから…」

「…?俺と五月ちゃんが?」

「そう…。ごめん。私も思い切り罪悪感…。ビンタしてくれたら、すっきりするかな?」

「え?ビンタ?なんで?」

「だって、酷いこと思ってたから…」

「あ…。あははは…」

「え?」

 いきなり笑う?なんで…?


「それで、ビンタって、おかしいよ。っていうか全然悪くないし、くるみさん」

「え?」

「そうだよね。だって、くるみさんは別れたばかりだし…。それでもう、人の幸せを喜べって言われても、無理な話だよ。もし逆の立場だったら、俺も心の底ではそう思うよ、きっと」

「……」

 ああ、微妙にずれている。私は嫉妬をしていたのに…。爽太君の彼女というだけで、やきもちを妬いていたのに…。羨ましくて、爽太君とデートできるなんていいなって…。

 だけど、本当の理由は言えなかった。言っちゃいけないって、私の気持ちを封じ込めた。


「はあ…。しばらくはいいや…俺」

「え?」

「なんか、力抜けた。彼女とかって疲れるし、一人身でいいです、俺…」

「……」

「仕事もあるしさ…。多分、そのうち、父さんたちみたいな出会いがあるかもしれないし」

「…うん。そうだね。私も、しばらくは彼氏、いらないかな…」

「え?そうなの?」

「うん。瑞希さんと圭介さんみたいに、いっきに恋に落ちる…。そういう相手にきっと、会えるよね。それまでは、いいや…」


「じゃ、一人身同士ってことで、よろしく」

 爽太君は、そう言うと、にこって微笑んだ。

「?何がよろしく?」

「あはは。なんか、わかんないけど…。今日みたいに、寂しくて泣きそうになった時とか、俺呼び出していいよ。当分彼女できないだろうし、休みの日は暇もてあますだろうし」

「…うん。ありがとう」

「ってことで、これからどうする?暇なものどおし」

「え?」

「海行く?父さんたちもいるかも…って邪魔するなって言われそうだな。あ、ゲーセンでも行く?」

「ゲーセン?」

「水族館でもいいけど…。まだ、この時間ならのんびりと見れるかな」

「うん」


 それから、とぼとぼと歩いて、爽太君と江ノ島の水族館に行った。

「ここ、初めて来た!」

と喜ぶと、

「ほんと?俺、しょっちゅう来てたよ」

と爽太君も、嬉しそうにそう言った。

「そうなの?」

「うん。父さんや母さんとも、春香ともよく来てた。俺、めちゃイルカ好きでさ!」

 そう言うと、イルカの水槽に、どんどん爽太君は進んでいった。

「お!綺麗に今日も泳いでるね」

 爽太君、イルカが好きなのか…。


「子供のころから見に来てたし、飼育員にもなりたかったんだよね。実は…」

「そうなの?」

「イルカのショーで、イルカと一緒に泳いだりしてるじゃん。あれ、いいな~~って思ってたよ」

「でも、ならなかったの?」

「うん。父さんの仕事のバイト、高校のころからやってて…。楽しくて、そのまま父さんの会社に入っちゃった」

「へえ、そうだったの…」

「でも、イルカと一緒に泳ぐのは夢だな。それも、野生のイルカがいいな」

「いいね。素敵…」

 爽太君の目がきらきら輝いて、ひきこまれそうになった。


「あとね、俺、好きなのはくらげ」

「くらげ?」

「面白いくらげがいっぱいいるんだよ。見に行こう!」

「うん」

 ドキってした。爽太君は、私の手をひいて、走り出した。爽太君の手は、意外と大きくて、あったかくて…。手をすっぽりと包みこまれて、胸が思わず高鳴ってしまった。


 くらげの水槽の前に行くと、

「あ、ごめん…」

とつないでいる手を、爽太君が、ほどいた。

「無意識に手、つないでた…」

「う…、うん」

 なんだか、顔が赤くなっているような気がして、顔をあげられず、うつむいたまま答えたが、どうやら、爽太君はそんなのおかまいなしで、くらげの説明をしだした。

「これこれ、いろんな色があって、けっこう可愛いでしょ?あ、こっちのは、光るんだよ。ほら!」

 また、爽太君は、目を輝かせた。その表情を見ているほうが、私には嬉しかった。

 ぐるりと館内を回って、一緒にアイスを食べて、それから水族館を出た。


 水族館から浜辺へと移動して、しばらく海を眺めた。

「海って、気持ちいいよね」

 爽太君は、目を細めてそう言った。                  

「父さんから、面白い話を聞いたことがあって…」

「面白い話?」

「俺が母さんのおなかにいたころ、父さんの夢に、色白で真っ黒な髪の男の子が、出てきたんだって」

「……」

「で、その子、いっぱい遊ぼうね、パパって言ったらしいんだよね」

「それって、爽太君…?」

「うん。そうみたい。一歳の俺、その夢の子にそっくりだったって…」

「へえ…。なんか、不思議な夢」


「でさ。そのころ、父さんは癌で、もうすぐ死ぬって時だったらしいんだけど、夢のその子といろんなことして遊ぶ空想を、していたらしくって…」

「うん」

「それ、全部叶ったって言ってたよ。だから、俺が奇跡を起こしたんだって言うんだよね」

「爽太君が?」

「そ。俺のおかげで、がん細胞が消えたって…。いや、そう言われても、身に覚えはないんだけどさ。母さんなんて、神様が遣してくれた天使だとか言ってた時があって。ってか、俺人間だし…」

「でも、二人にとっては、天使なんだよ。きっと、今でも…」

「ええ?なんか変なの」


「そうかな。私にも天使だけどな…」

「誰が?」

「爽太君だよ」

「え?!なんで?!」

「私のこと助けてくれた時、天使に見えたもの」

「ええええ?だから~~。俺、頭にわっかもなければ、羽もはえていないって…」

「あはは。そうだけど。でも、羽も見えた気がするよ」

「錯覚。やばいよ、それ。まじ、他の人には話さないでね」

「うん…」


「天使か…」

 石段に腰を下ろし、爽太君がつぶやいた。

「俺が天使なら、くるみさんは何かな…」

「堕天使?悪魔?」

と、冗談を言うと、黙って、爽太君はこっちを見て、

「女神」

と、真面目な顔でそう言った。

「はあ~~~?」

「人魚…。う~~~ん。やっぱ、天使?」

「なんか…、馬鹿にしてる?」

「してないよ」

「どう考えても、女神はないよ」

「う~~ん。でも、一緒にいて、こんなに安らぐ人っていないんだよね。だから…」

 安らぐの…?私?


「じゃ、毛布?こたつ。ストーブ…」

「え~~~?私暖房器具なの?」                  

「あはは…。だって、一緒にいてあったかいから…。あ。暖炉に火鉢、焚き火ってのもありかな」

「もう~~~!ひどいな~~」

「あははは…」

 爽太君は、目を細めて笑った。笑うと目が細くなって、たれ目になる。そこが可愛いんだなって改めて思う。


 家に戻ると、瑞希さんと圭介さんは、もう帰っていた。

「あれ?なんで二人で帰って来たの?お前デートは?」

と、圭介さんが不思議そうに聞くと、

「別れちゃいました~~~!」

と、爽太君は、おちゃらけて言った。

「え~~~~~?!もう?!」

 圭介さんが驚いていた。

「あら、早かったのね。この前よりも続かなかったわね」

 瑞希さんは意外と冷静だった。

「予感的中…」

 ぼそって圭介さんが、そう言うと、

「え?そんな予感してたの?」

と、爽太君が、驚いていた。


「ま、本当の相手が現れるから、そのうちにな…。だから、焦ることはないよ」

 圭介さんは、爽太君の背中をぽんぽんとたたいて、慰めていた。

「うん。焦ってないよ。しばらくは、一人身でいいやって思ってたとこ」

「そうね。そのうちに、あ、この人が俺の求めてた人だった。って気づくことがあると思うし…」

 瑞希さんがそう言うと、

「気づく?ああ、出会って?」

と、爽太君は瑞希さんに聞いた。

「出会っているかもしれないけど、気づいてないかもしれないし…ね」

 瑞希さんは、微笑みながらそう言った。


「え?何それ?」

 爽太君は、目をまんまるくした。

「いいのいいの。気にしないで。さて、夕飯の準備をしようかしらね。あ、くるみさん、手伝ってもらってもいい?」

「はい…」

 キッチンに向かう時、ちらりと爽太君を見ると、まだ、爽太君は首をかしげて、考えていた。

 瑞希さんは、何が言いたかったのだろう…?


                    

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